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“厚木からJへ” はやぶさイレブンが考える地域と人をつなぐ「形」

2022.08.03

はやぶさイレブン

 神奈川県社会人リーグ1部に籍を置く、厚木市がホームタウンのクラブ「はやぶさイレブン」。2021年に将来的なJリーグ入りを目指す意向も明らかにしている。

 クラブは過去、元なでしこJAPANの永里優季が在籍したことでも話題を呼んだ。現在は浦和などで活躍した元日本代表FWの永井雄一郎が選手兼監督として、チームを束ねている。

 はやぶさイレブンとはどのようなクラブで、どのようなことを目指しているのか。また、ファンクラブに代わる形としてサポーターとのつながりを持つためにスタートしたブロックチェーン技術を利用したクラウドファンディング2.0『FiNANCiE』でのトークンの活用について、宇野陽代表と永井選手兼監督に話を聞いた。

インタビュー=池田敏明

試合中の様子

―――まず、はやぶさイレブン設立の経緯から教えてください。

宇野 元々「はやぶさイレブン」という少年団があり、神奈川県厚木市出身である私も所属していました。代表の方が亡くなられて一度チームが消滅したんですが、私自身が清水エスパルスのトップチームコーチなどを経て、2011年に帰郷した際、地域総合型スポーツクラブとして「SCDスポーツクラブ」を立ち上げ、これを母体として、はやぶさイレブンを復活させました。子どもたちにサッカーを通じて、いろいろなことを経験させたいという想いから、当初はサッカースクールやジュニアユースを中心に活動していましたが、卒業生がサッカーを続ける場所を作るために社会人チームとしてのはやぶさイレブンを2019年に立ち上げ、Jリーグ参入という目標を掲げて活動しています。

―――永井選手は2020年に加入しました。経緯を教えてください。

永井 前所属クラブとの契約が満了したタイミングで、清水時代にお世話になった宇野さんに現状報告と今後について相談するために電話をかけたのがきっかけです。所属先を探すというより、仕事をどうすべきか、という相談だったのですが、その際に宇野さんから「県の2部リーグ(当時)だけどやってみる?」と声をかけていただきました。もちろん自分の中でもサッカーを続けたい想いがあったので、「ぜひやりたいです」ということで加入することになりました。

宇野 相談を受けた後、クラブの役員会で受け入れの可否を含めて議論しました。自分で誘ったものの、永井の家族のことなども考えると、私の夢のために縁もゆかりもない厚木に来てもらうのはどうなんだろうか、という迷いもあり、受け入れを断念したほうがいいのではないか、という話もしました。ですが、GMも含めた役員の意見は「日本代表でも活躍した永井選手が来てくれるチャンスはめったにあるものではないので、ぜひお願いしたい」ということでしたので、迎え入れることになりました。

はやぶさイレブン代表の宇野氏

―――今季からは選手兼任で監督にも就任しています。

永井 1年目は選手のみ、2年目はコーチ兼任でしたが、一人の選手として若い選手にアドバイスをしたり、コーチの立場で接したりする中で徐々に指導の道に興味を持ち始めました。一方で選手として続けたい気持ちもある中、選手を続けながら監督の勉強もできるという形でオファーを頂きました。選手兼監督という立場は誰でも経験できるものではないと思いますし、チャレンジしてみたいという気持ちから引き受けさせていただきました。

―――現状で監督と選手の比率はどのような割合なのでしょうか。

永井 もう少し選手としての比重を保てるのかな、と思っていましたが、実際は7割強、監督の立場が強いかもしれないですね。もちろんプレーすることもありますし、練習も普段は一緒にやっているのですが、チームを作る立場で考えると、外から見ないとなかなか公正なジャッジはできないので、監督としての時間が少しずつ長くなってきていると実感しています。

元日本代表の永井選手兼監督

―――選手、指導者としての永井さんをどのように評価されていますか?

