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大宮の渋谷監督が開幕戦で見せたJ2での戦い方の模範試合

文●川本梅花

◆ほっとした表情を見せる監督

「こんにちは」と大きな声で会見場に入ってくる。

 席に着くと再び「こんにちは」と言って、「アルディージャ監督の渋谷です」と自分の名前を記者たちに告げる。監督の真面目で明るい人柄がうかがえる場面だ。

「まずは、勝ったということで安心しています。開幕戦で、金沢さんはJ3からJ2に上がってきて勢いもあると思っていました。しっかりとしているというのは自分自身もわかっていました。ですから私自身プレッシャーを感じて試合に入りました。それが選手に移ってしまったのかなというのが感想です。最初の10分、普通裏に蹴る場面、普通だったらそういう形になるところが相手に当たったりした。1つひとつ判断が違ってカウンターを喰らってしまう。金沢さんのやりたいことができていた。私たちは、やりたいことを最初にできなかった。また、セットプレー等も相手に与えていました。相手のストロングポイントのところを凌いでくれていて、前半はそういう形だったので、あまりいいところがなく終った。ただ後半、前半の途中からですね、しっかりとボールを活かしてサイドに散らして、4-4-2の相手に対してはサイドを起点に作るというのを、私自身イメージしていましたし、選手たちも動き出してくれたので、非常に助かりました。

昨年にはなかった中央のコンビネーションで、得点を取れたとういうのが、私自身嬉しく思います。キャンプで中央を意識してやっていたことができた。また、1-0というこの結果は、ファン、サポーターのみなさんが天候の悪い中きていただいた。8000人の方が来てくれた。もちろん金沢さんも来てくれた。J2になっても、これだけ応援してくれていることに感謝しています。それを選手にも伝えました。やっぱり、J2に落ちたときに本当のファンの人はわれわれを見てくれている。そこで勝利を届けなければいけない。そういうことをゲーム前に言いました。それが達成できて、非常に嬉しく思います。この1戦から、次のセレッソ戦、目の前の相手に勝つために、1戦1勝というところを忘れずに準備して次に繋げたいと思っています」。

――「前半途中からボールをもてるようになった」というお話でしたが、前半もサイドハーフが前に張り出し過ぎてボールが回らないのかなという印象だったんですけど、そのあたりはどうお考えでしょうか?

「はい。あのその通りだと思います。サイドに張り出し過ぎているというのは、ボランチがボールをもち過ぎているので、選手たちが外に逃げて行くしかない。基本的にボランチが中にいれば、たぶんサイドバックが高い位置を取れて、サイドハーフが中に入ってきたりできる。後ろで重めになっていたので、後半はそこを修正しながらやりました。金沢さんはあそこで一回セットするので、そうすると中で受けると窮屈に感じる選手がいる。だから少し下りてきてプレーをして、なおかつテンポもなかったので、相手の4-4-2の組織を崩せないままボールを動かしていた、と私自身も感じていました。それを後半は意識付けしました。

――それは、もう少し厳しいところに入って行っていいよ、ということですか?

「はい。そういうように言っていました」

――今日、実際にJ2を戦ってみて、厳しさを感じましたか?

「金沢さんのしっかりとした守備は、私自身もよくわかっていたので、その中でボールをつけるところを間違える、パスをつけるところを間違えると、たぶん持っていかれる可能性がある、と思っていました。距離感やテンポを変えてやれたらよかった。相手の背後とか最初に取れなかった。相手に当たって、そのままカウンター喰らってセットプレーとか、落ち着かないまま始めていたので、ゲームコントロールという部分ではまったく前半はできなかった。厳しいというか、そう簡単に勝たせてくれない。もちろん、J1でも簡単に勝たせてくれませんが、J2だからということではなく、相手がしっかりとやってきた場合は、われわれもしっかりと準備をもって置かないといけないというのは感じました。非常にいい相手だったので、今後のために役立ったなと思っています」

◆筆者の質問に答える監督

――退いた相手を崩すというのは難しいと思うんです。たぶん、J2で相手が退いてという試合が多くなってくると考えられます。ディフェンダーとミッドフィルダーの間が4~5メートルしかない距離の中で、次に戦うためにどういうイメージをもったのか、お聞かせください。

「たぶん、それが一試合できるチームであれば、相手がいいチームだと思うんです。やっぱりそれを広げるためには、ボールを散らして縦に入れていくというところ。単純な当たり前のことだと思うんですが、でも当たり前のことができない。つける足、どっちにつけるかとかが大きくて、質を求めていかないとならない。あとはタイミングなどを求めていって、入れられるタイミングとか立ち位置とかがすべて関わっていくと思う。そうしたイメージは今でもつけているんです。そこを打開するのはなかなか難しいと思うんです。アグレッシブに、相手がしっかりした相手ならば動かないといけないと思う。どんなにスペースがなくても動いてみるとそこで何かが生まれる。そこで立ち止まってサイドからクロスを上げてヘディングというよりは、動くということを常に言っているので、そこを極めて質を上げていくというのは意識してやっていかなければいけない。いろんな工夫は、山形さんや栃木さんと試合をやっても、0で終ったので、その0を踏まえて、アタックの最後の局面、3分の1からの局面を少し修正してトレーニングしました。

あれは退いているというよりは、しっかりしたオーガナイズができていると私自身は思っています。退いたというよりは、あそこにラインを設定してあそこからカウンターとうのが金沢さんのやり方だと思う。スペースを埋めて、そうしたところをあのシステムとかやり方を逆手に取っていくことを考えています」。

――ムルジャ選手の怪我に関しては?

