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大宮の最終戦を振り返って…完全な勝利のあとに待っていた残酷な結末

J2降格が決定した大宮アルディージャ [写真]=鷹羽康博

 J1最終節が6日に行われ、初昇格の2005年から続くJ1残留を狙う16位の大宮アルディージャは、すでに降格が決まっているセレッソ大阪をホームに迎えた。

 勝利が最低条件の大宮は、C大阪に2-0で勝利し残留に望みをつなぐ。しかし、15位の清水エスパルスが引き分けたため15位に浮上することができず、初のJ2降格が決定した。

■実感がわかないJ2降格の“現実”

 試合終了までの1分間のアディショナルタイムがあっという間に過ぎていく。スタジアムの記者席では、それぞれが携帯やパソコンの画面から映し出させる清水エスパルスヴァンフォーレ甲府戦の行方を追いかける。すぐに主審が試合終了を告げる笛を鳴らした。完全な勝利を手にしたピッチに立っている選手たち全員が、ベンチを見つめて自分たちが置かれた残酷な結末を知らされる。

 サブメンバーとしてベンチにいて試合を見つめていた片岡洋介は、淡々と流れていく時間に抵抗さえできない自分を歯がゆく感じていた。「悔しいというよりも悲しいです」と試合後に片岡は語り出す。「ピッチの外から試合を見ていて、何も変化しない景色がただ動いていくという感じでした。淡々と時間だけが過ぎていく。得点が入ったときは嬉しかったんですが、清水の結果次第という他力の状況で、清水が得点を入れられたという知らせがなかったから、気持ちの浮き沈みが起らなかったんです」と話す。

 片岡は大宮がJ1で初めて戦う2005年に国士舘大学から加入する。2010年に京都サンガF.C.に移籍するが、翌年の2011年に再び大宮に復帰した古参の選手である。大宮がJ1の舞台に毎年なんとか踏みとどまっている時期をすべて知っている数少ない選手の1人だと言える。そんな片岡は、今季を振り返って「エネルギーがなかった」と述べた。今まで経験した残留争いと何か違った点はないのかを尋ねると、「チームメイトは私生活も含めてまとまっていたと思います。以前のように、試合が終ったら録画を選手たちで見て話し合うということはしませんでしたが、監督やコーチがよかった点とダメだった点を細かく指摘してくれたので、自分たちが集まってやる必要がなかったんです」と話す。新監督になってチームの雰囲気もよくなったと言う。「突破しようとするエネルギーが欠けていた」と強調した。

「監督が交替して、『今までのやり方や選手起用までフラットになる』と選手全員が思うから気持ちの入り方が違ってきますよね。他のチームを見ていても、監督が替わったから試合に勝つようになったチームはあったと思うんですが、今季の大宮はそれが最後まで続かなかった。『絶対にこの試合は引き分けで終ろう』とか、『もう1点とって試合を決めてやろう』というエネルギーを試合に出ていても感じられなかったんです」

 そう話すと少しうつむきながら、「試合が終ったばかりで、正直に言ってまだ実感がわかないんです。明日になったら、今とは違う気持ちがわいてくると思うんですが」と言う。

■新加入の選手が経験した“悔しさ”

 片岡が古くから大宮の歴史を知る選手だとすれば、その逆に今季加入したドリブラーがいる。来季はチームの中心選手になると思われる泉澤仁だ。泉澤は阪南大学出身で2013年7月から12月まで大宮の特別指定選手であった。泉澤のプレーの特徴は、左サイドから縦へ突破してセンタリングを上げるというスタイル。泉澤は渋谷洋樹監督に「左サイドのスペシャリストになってくれ」と告げられた逸材である。監督からは「タッチラインに張ってプレーするように」と常に指導されていた。実際に泉澤本人も「2トップが(的として)大きい選手なので、中に切り込むプレーというよりも僕が縦に切り込んでクロスを上げた方がチームとしても勢いがつくだろうと意識していました」と話す。

 泉澤は「渋谷監督になってからチームの雰囲気が変わったんです」と述べる。「選手それぞれの特徴を活かすような指導になったと思います」と言う泉澤に「具体的には?」と問うと、「たとえば、カルリーニョスが試合に出るときは、『ロングキックが得意なのでそれを活かすようなポジショニングをとれ』と伝えてくれます。守備に関しては、『あまり下がり過ぎるな』とよく言われます」と教えてくれた。

 今季のプレーを振り返った泉澤は、「何もしないまま終ってしまったなという感じです。悔いの残る一年でした。もっと自分のプレーでチームの勝利に貢献したかったし、勝たせる試合の場に自分がいたかった」と悔しさをあらわす。J2で戦うことになった来季については、「戦う状況は大変だと思うし、今のサッカーとは変わる部分も出てくると思うんです。僕自身は、ドリブルは今のままで活かしたいんですけど、もっと決定的なパスを出してチームを勝たせることができればいいと思っています」と決意を打ち明ける。「自分の力でJ1に復帰させたい、ということなんだね」と尋ねると「はい、そうです」と力強く答えた。

■J1昇格への厳しい道のり…問われるチームの真価

 ある選手がバスに乗り込む前に話し出した。

「大宮にとってこれからが正念場だと思うんです。何人の選手がこのチームに残ろうと思うのか。実際に、嫌だと言って移籍していった選手もいた。たとえば、柏(レイソル)やガンバ(大阪)はJ2に降格しても移籍する選手が少なかった。大宮をJ1に上げようと考える選手がどれくらいなのか。大宮の真価が問われると思う」

 J2に降格したチームがJ1へ昇格する道のりはとても厳しいものだ。ジェフユナイテッド千葉の現状を見ればその厳しさはよくわかる。大宮も相当の覚悟をもって挑まなければ昇格することはとても難しいことになる。しかし、渋谷監督が「失敗から学ぶこと、失敗で痛い目にあった人間は必ず強くなると信じています」と述べたように、1年間でJ1復帰が可能であると筆者は信じている。完全な勝利のあとに待っていた残酷な結末は、来季になって希望の光を生み出すための結末だったと言えるときを心から願っている。

文=川本梅花

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