宇野 選手でありながら体現したいスタイルを明確に持っていて、サッカーに対する考え方は超一流だと思っています。チームとして、さらに上を目指すためには彼の感性や指導力が不可欠だということでコーチや監督の兼任をお願いしました。はやぶさイレブンでは指導者としての経験が豊富な田坂和昭さんがスーパーバイザーを務めています。今は田坂さんから指導者としての手ほどきを受けながら進めている段階ですが、いろいろ研究し、具現化しながらチーム作りに落とし込んでいってほしいと思います。

―――監督兼選手、クラブ代表というそれぞれの立場から、はやぶさイレブンの魅力を教えてください。

永井 まだまだ完成されたチームではないですし、非常に強いチームかと言われればそういうわけでもないですが、ピッチ上の選手たちがチームのために何ができるかを考えて、一生懸命戦う姿勢を見せられるチーム、子どもたちのお手本になれるチームだと思います。Jリーグを目指す立場としては新参者ですので、その部分でしっかりと魅力を伝えられるようになろうというのは掲げています。

宇野 そのような姿勢を示すためには普段の練習や日常の行動が大切になると思うのですが、その部分は永井を中心に統率されていますし、そこがしっかりした選手しか試合に出られないというのは全員に伝えています。もちろん試合では勝利を目指さなければいけないですが、泥臭く戦う姿勢を大事にする選手たちが集まってくれています。

―――クラブとして目指すべきものに「はやぶさドリームタウン」構想を掲げています。これはどういったものでしょうか?

宇野 はやぶさイレブンが中心となってファン・サポーター、スポンサー企業、タウンアンバサダー(地域加盟店舗)をつなぎ、新たなコミュニティを作っていく構想です。Jリーグ加盟という夢に向かってチャレンジする姿、大人たちが真摯に向き合っている姿を子どもたちに見せ、未来に向かって夢を持ってほしいという願いもありますし、資金面も含めていろいろな方を巻き込み、ご協力いただきながら進めていかないと実現できないと思っています。私自身、サッカーのおかげでここまで来ることができたので、サッカーに恩返しをしつつ、サッカーで地元を盛り上げていくという夢を実現したいと思っています。

はやぶさイレブンが目指しているイメージ

―――サポーターとの密着という点では、『FiNANCiE』でトークン発行を始めました。

宇野 かねてから「ファンクラブのようなものはないんですか?」、「気軽に応援できる形のものはないですか?」といろいろな方からお問い合わせをいただいていました。昨年、役員会で議論したのですが、自分の中では年会費をいただいてTシャツやタオルマフラーを配るだけという既存のファンクラブの形は何となくしっくりこないものがありました。スポーツへの協賛という形で支援やサポートをしていたきながら、費用対効果としてお返しできるものを示すことができない中、湘南ベルマーレの水谷尚人社長からフィナンシェさんのトークンをご紹介いただきました。小さな街クラブを設立当初から熱心に応援してくれるファンがいて、その方々にインセンティブを返せるかもしれないというシステムが画期的だと思い、「新しい形のファンクラブ」として進めていきました。

―――永井さんはトークンやNFTについてどのように理解していますか?

永井 Jリーグでプレーしていた頃を振り返って、選手とファン・サポーターの方々の関係性を考えると、やはりある程度の距離感はありましたし、応援してくださる方々、という認識で終わっていた部分があります。一方で、フィナンシェさんのトークンを取り入れたファンクラブでは、サポーターの方々がチームにより深く関わってくださいますし、魅力のあるチームとはどんなものかを、みんなで考えることができます。選手やスタッフだけが考えて押し付けるのではなく、ファン・サポーターの方々からも発信していただき、みんなで作り上げていく。新しいチャレンジだと思いますし、非常に魅力的で、他のチームとの差別化もできると思います。先日も初期トークンを購入してくださった方々とオンラインでミーティングを行い、ファン・サポーターの方々から直の声を聞くことができました。はやぶさイレブンの魅力をみんなで考え、実際に作っていくことができる最高の場だと思っています。

初期サポーター特典として永井選手兼監督のNFTも!

―――今後、トークンを通じたファンとの交流について考えていることはありますか?

永井 コロナ禍なので直接お会いするのが難しい部分もありますが、まずは試合後などに購入者の方々と交流する時間を作っていくのがいいのかなと思っています。どれだけのものを返していけるのかは僕らにとっての課題だと思うので、いろいろ考えていきたいですね。

―――今後の展望について教えてください。

宇野 ゼロからのスタートの中で100名以上の方が集まり、支援してくださっているのは驚きでもありましたし、非常にありがたく思っています。購入してくださった方々との交流を深めつつチームとして結果も追い求め、トークンの価値を高めていきたいと考えています。ゼロからのスタートなので上がるしかないですし、可能性は無限大だと思っています。チームとして、組織として一歩ずつ積み重ねていけば支援者を増やすことにもつながるでしょうし、最初に購入してくださった方々にもお返しができると思っています。

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