2018.07.02

なぜテーマ曲に起用? Suchmosとサッカーの密接な関係とは

NHKのサッカーテーマ曲を担当しているSuchmos
音楽ライター。Twitterアカウントは@a2take

 連日熱戦が繰り広げられているFIFAワールドカップ・ロシア大会。日本代表の健闘はもちろん、グループリーグから名勝負が続き、毎晩テレビにかじりついている人も多いはず。そこで必ず耳に入ってくるのが、各放送局のテーマソングだ。

 中でも一番の注目は、SuchmosによるNHKのテーマソング『VOLT-AGE(ボルテージ)』ではないだろうか。楽曲に対しては賛否両論様々な意見が飛び交っており、日本代表の初戦・コロンビア戦のハーフタイムに流れた彼らのパフォーマンス映像も大きな話題を呼んだ。はたして、なぜ彼らがテーマソングに起用されたのか? そこには明確な理由がある。

 まず第一に、メンバー自身がもともと大のサッカー好きだということ。特にボーカルのYONCEは以前からリヴァプールのサポーターであることを公言していて、ライブのアンコールで毎回ユニフォームに着替えて出てくる姿は、すでにファンにはお馴染みとなっている。好きな選手は新シーズンからレンジャーズの新たな指揮官となるリヴァプールの“レジェンド”スティーヴン・ジェラードで、彼の熱い人間性に惹かれたのをきっかけに、リヴァプールも好きになったのだという。

『VOLT-AGE』には<On the pitch 聞こえるだろう You’ll never walk alone>というラインが出てくるが、『You’ll never walk alone』といえば、チームのサポーターのみならず、サッカーファンにはお馴染みの、リヴァプールの代名詞と言うべきアンセム。ここにも彼のサッカー愛が明確に刻まれている。

リヴァプールサポーター [写真]=Christopher Furlong/Getty Images

 さらに、ギターのTAIKINGの父親は、元日本代表で、現役時代は主に読売クラブ(現・東京ヴェルディ)で活躍した戸塚哲也氏。地元の神奈川を拠点とする横浜F・マリノスの選手とも交流を持つなど、日本サッカーとの接点も持ち合わせている。

 過去のワールドカップ開催期間におけるNHKサッカー放送のテーマソングと言えば、2014年のブラジル大会が椎名林檎の『NIPPON』、2010年の南アフリカ大会がSuperflyの『タマシイレボリューション』で、女性ボーカリストがエネルギッシュな歌を聴かせる楽曲だったのに比べると、『VOLT-AGE』はやや異質に聴こえなくもない。前述の通り、賛否両論が巻き起こったのは、これが理由だろう。

 しかし、この重量感のあるテンポや連呼されるフレーズの感じというのは、サッカー好きの彼ららしい、サポーターによるチャントを意識したもののように思える。手に汗握るスタジアムの緊迫した雰囲気を、ジャズ、ソウル、ロック、クラブミュージックなどの多彩な音楽性を内包したバンドのオリジナルなグルーヴに昇華してみせた、Suchmosならではのアンセム。それが『VOLT-AGE』なのではないだろうか。

 サッカーの戦術にしてもそうだと思うが、既成概念に捉われない、新たな発想というのはいつだって議論を呼ぶものである。しかし、そういった挑戦がなくては、発展もあり得ない。Suchmosの結成は2013年で、そのキャリアはまだ決して長くはないが、常に自分たちの意志を貫き、チャレンジを繰り返してきたからこそ今のポジションがあるのだ。

 また、すでに多くの人の耳にこびりついているであろう〈心つなぐのは そのHearbeat〉〈答えを出すのは そのHeartbeat〉というラインからは、この曲がただの応援歌というわけではなく、スタジアムのピッチにしろ、ライブハウスのステージにしろ、何かに挑む人の胸の高鳴りを表現した楽曲であることが感じられる。ジェラードを愛するYONCEの熱さは、こんなところにも表れている。

 一方、YONCEのファッションとしてお馴染みなのが、Suchmosの名を一躍世間に知らしめた『STAY TUNE』のミュージックビデオで着用し、『VOLT-AGE』のNHKオフィシャルミュージックビデオにも登場するアディダスのジャージ。これはアシッドジャズの代名詞であるジャミロクワイや、マンチェスター・Cの熱狂的なサポーターとしても知られるオアシスなど、彼らの敬愛するイギリスのバンドからの影響が大きい。

 かつてはジーンズブランドのリーバイスとコラボレーションをしたり、セレクトショップBEAMSの40周年記念動画にYONCEが出演するなど、彼らは音楽、ファッション、スポーツを横断して、ユースカルチャーを牽引する存在でもある。

 6月5日にワールドカップ開幕を記念して公開されたアディダスのフィルム『CREATIVITY IS THE ANSWER (答えはひとつ、じゃない。)』は、ストリートとスタジアム、ふたつのフットボールカルチャーの融合を通して、物事の答えは決してひとつではないこと、その答えを導き出すのは他ならぬ自身のクリエイティビティであることを表現。このフィルムに日本を代表して、香川真司とYONCEが出演している。

 リオネル・メッシやモハメド・サラーといった今回のワールドカップに出場している現役のトッププレイヤーから、デイヴィッド・ベッカムやジネディーヌ・ジダンといったレジェンド、さらにはファレル・ウィリアムズといった著名なアーティストまで、各界のスポーツ選手やクリエイターが数多く参加した超豪華な仕上がりは必見だ。

 7月2日にはアディダスとタッグを組んで、自身のレーベル企画イベント『F.C.L.S. Presents Suchmos the Experience Supported by adidas』を開催。通常のライブだけでなく、コラボウェアの販売や、フットボールにインスパイアされたグラフィティアーティストによるライブペイントが行われるなど、音楽とフットボールカルチャーの融合を目指した新しいエンターテインメントを提案する、要注目のイベントとなっている。

 このように、Suchmosとサッカーの関係性は非常に密接で、今回のテーマソング起用は必然だったように思える。ちなみに、彼らはかねてより横浜スタジアムでのワンマンを目標に掲げていて、着実に会場のキャパシティを広げつつあり、今年の11月には横浜アリーナでのライブが決定。こうした地元を重視する精神性も、サッカー譲りだと言っていいかもしれない。いずれは2002年の日韓大会における決勝の舞台であった横浜国際総合競技場で、『VOLT-AGE』を演奏する姿をぜひ見てみたい。

文=金子厚武

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