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「賭けだった」“覚悟”の移籍…仙台の堅守を支えるベテランDF平岡康裕

2016.03.28

今季から仙台でプレーする平岡 [写真]=Getty Images

 堅い守備を武器に勝ち点を積み重ねるベガルタ仙台で、いぶし銀の輝きを放つセンターバックがいる。今季、清水エスパルスから期限付き移籍で加入した平岡康裕。今年5月で30代に突入するベテランは、仙台への加入を「賭けだった」と語る。

 清水では、2008年のコンサドーレ札幌への期限付き移籍を挟み、10年間にわたってプレー。2014シーズンには、センターバックながらリーグ戦フルタイム出場で一度も警告を受けず、フェアプレー個人賞を受賞する快挙を成し遂げた。しかし、さらなる躍進が期待された昨シーズンは、「プロ生活の中で一番苦労した年だった」と振り返る。チームは屈辱のリーグ最多65失点を喫し、年間17位でJ2に降格。平岡自身も度重なるケガに悩まされ、リーグ戦の出場は18試合にとどまり、ディフェンスリーダーとしての役割を果たせなかった。


 そんな中で迎えた今シーズン、仙台への期限付き移籍という挑戦の道を選んだ。「ここで結果が出なければ他からも声が掛からないし、エスパルスに戻ってこいと言われるかどうかもわからない。移籍するからには、この歳だからこそ強い覚悟を持って来た」。結果を残せなければ、プロ生活が続かないかもしれない。その危機感がベテランDFを奮い立たせた。

 シーズン前に30日以上も実施された長期キャンプと、平岡自身の温和な性格もあって、新天地ではすぐにチームに溶け込むことができた。また、戦術面でも「やろうとしていることがはっきりしているので、チームのコンセプトは早い段階で頭に入ったし、清水と同じ4バックなので、そこまで違和感なくできた」と理解力の高さを発揮し、開幕戦からレギュラーに定着。27日のJリーグヤマザキナビスコカップ グループステージ第2節、柏レイソル戦でチームとして今季公式戦4度目の完封勝利を果たすと、「本当にギリギリで守りきった試合だったけど、勝ちきれたことは自信になる」と安堵した。

 そこには、苦悩し続けていた昨シーズンから一変した、たくましさに満ちた表情があった。「歳もあるけど、昨年ケガが続いたことには原因があると思うので、今年はプロに入ってから今までで一番、体のケアに気を使っている」。プロ生活で“一番苦労した”一年間の経験が、意識を変える大きな原動力になっている。平岡は、「間違いなく去年の経験があったからこそ、今の結果がある」と語気を強めた。

 2005年にともに清水に加入した岡崎慎司(レスター)は、今や世界を舞台に活躍を続けている。「(岡崎は)エスパルスに入ったばかりの頃はメンバーにも絡めなくて、自分の本職ではないポジションもやっていたけど、努力で這い上がったからこそ、今プレミアリーグでトップに立つチームのストライカーでいられるのだと思う。去年は(IAIスタジアム)日本平にも試合を観に来てくれたし、やっぱり点を取れば全国区でニュースに取り上げられるので、刺激になる」。ポジションは違えども、同じチームでプロ生活を歩み始めた同学年の飛躍は、意識せずにはいられない。

 年齢を重ねるごとに体力面は衰えが生じてしまうものだが、経験値がプレーに大きく反映されるセンターバックは、ここから魅力が増していく。「歳を重ねた分だけ、味の出たプレーというか、自分の色を出せたらいい。それに結果が伴えば、この歳でも自分の成長を実感できると思う」。新天地で、持ち前の安定感や堅実さに磨きがかかった平岡。強い決意の下に挑戦を続けるベテランDFの、いぶし銀の輝きは増すばかりだ。

文=平柳麻衣

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