2014.11.26

ブラインドサッカー世界選手権、日本初開催が残した大きな財産

開幕戦で勝利を収めた日本は、過去最高の成績を残した

 ブラジルの2大会連続優勝で閉幕した、ブラインドサッカー世界選手権2014。11月16日から24日まで9日間の大会は、ふたつの意味で、日本のブラインドサッカーにとって大きな財産となった。

 ひとつは、代表チームの未来に大きな希望を見いだせたことだ。そのカギを握っていたのは、「守備」の成否である。魚住稿監督が強い信念を持って採用した守備的な戦術が、吉と出るか凶と出るか。ひたすら敵の攻撃を堪え忍ぶ「堅守速攻」のスタイルが崩壊すれば、真の勝負となる来年のリオデジャネイロ・パラリンピック予選に向けて、チームは一からの立て直しを迫られる。9月のフランス遠征と10月のアジアパラ競技大会で手応えを得てはいたものの、開幕1週間前にブラジルとの親善試合(仙台)で4失点を喫したことで、日本のディフェンスにはやや暗雲が立ちこめていた。

 そして迎えた16日のパラグアイ戦。日本の守備は1週間でさらに進歩していた。今から振り返れば、仙台の親善試合でブラジルが見せたパスワークは、本大会のどの試合よりもスピーディで、精度も高かった。日本にとっては最高のスパーリングパートナーだった。パラグアイの10番ビジャマヨルと7番ビジャルバもワールドクラスのアタッカーだが、ブラジルの10番リカルドと7番ジェフェルソンと比べれば、それほど怖くなかったに違いない。日本は前後半50分にわたって、文字通りの「堅守」を貫いた。

 そして「速攻」も鮮やかに決まる。前半に黒田智成がおよそ30メートルの独走ドリブルから決めたゴールは、この大会でもっとも美しいカウンターアタックとして記憶に残るだろう。魚住監督の戦術が「吉」と出た瞬間だった。

 18日のモロッコ戦は0-0ドロー。日本が優勢に試合を進め、モロッコは苦し紛れにファウルを重ねたが、3本得た第2PKを決められなかったのは今後の反省材料だ。一方、19日のフランス戦では、終盤に佐々木ロベルト泉のPKで先制したにもかかわらず、相手に第2PKを与えて1-1のドロー。初戦で勝ち点3を手にしたことで、この2戦はいずれも「引き分けでOK」の試合だったとはいえ、勝ちきるには第2PKを「決める」「与えない」が重要であることを、あらためて思い知らされた。

 グループAを2位で通過した日本は、初めて進んだ決勝トーナメントの舞台で、目標のベスト4をかけて中国と対戦。日本の守備に手を焼いた中国が、6番リン・ドンドンと7番ユー・ユータンの2枚で攻めたことで、日本は過去の中国戦にはなかったほどカウンターで多くの得点機を作ることができた。残念ながらゴールを割ることができずに0-0で終わり、PK戦に敗れて準決勝進出を逃したが、攻撃陣は「相手の守備が2枚なら抜ける」という自信を深めたのではないだろうか。

 その自信を胸に臨んだドイツ戦(5位トーナメント1回戦)は、今大会の日本のベストゲームとなった。3月の親善試合で0-3と完敗した相手の攻撃をパーフェクトに封じ込め、前半に決まった黒田のカウンターで1-0の勝利。スコアだけ見れば接戦だが、内容は圧勝だった。さらにパラグアイとの再戦(5-6位決定戦)でも、日本の守備はゴールにカギをかけ続ける。頼みの黒田に疲労の色が濃く、シャープなカウンターこそ見られなかったものの、0-0で引き分けた。PK戦に敗れて6位に終わったが、6試合でわずか1失点。唯一の失点はフランス戦の第2PKによるもので、流れの中からのゴールはひとつも許さなかった。DFの田中章仁、MFの加藤健人や佐々木ロベルトを中心とする日本の「堅守」は、世界から集まったこの競技の関係者に強い印象を残したことだろう。今後は、日本の守備をいかに崩すかが、多くの国にとってひとつの課題となるに違いない。初めて「世界の上半分(12カ国中の6位)」に入ることで、日本代表はブラインドサッカーの世界に大きな存在感を示すことになった。

 さて、もうひとつの「財産」は、この世界最高峰の大会を多くの日本人が見たことだ。開幕戦と決勝戦は、チケットが完売。それ以外の試合も、過去の世界選手権よりはるかに多くの観衆を集めた。ストリーム中継やテレビ中継で初めて観戦し、想像を上回るスピードと技術と迫力に驚いた人も多いだろう。とくに、準決勝のブラジル×中国、決勝のアルゼンチン×ブラジルは、世界のブラインドサッカー史に特筆されるべきハイレベルなゲームだった。

 最高峰の戦いを見た人々は、日本チームには課題がまだまだ山ほどあることを知ったはずだ。世界選手権での初勝利と初のグループリーグ突破という大きな成果を挙げはしたが、「2024年に世界一」という目標を達成するには、これまでに倍する現場の努力と周囲の支援が必要である。この大会でブラインドサッカーの面白さに目覚めたファンやメディアが、今後もこのサッカーに注目し、世界一を目指す「総力戦」を継続することを望みたい。それを「続ける」ことによって、自国でこの大会を開催したことの意義は何倍にも深まるのである。

文=岡田仁志

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