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「感覚を研ぎ澄ます」…山口蛍が語るトレーニングの極意

2016.08.21

 山口蛍の足は止まらない。常に相手の動きとボールの行方を視野に入れ、縦パスが入れば激しく体を寄せる。チャンスの芽を摘んだかと思えば、次の瞬間には大胆なパスで攻撃のスイッチを入れる。多くのタスクが求められるボランチというポジションで、彼の動きが止まることはない。だが、本当に止まらないのは足ではなく頭脳のほうだ。

 肉体だけでなく、頭脳を鍛える。つまりはその判断力や危機察知能力を、山口はどのようにして磨いてきたのか。返ってきた答えは明快なものだった。


「自分の感覚を研ぎ澄ますことです」

 例えば、4対2のボール回しでも、彼の頭脳はフル回転している。たとえトレーニングであっても、試合と同じように一つひとつのプレーに神経を集中させることで、「取れる」、「ここに来るな」という感覚が磨かれていく。偶然ではなく、狙い通りにボールを奪う。山口がサッカーの楽しさを感じる瞬間だ。

 気の利いたプレーは、豪快なシュートのように一目でそのすごさが分かるものではない。だからこそ、「攻撃的な選手と比べると、評価されることが少ない」と山口は言う。「チームメイトや自分のことを分かってくれる人が評価してくれることが、僕は一番うれしい。チームメイトに『いてくれて助かる』と思われる選手になりたい」と決して派手ではないプレーも評価してくれる人はいる。そのことを山口は知っている。

山口蛍

練習だからこそ貪欲にチャレンジする

 山口を「守備的なボランチ」と認識している人は多いだろう。しかし、セレッソ大阪のユース時代に主戦場としていたのは攻撃的なポジション。もともと長けていた攻撃センスに正確な「予測」が備わったのは、トップチームに昇格してからだった。まだプロに入りたての頃、山口は人数合わせとしてディフェンダーを務める機会が多かったという。「サイドバックやセンターバックを経験する機会が多くて。その時に、危険を察知する感覚を掴んだ」。目の前の相手がどういう動きをするのか。点を取られないために状況や流れをイメージしながらプレーすることで、先を“読む力”が向上し、やがては彼のストロングポイントの一つとなった。

 正確な「判断」は「試合でないと培われない」と山口は言い切る。瞬時の判断力を鍛えるためには「実戦を積み重ねていくしかない」と。「だから、紅白戦はどんどんチャレンジして、失敗すればいいと思っています。例えば、距離が遠くても、思い切ってサイドチェンジをしてみたり。自分が思ったプレーはトライするようにしています」。妥協のないトレーニングの積み上げが、本番での自信へとつながるのだ。

山口蛍

ともに戦ってきた最強のスパイクを武器に進化を続ける

 山口にはトレーニングに裏付けられた自信をさらに高める武器がある。ゲームを司るプレーメーカーのために製作されたスパイク『マジスタ』。「ギュッと足を包み込むような感覚」という抜群のフィット感がスパイク内の足の安定を高め、彼の正確なボールコントロールをサポートしている。山口が気に入っているのは刃型のスタッド。「ボールを奪うときの踏み込みにすごく影響していると感じています。それに、ロングボールも蹴りやすいんですよね。威力が伝わる感じがする。これを履き始めてから、サイドに蹴るボールが増えた気がします」。スパイクへの信頼がプレーにまで変化をもたらしているという。

 最後に、世界と戦うために必要なものは何かと聞いてみた。「僕はシンプルに気持ちの部分だと思います。最後の最後で体を張ったり、走り切れるか」。もちろん、気持ちは戦うために不可欠な要素だ。だが、その“気持ち”は厳しいトレーニングによって磨かれた感覚や鍛え抜いたフィジカルがなければ簡単に折れてしまうだろう。トレーニングの先にしか勝利はない。だから、山口蛍は妥協しない。

インタビュー=高尾太恵子/写真=ナイキジャパン

By 高尾太恵子

サッカーキング編集部

元サッカーキング編集部。FIFAワールドカップロシア2018を現地取材。九州出身。

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