「ちょっと僕も今はわからないです。足を冷やしていましたけど。足を吊ったのか。2日前にちょっとコンディション不足だったので、ランニングを多く取り入れたので、足を吊ったのかもしれません。どういう状況か私自身も今ははっきりわからないですね」

 最後から2番目の質問は筆者がおこなったものだ。質問と解答をわかりやすく筆者の言葉で書き換えてみよう。その方が読者により明解に真意が伝わると思われる。

 筆者「退いた相手を崩すというのは難しいと思うんです。J2において今後戦っていく中で〈相手チームが退いてくる〉という試合が多くなってくると考えられます。ゴールキーパーとディフェンダーの距離。ディフェンダーとミッドフィルダーの距離。それぞれが4~5メートルしかない距離。そうしたスペースを埋められた中で、どのように攻略するのかのヒントになった試合だと思います。そうした相手と次に戦うために、この試合でどういうイメージをもったのか、お聞かせください。

 監督「ゴールキーパーとディフェンダーの距離。ディフェンダーとミッドフィルダーの距離。そうした選手間の距離を狭めて、一試合通してできるチームであれば、相手がいいチームだということになります。しかし、そうしたチームはなかなかない。試合の中どこかで歪みがでてくるものです。だから、相手が狭くしたスペースを広げるためには、ボールを左右に散らして、縦に入れていくことが重要になってくる。これは、サッカーの原理原則であるし単純で当たり前のことだけれども、実際に試合の中で常にできるのかと言えば、当たり前のことをできないのが現実です。

パスを味方に出すときにどちらの足にボールを出すのか。当たり前ですが、そうした細かいことが大きく左右する。つまり、プレーの質を求めていかないとならないのです。たとえばタイミングを求めることも大切になってくる。ボールを入れるタイミング。受け手の立ち位置はどこにあるのか。そうしたすべての要素が関わっていくと思うんです。選手には、お互いのイメージを共有するように今でも意識付けをしているんです。

狭いスペースを広げて打開していくのはなかなか難しいと思うんです。だから、アグレッシブに動いていくことが重要です。しっかりと守備をしてくる相手なら、余計に動かないといけないと思う。どんなにスペースがなくても動いてみるとそこで何かが生まれる。立ち止まってサイドからクロスを上げてヘディングというよりは、動かなければ何も始まらない、と言っています。そうした部分を極めて質を上げていく。状況の打開には、いろんな工夫が必要。山形さんや栃木さんと練習試合をやって、無得点で終ったんです。相手から得点を奪えないという攻撃力を踏まえて、アタックの部分で、特に最後の局面ですよね。ピッチ3分の1からの局面を少し修正してトレーニングしました。

金沢さんの守備は、退いて守るというよりは、しっかりしたオーガナイズができていると私自身は思っています。ペナルティエリアに少し入ったところにラインを設定する。ボールを奪ったらそこからカウンターが始まるというのが金沢さんのやり方だと思う。スペースを埋めてくるやり方。さらにリトリートしてディフェンダーとミッドフィルダーの2ラインを敷くシステム。そうしたやり方を逆手に取って、攻略していくことも考えています」

◆大宮にとっては有意義な一戦

 この試合は、両監督のインタビューを読めばわかるように、金沢がとてもいい試合をしたのであり、だからと言って、大宮の攻撃に迫力がなかったと一概に批判できない。渋谷監督が金沢の守備を「オーガナイズできている」と表現した通り、金沢は、しっかりとブロックを作って、スペースを与えないやり方をするチームだった。そうした相手から得点を奪うのは簡単なことではない。

 J1だったチームがJ3から昇格してきたチームに苦戦した。実力が違うので金沢を圧倒的するだろうと、もしも考えていたならば、まったくの見当はずれだと言える。サッカーはそんなに容易い結果を手に入られないし、退いた相手から得点を奪うのは本当に難しいことなのだ。だから、J2で戦うことはサポーターにとってストレスを抱えるような試合が多くなると思われる。

 この試合は、大宮にとってとても貴重な経験を積ませてもらった試合なのである。なぜ、柏レイソルやガンバ大阪がJ2から昇格してリーグ優勝できたのか? それは、オーガナイズされた守備力、退いて守る守備力のチームと戦うことで、状況を打開する力がついたからだと考えられる。チームの基礎力をアップさせて次の扉を開くためにも、大宮には有意義な一戦だったのである。

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