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【インタビュー】「自分の足に合うスパイクを」 サッカーショップ『俺の足』が掲げる理念

2023.03.09

株式会社俺の足 代表取締役の山根晋太郎さん [写真]=須田康暉

 国立競技場の真向かいにあるビルの5階に、知る人は知っているサッカーショップ『俺の足』は居を構える。

 店内に入るとうずたかく積まれた、様々なメーカー、様々な色、様々な種類、そして新旧のスパイクシューズに圧倒される。

 豊富な種類を取り揃え、シューズの修理を行うなど、プレーヤー目線で経営をする株式会社俺の足 代表取締役の山根晋太郎さんに、ショップ経営に至った経緯や、経営方針などを聞いた。

インタビュー=須賀大輔

[写真]=須田康暉

―――お店の中に一歩足を踏み入れたときからサッカー少年に戻った気持ちになり、ワクワクが止まりませんでした。このお店を立ち上げた経緯を教えてください。

僕自身、足のサイズが少し変わっていて、サッカーをやっていたときに自分の足に合うスパイクがなかなか見つかりませんでした。これは、このお店を立ち上げて、自分の足を客観的に勉強して分りましたが、僕の足は、実寸が25.5センチなのに踵は24センチしかなかったんです。

サッカーショップでいろいろなスパイクを試し履きましたが、どこにも合うサイズのスパイクがなかったんです。ただ、「もしかしたら海外のスパイクなら合うモノがあるかも」と探し始めて、同時に並行輸入のような形で、個人で販売を始めたら需要があり、多くの人にスパイクが売れました。それがこのお店を始めるようになったきっかけです。

その後、やはりスパイクは履かないと分からないし、買えないというハードルにぶつかったんですが、『BMZ』というインソールのメーカーの社長さんに『店舗を出してみれば?』と助言していただき、その言葉を本気にして、2019年の10月に開業しました。

―――このお店を開く前まではどんなお仕事をされていたんですか?

経理業で電卓を叩くのが仕事でした。そこでは過不足がないこと、つまり“ゼロ”とすることが最大の成果でしたけど、このお店ではプラスαの付加価値、接客やお客様の購買意欲、顧客満足度が非常に大事になります。世界中のスパイクを探していく中で自分にしかできないこともあると感じて会社を立ち上げました。

―――ふつふつとその思いが沸き上がってきたと。

前の会社には『いつでも戻ってきていい』と言っていただけて。だから、『失敗してもいい』くらいのメンタルでやりました。すると…、開業直後にコロナ禍となってしまい、戻るに戻れなくなりました(苦笑)。また、個人的な販売を始めたのは8年くらい前なんですが、当時は有給を使って世界中を飛んで、サッカー用品店の代理店と契約を結んでいました。それを効率化したかった思いもどこかにはありした。

[写真]=須田康暉

―――実体験が詰まっているお店なんですね。

そうだと思います。“ないモノがある”。それが弊社の強みだと思っています。例えば、同じメーカーの商品でも、日本では扱っていなくても海外ではウィメンズのサイズがあったりします。学生時代の僕には、踵が細いウィメンズの商品は都合が良かったんです。そうやって探せば、マッチする商品はあります。ただ、その商品説明や理由をテキストにしても、ディテールをお伝えしづらかったりするので、YouTubeやInstagram、Twitterなどで顔を出して商品の説明をするようになりました。

―――『俺の足』というお店の名前はインパクトがあります。由来を教えてください。

既存のショップは横文字が多いですけど、『俺の足』はサッカーショップの固有名詞と同時に会話のきっかけにもなると考えたんです。例えば、「俺の足が痛い」「俺の足に合うスパイクを探したい」とか。そういう言葉を発したときにこのお店が頭に浮かぶようになってくれればと想像して、決めました。

―――国立競技場の目の前という立地も最高です。場所はこだわりましたか?

