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学校の歴史刻む初の選手権 帝京第五らしく全国でもアグレッシブに

2022.12.26

選手権初出場となる帝京第五 [写真]=森田将義

 愛媛県の帝京第五がサッカー部の強化に乗り出した2009年に指揮官となり、今年で就任13年目。国見出身の植田洋平監督は初の全国行きを告げるタイムアップの笛を聞いた瞬間、恩師である小嶺忠敏さんの言葉を思い出したという。

「長かったですね。13年です。小嶺先生には『10年で全国に行くんだ』と言われていました。もう少し粘って、12、13年で行けたらいいよな。13年で行けなかったらきついぞって。何とかギリギリ滑り込んだ形ですね」

 就任した当初はヤンチャな部員も多く、地区大会を勝ち上がるのが精いっぱいのチーム。だが、「強いチームを強くするよりは、マイナスのチームの所から始まった方が後で話になると思い、引き受けた」と笑う植田監督は、恩師である小嶺さん同様、週の大半を生徒とともに寮で暮らす熱い指導でチームを鍛え上げていく。サッカーとしての成長とともに口酸っぱく言い続けてきたのは、人間としての成長だ。

「いつも言うのは、“君らはプロサッカー選手じゃない”ということ。高校生だからサッカーができるんだよって。だから授業も真面目にしなければいけないし、寮生活もしっかりやらなきゃいけない。それをやった上で部活ができる。大津の平岡(和徳)先生ではないですけど、24時間のデザインをしっかりしなさいという話がスタートラインです」

 植田監督の指導によって、2015年には初めて高校選手権予選の決勝まで進出したが、松山工業に1-9で敗れた。大敗を機に地元・愛媛県出身選手を揃えたこれまでとは大きく方向性を変え、2019年からは神奈川県の街クラブ「ライオンズSC」と提携し、関東出身の選手を主体としたチーム作りを進めた。

 本格強化元年と言える選手が2年生を迎えた2020年は選手権予選でベスト4。3学年揃った昨年はインターハイ、選手権ともに決勝で涙を飲んだ。今夏のインターハイ予選も今治東に敗れて準優勝。「この子らは自信を持っていたけど、確信ではなかった。結局、結果が出ていない。ずっと決勝で負け続けて、苦しかったと思う。勝って終わらないと、自信が確信に変わらない」(植田監督)。

 近年はアタッキングサッカーを掲げ、ボールを奪ったら勢いよく相手ゴールに迫るスタイルを志向してきたが、夏以降は「状況に応じて持つ所は持たないと苦しくなるので、夏の遠征からずっと落とし込んできた」(植田監督)。リベンジマッチとなった今治東との選手権予選でも、ベンチからは「苦しくても蹴るな」との指示が飛んでいた。今まで通り帝京第五らしいアグレッシブにゴールへ向かう場面もありながら、上手くゲームをコントロールできた結果が、初出場に繋がった。

「チームの歴史にとって、この1勝はとんでもなくデカい」。決勝での歓喜を終えて、植田監督がそう口にした通り、初出場を掴んで選手たちの自信は確信に変わっている。狙うは初出場初優勝だ。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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