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熊本へ届け…決勝弾の浦和FW李忠成、秘めたる思いを込めた弓矢パフォーマンス

名古屋戦で決勝ゴールを挙げた浦和FW李忠成。熊本の子供たちと交わした約束を果たした [写真]=清原茂樹

「見てますか? 決めましたよー!」

 鮮やかなボレーシュートで決勝ゴールを挙げた殊勲のヒーローは、試合後にテレビカメラに向かってこう呼びかけ、満面の笑顔で手を振った。

 29日に行われた2016明治安田生命J1リーグ・ファーストステージ第9節、名古屋グランパスをホームに迎えた浦和レッズは、強風が吹き荒れる埼玉スタジアム2002で大量4ゴールを奪って快勝。その中でゴールへの思いを一際強く抱いていたFW李忠成が、4万2547人の観衆の前で躍動した。

 李は25分に柏木陽介が挙げた先制ゴールの起点となると、36分には興梠慎三へスルーパスを送り、決定的なチャンスを演出。39分には李も「本当に素晴らしい」と称えたシモビッチのスーパーゴールで名古屋に同点とされて前半を折り返す。それでも「自分たちのサッカーをやり通せば、いい結果になると信じていた」。そう意気込んで迎えた後半、彼に最大の見せ場が訪れる。56分、ペナルティエリア内左へ抜け出した関根貴大のクロスを左足のジャンピングボレーで合わせ、ゴールネットを揺らしたのだ。

 この勝ち越しゴールをきっかけに、浦和は62分に興梠が、65分には武藤雄樹が追加点を挙げて4-1の勝利を収めた。チームをリーグ7戦無敗、3連勝へと導いた決勝弾は李自身も納得の一発、そして手応えのあるゴールだったという。

「風があって難しかったけど、うまく待つことができて良かった。あれでチームもだいぶ落ち着いたんで、すごく分岐点になるゴールだった。前半、みんなエンジンがかからなかったのは、疲れもあると思う。そういう中でもチームを建て直してから自分たちのサッカーに持っていけたのは、一つの自信にもなった」

 会心のゴールを決めたあと、李はいつもどおりの弓矢パフォーマンスを披露した。だが、このパフォーマンスには普段と異なる意味が込められていた。

 激闘を制した前節の川崎フロンターレ戦から一夜明けた25日、李はチームメイトの槙野智章西川周作、大谷幸輝らとともに、地震で被災した熊本県にいた。ロアッソ熊本主催のサッカー教室にサプライズで登場し、200名を超える子供たちとサッカーを楽しむなど、被災地の人たちと交流を図った。

 被災地では苦しい生活を強いられている人が多くいる。実際に足を運び、その目で見てきた李は、「本当に辛い思いをしている中で、僕たちサッカー選手が何をしてあげられるか」と自問。そんな人たちに少しでも元気になってほしいと思いを強めていた。

「熊本に行って、子供たちのパワーを感じた。常に前を向いて将来を見据えて、辛い中でも元気があった。そんな中で僕たちサッカー選手たちができること……浦和レッズが勝ってうれしい、僕が点をとってうれしい。そんな話題が出ることで、彼らに元気を与えられることができると思う」

 それから4日後の名古屋戦、李はその思いをすぐさまゴールという形につなげた。そして大歓声の中、青空に弓矢を放つ。風に乗って、熊本へ届けとばかりに――。

「子供たちとも約束したんですよ。『点を取って勝つ。だから見とけよ』って。『辛いと思うけど君たちは一人じゃないし、僕たちは遠い埼玉からだけど、いつもいつも君たちのことを思っているから』っていう話をしたんです。今日はそういう思いを弓矢に乗せることができて良かった」

 この日、決勝点を挙げて試合のヒーローとなった李は、ともにボールを蹴り、約束を交わした熊本の子供たちにとってヒーローとなったことだろう。だが、元気を得るのは李も同じだ。

「見ている人たちに元気や勇気を与えて、そして僕らもその姿を見ることで(元気や勇気を)与えられる。本当に素晴らしい職業についているなと、この前(熊本に)行ってから切に思いました」

 まだまだ被災地の復興は始まったばかり。李は今後もサッカー選手として、浦和レッズの選手として、少しでも元気を届けられるように全力プレーを続けることだろう。被災地の人々に笑顔を。そんな思いを胸に抱きながら。

文=湊昂大

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