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前半で試合を決めた仙台育英 GK佐藤文太が一条の猛反撃をしのぐ

2019.01.01

一条との打ち合いを制した仙台育英 [写真]=平山孝志

取材・文=粂田孝明(提供:ストライカーデラックス編集部)

 試合後、仙台育英の城福敬監督が「ピンチをしのぐと、こちらにチャンスがくるのがサッカー」と振り返ったが、まさにこの振り子のような原理が、試合全体を支配していた。

 最初のチャンスは一条だった。前半11分に岩本涼太と八木三郎のワンツーから岩本が抜け出し決定機を迎えるが、このシュートは惜しくも枠を外れゴールならず。このシーンを仙台育英DF今野太勢は「最初に失点して流れを持っていかれたくなかった」と試合の流れを左右するプレーだったと語り、城福監督は「しのげたことで、精神的に優位に立てた」とターニングポイントに挙げた。

 彼らの言葉どおり、このピンチの後、流れは一気に仙台育英に傾いた。ここからは、やることがことごとくうまくいき、怒とうの4ゴール。この前半の40分間だけを見れば、立ち上がりに一条に傾いていた振り子が、前半11分をきっかけに仙台育英に傾いたといえる。

 ただ後半に入ると、振り子がまた動き出す。一条の前田久監督はハーフタイムに「残った時間で今できるベストのことをやろう」と声をかけると、選手たちからも「早い時間に2点を返せば振り出しに戻せるぞ」(岩本)とポジティブな発言があがった。一条はこのハーフタイムを境に、別のチームへと生まれ変わった。

「前半はDFラインが下がってしまい、セカンドボールを拾われてしまった」(岩本)が、後半はDFラインを高く保ち前からボールを奪いに行くと、得意のパスワークが冴えわたった。後半7分に松山知樹のパスに抜け出した岩本が冷静に流し込み、早い時間に1点を返すと、ここから猛反撃が始まる。そして後半27分には梅景俊輔のドリブルから松山が決めて2点目をゲット。振り子は完全に一条に傾いていた。

 しかしその振り子を真ん中に戻したのが、仙台育英のGK佐藤文太だった。一条・前田監督は「相手のGKは本当によく止めた。あのGKがうちにいたらスコアは逆だったと思う」と脱帽の好セーブを連発。その後も一条は最後の最後まで攻め立てたが、真ん中に戻ってしまった振り子を自分たちに再び引き寄せることができなかった。

 ここ2年はベスト16まで進出していた一条だったが、今回は残念ながら初戦で敗退。しかし交代を含め、出場した15人のうち8人が1、2年生と下級生が半数以上を占めるチームだけに、前田監督も必要以上に落胆していない。「2点取ってくれたので、胸を張っていいのかなと思う」と選手たちの健闘を讃え、時折笑顔を見せながらスタジアムを後にした。

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