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MF財前淳が備える“海外仕様”のコミュニケーション能力…イタリアの地で見せた印象的な一コマ

2018.01.25

2ゴールという結果を残した財前(右)。それでも「納得していない」と話す [写真]=NIKE

 インテルの下部組織であるASヴィズノーヴァとの練習試合、勢いに乗ったドリブルや2ゴールよりも印象的だったのは、ハーフタイムに審判に話し掛ける姿だった。そのことを問いかけると、MF財前淳(京都サンガF.C. U-18)は「ああ、あれは」と頰を緩ませる。『NIKE NEXT HEROプロジェクト』の海外遠征メンバーとしてイタリアに向かう機内で、イタリア語を勉強していた選手だ。

「やっぱり国際試合は審判と会話ができないといけない。審判も人間なので、会話でイエローカードが1枚でも減るのであれば、勉強してきた甲斐があるし、チームのために役立てると思って。イタリア語で『よろしくお願いします。あなたがイタリアに来て初めての審判です。名前を教えてもらってもいいですか?』と話し掛けました」

 意識の高さに驚かされたが、それもいずれは海外でプレーしたいからこそ。「僕はアツシです」という自己紹介を聞き返されると、機転を利かせて瞬時に「スシ!」と外国人にも馴染みがある単語に変換。審判も「おお、スシ! 好きだよ!!」と反応し、雑談を続けた。海外仕様のコミュニケーションで審判の心をがっつりとつかんだ財前は、ゴールを決めた直後に「スシ、グッド!」と声を掛けてもらったと笑う。

 日本でも審判とのコミュニケーションを大事にしていると財前は言う。「僕はドリブルでガツガツ行くタイプなので、笛を吹かれるよりも流してもらったほうがいい時があるんです。僕がどんなプレーヤーであるかを知ってもらうためにも、試合前に自分から話し掛けに行きます」。昨季の高円宮杯U-18プレミアリーグでは、東西のチーム数の関係でWESTリーグから初めてEASTリーグに転入したこともあり、「移動距離が増えて疲れも溜まってしまう。そのほかの不安やストレスを減らしたかった」と積極的なコミュニケーションを意識した。

 審判との対話はゲームをコントロールする上で大事な要素だ。以前、元日本代表の宮本恒靖氏に“奇跡のPK戦”について話を聞いたことがある。2004年に行われたヨルダンとのアジアカップ準々決勝、PK戦の途中でサイドが変更された試合だ。中村俊輔(当時レッジーナ)と三都主アレサンドロ(当時浦和レッズ)が荒れたピッチに足をとられ連続で外してしまうと、宮本は審判に英語で交渉。「自分たちの流れに持っていきたかったんですよ。サイド変更が無理でも、時間を作りたかった」と振り返っていた。過剰に取り入る必要はないが、フレンドリーかつ主張的に意思を伝えることはチームを統率する上でも大事なスキルの一つだろう。

 今回の練習試合で財前が取った行動は些細なことかもしれない。しかし、あと一歩のところでプロ入りが叶わず、「プレーする場所が決まっていないので、この遠征でスカウトしてもらえるように頑張りたい」と人一倍意気込んでいた彼にとって、審判とのコミュニケーションもアピールの一つ。1秒たりとも無駄にはしない。そんな覚悟が伝わって来たハーフタイムの一コマだった。

取材・文=高尾太恵子

<NIKE NEXT HERO プロジェクト>
日本サッカー協会が推し進める「JFA Youth & Development Programme(JYD)」のオフィシャルパートナーであるNIKEが立ち上げたプロジェクト。高校年代最高峰のリーグ戦である高円宮杯U-18プレミアリーグの試合を対象に実施され、毎試合各チームの監督またはコーチが、活躍した選手を対戦相手から各ポジション1名ずつの原則3名(GK or DF/MF/FW)を選出する。選ばれた選手にはポイントが加算され、リーグ終了時点で多くのポイントを獲得した選手を中心に海外遠征を行う。

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