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【平畠啓史氏はこう見る!】“ぬるっとサッカー”で後半戦2位と躍進中…熊本が軟体動物のような連動性で上位を狙う

後半戦2位と好成績を残している熊本 [写真]=大木雄介

 J1自動昇格圏内に位置する2位ジュビロ磐田の背中にピタリとつくアビスパ福岡。後半戦16試合、10勝4分2敗。後半戦トップの成績で勝ち点「34」を稼いだ。守備の安定感はもちろんのこと、シーズン終盤、相手がリスクを冒して前掛かりになれば、その隙を突く得点力も兼ね備えている。ゆえに、今後もさらに勝ち点を伸ばす可能性は十分だ。

 後半戦の成績で福岡に続くのは、現在9位のロアッソ熊本。9勝4分3敗。稼いだ勝ち点は「31」だ。シーズンを重ねるに連れて、チームは確実に進化している。それぞれの選手もおもしろいが、まずはピッチ上に散らばった選手の収縮具合を楽しんでもらいたい。集散が素早く、フィールドプレーヤーの10人がまるで一つの生き物のように動く。攻撃時の程よい広がりと守備時の集まり具合。その動きは淀みなく、スムーズに配置される。そんな距離感を可能にしている要因の一つが、仙台から途中加入したGKのシュミット・ダニエルだろう。196センチと上背もあり、存在感十分。反応も良く、なおかつキックの飛距離が半端ない。このGKのおかげで、守備陣は後ろ髪引かれることなく、思い切ってラインを上げることができる。そうすることで、フィールドプレーヤーの距離感が非常に良くなった。距離感が良くなり、軟体動物のように動く10人の動きは、対戦相手を無力化することに成功する。相手の10人を分断してしまうのだ。大宮戦しかり、讃岐戦の前半しかり。相手の攻撃陣と守備陣を分断することに成功した。相手の攻撃陣に仕事をさせないことが、後半戦の16試合で9失点という成績に繋がっている。

 さて、熊本というと、セットプレーでも多くの引き出しを持っている。特にコーナーキックの際、キッカーの蹴るタイミングが絶妙。クイックで始める時もあるが、クイックでもなく、かといってじっくりセットするわけでもなく、キッカーがあまり助走を取らず、ぬるっとしたタイミングでボールを入れてくる。この“ぬるっとコーナー”が本当に絶妙で、相手ディフェンスの油断を誘うのである。FKで直接ゴールを狙える選手も多く、右なら養父雄仁清武功暉、左なら嶋田慎太郎上原拓郎と優秀なキッカーを擁する。次節、ホームでの磐田戦では、現在4試合連続ゴール中の清武が出場停止ではあるが、嶋田が出場すれば、彼の魅力的な左足に注目。楽しみが一つ増えることになる。

 卓越した技術力とゲームメイクに長けた養父の右サイドバックも板についてきた。右サイドから、前方のスペースへ活きたパスを供給し、意表を突くパスで相手を混乱に陥れる。左サイドバックでプレーする黒木晃平のスタミナは無尽蔵。カウンターの際、必ず長い距離を走っているのは彼だ。時間が経てば経つほど、彼のスタミナは際立つ。攻撃陣では、ここ数シーズン、コンスタントに結果を残す斉藤和樹。体の強さとスピード、そして献身性。今シーズンは、初めてゴール数を二桁に乗せた。地元熊本出身の岡本賢明も本来のキレを取り戻し、小気味良い動きで相手ディフェンスをかき回す。

 そんな好調かつ軟体動物のような動きをする熊本の心臓が熊本ユース出身の20歳、上村周平だ。164センチと小柄だが、基本の技術が優れていてミスが少ない。なおかつ、ポジショニングが素晴らしく、いつも自分の周りにスペースを確保することができる。周りが見えているため、ターンに無理がない。少しバルセロナの香りを漂わせる。派手さはないが、実に素晴らしいプレーヤーである。

 良い選手たちが、良い距離間で描くサッカーが、後半戦で好成績を残しているのは必然。そんな熊本は、今節で磐田、次節でセレッソ大阪と対戦する。ここをうまく乗り越えることができれば、J1昇格プレーオフ進出も夢ではない。


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