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【インタビュー】矢部浩之『選手ファーストを忘れず、ちびっ子のために』

2020.11.29

[写真]=須田康暉

 ナインティナインの矢部浩之さんが司会を務めるDAZNのサッカー番組『やべっちスタジアム』が、29日23時から生配信番組としてスタートする。

 多くの選手、サポーターから惜しむ声が上がった長寿番組『やべっちFC』が最終回を迎えてから約2カ月。新たなキックオフを迎えるに際し、矢部さんに改めてサッカーとの向き合い方や伝えたいこと、挑戦したいことを聞いた。

インタビュー=小松春生

■さぶいぼが立った

[写真]=DAZN/Suguru Saito

―――番組発表会見ではユニフォームを手渡され、早速袖を通しました。感想から聞かせてください。

矢部 こんなテイストの仕事『初めてやな』という感じでしたね。選手の移籍会見のパロディーなんですけど、リアルとパロディーの間でやっていたという感じでした。ワイシャツ、ネクタイの上からゲームシャツを着るのが夢だったんですよ。

―――身の引き締まる思いもありますね。

矢部 そうですね。会見前、田嶋幸三会長にJFAミュージアムを案内していただいて、サッカーの歴史を見ていたら、さぶいぼ(鳥肌)が立ったようで。自分はプロでも何でもないのに、番組のユニフォームやサインを書いたスパイクを飾っていただけたり、会長自ら案内してくださったり、ありがたいの一言に尽きますね。『やべっちFC』を18年以上やってきた結果、「日本サッカーに貢献していただいた」と言われますけど、こちらはサッカーが好きなだけで番組をやらせてもらっただけで。ある記者の方から、「日本サッカーを応援してきましたけど、最後はやべっちが応援されていましたね」と言われ、「その通りやな」って

―――以前、矢部さんにお話をうかがった際、番組を長年続けられた原動力は「愛情」と笑顔でお話されていました。

矢部 そんなこと言ってましたか(笑)。「愛情」というか「好き」ですね。見返りを求める「好き」ではなく、勝手にサッカーのことを「好き」やから。あと、例えばリフティングができない、ヘディングが得意ではないプロ選手はいますけど、「やっぱりプロってすごい」ということが自分の中にはあって。自分もサッカーをやってきて、当時と今ではレベルも全然違いますけど、思うようにいかず、自分なりに挫折したことが「プロってすごい」気持ちを大きくして、それがつながったんだと思います。

―――一度番組に区切りがついた後、2カ月ほど空白期間がありましたが、変化はありましたか?

矢部 日曜日の番組出演がなくなっただけで、やっぱり代表戦も気付いたら、見ていましたし、DAZNでも試合は見ていますから、サッカーに対する感覚は何も変わらなかったです。

■ちびっ子のご両親にかかっている

[写真]=須田康暉

―――会見時には「視聴環境の変化」に触れていました。実際に番組も環境が変わることになります。矢部さんはどうとらえていますか?

矢部 言っても、まだ一番簡単に見られるものはテレビなんですよ。でも、いろいろな関係で、テレビで中継がされなかったりするので。例えばDAZNのような配信系は、ある意味コロナ禍がいい方向に背中を押したと思います。ホンマにサッカーが好きな人は、配信を見ると思いますし。でも、18年以上やってきた『やべっちFC』は、そこまでサッカーが好きじゃない人も視聴者に多く、ちびっ子がかなり見てくれていました。これから始まる『やべっちスタジアム』も、なんかいい工夫をしないと取り込めないと思っています。『やべっちFC』は放送時間が遅いから、ご両親が録画をして月曜の朝に見る流れもあったので、それを『やべっちスタジアム』ではどうするのかっていうのをね。DAZNの見逃し配信は録画の代わりになるので、ちびっ子のご両親にかかっていると思います。

