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「1分、1秒を無駄にしたくない」 “不惑”迎える今野泰幸の2023年の野望

南葛SCでの2シーズン目を迎える今野 [写真]=元川悦子

 2022年は稲本潤一や関口訓充らビッグネームを大量補強し、1年でのJFL昇格を目指しながら、関東サッカーリーグ1部で7位に終わった南葛SC。敗者復活を懸けて10月の全国社会人サッカー選手権にも参戦したが、2回戦で敗退し、上位2チームがJFLに上がれる全国地域サッカーチャンピオンズリーグ参戦は叶わなかった。

「JFL昇格が甘くないことは去年1年でよく分かった。チームが1つになって、トレーニングをハードにこなさなければいけないし、団結しないと難しいなと痛感しました」

 こう語るのは、元日本代表の今野泰幸。Jリーグ通算563試合出場、53ゴールという偉大な実績を誇る名選手も、プロキャリア初の下部リーグでの戦いは一筋縄ではいかなかったようだ。

 南葛1年目だった昨季は主にセンターバックやサイドバックで起用されたが、ケガも多く、コンスタントな活躍はできなかった。加えて言うと、シーズンラストの10月に挑んだ全社は5日で5試合という超過密日程。これには百戦錬磨の男もさすがに驚かされたという。

「南葛は2戦目で負けてしまって、僕は1戦目に出て2戦目はお休みだったけど、もし3、4、5戦目と勝ち続けて『試合に行け』と言われていたら、どうだったか本当に分からない。結局、新たな環境に慣れるのに1年かかったし、体を作り切れていなかったと思います。だからこそ、今年は体に鞭打って、戦えるフィジカルを作りたい。球際で負けないようなタフさを身につけたいと思っています」と、25日に40歳の誕生日を迎える大ベテランはまるで少年のようにキラキラと目を輝かせた。

 今野にとって2023年最初のゲームは、1月15日の鹿島アントラーズとの練習試合だった。20分×3本という変則的な形式の中、背番号15は1、2本目にアンカーで先発。合計30分プレーし、コンディションの良さを感じさせた。プレシーズン序盤とはいえ、久しぶりのJ1相手の実戦はワクワク感も大きかったはずだ。

「今、新シーズンに向けて始動して、ボランチをやらせてもらっているので、今年は中盤のチャンスもあるのかなと。改めて楽しさを感じるし、また学べるから、成長できそうな1年になりそうな感じです。もちろん、1週間経ったらまたセンターバックに逆戻りかもしれないけど、使い勝手がいいところは自分の良さでもある。どこでも対応できるように準備をしたいと思います」

 全てに対して前向きなマインドでいられるのも、FIFAワールドカップカタール2022から刺激を受けたことが大きい。今野は大会の番組にゲスト出演しただけでなく、深夜に起きて日本以外の試合も数多くリアルタイム観戦し、世界最高峰のトレンドを目の当たりにしたという。

「メチャクチャ面白かったですね。とにかくサッカーが速かった。攻撃もプレスもパススピードも全部速いし、スリリングでしたね。あのインテンシティの高さで90分動けたら感動するし、Jリーグでできればもっとお客さんも増えると思いますよ」と世界基準を改めて実感した様子だ。

 そのレベルに日本代表が近づきつつあるという現実も2回のW杯に参戦したレジェンドにとっては大きな意味があるという。彼が大舞台に挑んだ2010年、2014年の頃は、本田圭佑や香川真司ら一部のトップ選手はヨーロッパで活躍していたが、半数以上が国内組だった。

 しかし、カタールW杯の日本代表は26人中19人がヨーロッパ組で、長く海外でプレーしてからJリーグに復帰した長友佑都や酒井宏樹らを加えると、国内組比率は20%以下。その経験値が大いに生かされたと今野は考えている。

「日本代表メンバーもみんなで海外に行って、インテンシティの高いところでやってるじゃないですか。それで、あのレベルに耐えられたんだと思います。正直、ドイツ戦やスペイン戦の前半は負け試合に近い内容だったけど、彼らは『やれてる、やれてる』という感覚があったんだと思う。俺ら国内組だったら『もうダメだ』ってなりますよね。あの状況で『まだチャンスはある』と思えたのも、経験値が大きい。ベンチメンバー含めて豪華だったのもプラスでしたね」

 その中で、今野が特に着目したのが、谷口彰悟だった。自分と同じCBとボランチをこなせるマルチ型の国内組があそこまでフル稼働できたことは、多くのJリーガーにとっての希望になったと見ている様子だ。

「彼は30歳過ぎてW杯に出て、本当によく頑張った。年齢に関係なく成長できることを示したのは大きな意味があったと思います。自分も40代になるし、いろいろな人が引退するのを見ると『迫ってきているな』と感じる。だからこそ、時間を無駄にしたくない。実績は関係ないし、1日1日というか、もう1分、1秒も無駄にしてはいけない。現役生活を楽しみたいし、そのためにもトレーニングを頑張って、JFL昇格を達成して、最後にみんなで笑いたいですね」

 大ベテランの言葉は重い。限られた選手生活を完全燃焼したいという気持ちは誰よりも強いはず。2023年は南葛の背番号15の一挙手一投足により注目すべきである。

取材・文=元川悦子

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