開業前、札幌から沖縄までかなりの場所を検討しました。その結果、セレクト系のお店であればドミナント戦略(※1)が強いと分かったんです。東京都23区で展開されているサッカーショップの立地のちょうど中間地点が、たまたまこの場所だったんです。そして、国立周辺にはショップがなかった。地方から東京に来て、他のショップで買い物をしたついでに、寄ってもらえればいいなと狙ってこの場所にしました。ありがたいことに、試合開催時には店舗に入り切らないほどのお客さんに来ていただいています。

(※1)特定地域内に集中した店舗を展開することで、経営効率を高め、地域内シェアで優位に立つ戦略

[写真]=須田康暉

―――お店はスタッフ2名で切り盛りしているとうかがいました。

基本的にはそうです。立ち上げから3年目までは私一人でした。その中で、スパイクの修理や加工を担当できる方に加わってもらいました。全国のどこにもないサービスです。ナンバーワンかつオンリーワンのサッカーショップを目指していく中で修理や加工の専門家はどうしても欲しい人材でした。ここまでスパイクを直せる環境やお店は他になかったと思います。販売方法だけでなく、その意味でも、日本で唯一の店舗だと自負しています。

―――「スパイクを直して履く」。その発想がなかったです。

年々、スパイクを買うハードルが高くなっている感覚は接客をしていても感じます。「昔に比べてスパイクが高くなった」という声も聞こえてきます。それならば、高いお金を出して新しいスパイクを買うよりも、安いお金で修理して、同じスパイクを長く履いたほうがコスト的にも良いです。また、今は新しいモデルのスパイクが販売されるサイクルがすごく早く、同じモデルを買い替えようとしても、手に入らなくなっていることもある。その解決方法となれるのが『俺の足』です。また、スパイクの修理を考えたときに『俺の足』に来ていただければ、何かしらのきっかけを伝えることができると思います。その相乗効果は非常に高いと思い、修理業もはじめました。

―――修理に来るお客さんは多いですか?

多いと感じています。誤解を恐れずに言わせていただくと、今のスパイクは昔より壊れやすいです。頑丈なスパイクよりも薄くて軽いスパイクが人気なので、相対的に壊れやすくはなってしまうと思います。

―――他にどのようなお客さんが来ますか?

自分の足がどのスパイクに合うか知りたい方と、人と被らないスパイクを求めて来る方の半々ですかね。「このスパイクがほしい」という方もいるので、海外の代理店や店舗とのつながりもあるので、あれば取り寄せも可能です。

[写真]=須田康暉

―――ターゲットはどの辺りの層になるのでしょうか?

日本で断トツに客単価の高いサッカーショップだと思っています。だから、「サッカーをやってみよう」という方が、いきなり来店されることは少ないですね(笑)。15歳から25歳くらいの現役プレーヤーがボリュームゾーンだと感じています。

―――やはり日本はスパイクが売れる国ですか?

売れると思います。日本は給与の高い先進国だと感じています。世界的に見てもスパイクにかけるお金は高いですね。あとは、為替の影響もありますが、ナイキ、アディダス、プーマなどのトップモデルのスパイクは日本が一番安いです。

―――スパイクが売れる時期はありますか?

高校生で言えば、時期によって売れ筋が違います。新学期前は中学から高校に進学するので土から人工芝に練習場が変わる人も多いので、人工芝用が売れますし、インターハイや夏の合宿前、そして選手権前は天然芝用が売れます。6月や12月は天然芝用、2月は人工芝用などと傾向はあります。ちなみに、部活がオフになることの多い月曜日が、一番忙しいですね。

―――最後に今後のビジョンを聞かせてください。

将来的には全国展開もしたいですし、サッカーショップとして一番になりたいです。ただ、接客の顧客満足度を考えると自分が見つけた“後継者”がいないと難しいとも思っています。まだ、そのような人を雇うまでは至っていないので、そこは課題ですね。あとは、スパイクを作りたいです。そもそも、スパイクが壊れる9割はソールとアッパーの剥がれなんです。接着するから剥がれる。だから、剥がれないスパイクを造ればいいと取り組んでいて、実は今、いいところまできているので、お知らせできるときを楽しみにしています。

[写真]=須田康暉

俺の足
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷2−33−10 DAVISONビル5F
HP:https://orenoashijapan.com
Instagram:https://www.instagram.com/orenoashi_bmz
TikTok:https://www.tiktok.com/@orenoashi
YouTube:https://www.youtube.com/@user-qh7yv5ui2b

By サッカーキング編集部

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