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長友と同じ道を歩む…FC東京MF武藤嘉紀の大きな第一歩

2014.03.02

 本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人


 いよいよ開幕したJ1リーグ。柏対FC東京の取材に行った。

 FC東京のスタメン表を見ると、武藤嘉紀の名前があった。武藤と言えば、FC東京U-18時代から、日本人離れした身体能力と、独特のリズムを刻むドリブルが魅力のアタッカーで、好みの選手であった。一発で局面を変えるプレーや、強烈なミドルシュート。とにかくピッチ上での存在感が違ったことが鮮明に覚えている。

 武藤には高校卒業時、当然のようにトップ昇格のオファーがあった。だが、慶応義塾大学への進学を選択した。成績優秀だっただけに、慶応大への進学は賢明な選択だなと思う一方、「正直もったいないな」とも思った。なぜならば、彼の能力をもってすれば、1年目からの出番も十分にあっただろうし、高卒でプロ入りしても問題ない選手だったからだ。

 慶応大では当然のように1年の頃からレギュラーを掴み、レベルの高さを見せつけた。2年次はけがで苦しんだが、昨年は関東大学リーグで10得点5アシストの活躍。さらに特別指定選手として、FC東京でJデビューを果たしている。

 そして、昨年12月、慶応大ソッカー部を退部して、FC東京に入団することが発表された。長友佑都伊野波雅彦らと同じように、大学3年で部を止めて、J入りを決めたのだった。

 これは賢明な選択だった。レベルはもはや大学サッカーを越えていた。ルーキーながら堂々の開幕スタメンという形がその証拠だ。この試合でも積極的にボールに触り、バイタルエリアに入ってはシュートを狙うなど、躍動感あふれるプレーを見せた。特に後半は、決定的チャンスが何度も訪れた。しかし、シュートはことごとくGK菅野孝憲やDFに阻まれた。ゴールという結果は残せなかったが、71分に石川直宏と交代するまで、存在感を発揮し続けた。

「スタメンが決まった3日前は緊張していたけど、楽しもうと思ってプレーした。積極的に前に行って、チャンスはあったけど決められなかった。今度は90分間使ってもらえるようなプレーをしたい」。

 試合後のミックスゾーンでは初々しさがあったが、プレーは落ち着いていた。これからさらに持っている才能をピッチ上で発揮するために、大きな第一歩を踏みしめた。


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