―――発表された直後からたくさんのファンが話題にしていますし、選手からも多くのメッセージが届きました。

矢部 こっちが勝手にプロのサッカー選手をリスペクトして始めた番組なんですけど、いつからかプロの選手が番組をリスペクトしてくれて、『やべっちFC』に出たいと言ってくれるまでになったことが、めちゃめちゃデカいと思います。番組を立ち上げたときは、選手もそんなにしゃべってくれませんでした。サッカーが仕事やし、最低限のことは試合後にしゃべりますけど、サッカー以外のことはしゃべりませんと。僕はそれが当たり前やと思います。でも、僕の感覚にすごく残っているのは、ゴールデンエイジ(1979年組)の選手たちが番組ですごくしゃべってくれたところから、下の世代が「これが普通なんや」、「番組に出てしゃべりたい」と変化があって、振り返るとそこが大きかったと思います。

―――「取材」となると、かしこまってしまったりもしますが、「矢部さんが」となると全く違いました。

矢部 ワンショットでカメラに向かってしゃべるのは、選手は苦手なんですよね。ただ、Jリーガーはみんなうまくなりました。スタッフ、ディレクターに求められたことを、自分の中で整理して、みんなができるようになったので。急に変わったというより、ちょっとずつ変わっていったというのはありますね。

■やってきたことが間違っていなかった

[写真]=須田康暉

―――変化という言葉が出ましたが、矢部さんにはこれまでの歴史の積み重ねがあり、これからは「おじいさんまで番組をやる」とおっしゃるように、新しい歴史を作っていくことになります。これまでと変わらないこと、これから新しく挑戦したいことはありますか?

矢部 変わらないのは、選手ファースト、リスペクトですよね。選手の面白いボケや天然が出たりしたら、僕も職業柄、ひどいことを言っている時もあると思うんですけど、それがそう見えない、感じないというのは、信頼関係もありますし、それはたぶん、この先も変わらない、消えないですね。絶対に持っておかないといけないことです。

 自分が『やべっちFC』を立ち上げる前は、番組でサッカー好きのタレントさんが、日本代表やJリーグを平気でダメ出しするんです。それにずっと違和感を覚えていて。「じゃあ、同じことをできるのか」と。もし、プロの人から「同じことができるか?」と言われたら、絶対にできないんですよね。僕はサッカーをやってきたこともあるし、プロ選手に対してのリスペクトは普通に持っていた感覚で。だから、選手をけなしたくないところから始まったんです。

 で、フタを開けたら、他のサッカー番組でも、けなす番組がなくなったんです。解説者の方が言うのは、僕はいいと思うんです。でも、真ん中に座っているサッカー好きタレントさんが、ストレートに選手と日本サッカーをけなすことがなくなってきているので、やってきたことが間違っていなかったかなっていうのもあります。

 そこをけなしたら、ちびっ子が目指すところがなくなるやろ、とか、自分たちから日本サッカーの未来を絶ってしまう感じがして。そこはこの先も変わらないですね。僕よりリフティングが下手な選手もいるかもしれませんけど、でも「プロって違うで」と。そこじゃない、何かすごいものを他に持っている。やっぱり選手ファーストが信念ですね。

 これからは、歳を重ねて、体が言うことを聞かなくなるんでしょうけど、プロとボールを蹴りたいですし、より若い選手ともやりたいですね。あとは、僕と同じような年齢の人たちとやっても面白いでしょうし。サッカー好き、経験者のタレントさんも、昔では考えられないくらい増えているので、そういった人たちとボールを蹴ったり、しゃべってもいい。タレントさんなら、間違っていたらボロクソ、言い合えますし(笑)。ご贔屓チームがあったら白熱するでしょうしね。

―――最後に、配信を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

矢部 DAZNで新しい番組『やべっちスタジアム』が始まりますので、ぜひご覧いただきたいと思います。ちびっ子もぜひ、お父さん、お母さんに「DAZNに加入してください、お願いします」「やべっちが見たい」と言ってもらって(笑)。日曜日の23時からなので、ちょっと遅いかもしれませんが、見逃し配信もあるので、ぜひご覧ください。

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By 小松春生

Web『サッカーキング』編集長

1984年東京都生まれ。2012年よりWeb『サッカーキング』で編集者として勤務。2019年7月よりWeb『サッカーキング』編集長に就任。イギリスと⚽️サッカーと🎤音楽と🤼‍♂️プロレスが好き

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