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ラッキーに見える見事な一撃…流経大柏、長崎総科大附との接戦制し準決勝へ

2017.08.02

熊澤和希の意表を突くシュートが決勝点となった [写真]=平野貴也

 勝利には少しの運が必要だと言われるが、単なるラッキーで勝利をつかむことはできない。幸運の裏には、引き寄せるための努力の成果があるものだ。

 平成29年度全国高校総合体育大会のサッカー競技大会は2日に準々決勝を行い、前回準優勝の流通経済大学付属柏高校(千葉)は2-1で長崎総合科学大学附属高校(長崎)を破り、ベスト4入りを果たした。流経大柏は、59分にロングスローから相手のエースであるU-20日本代表候補FW安藤瑞季に先制点を奪われたが、9分後に獲得したPKを主将の宮本優太(3年)が決めて同点に追いつき、74分に途中出場のMF熊澤和希(2年)が右サイドから意表を突くシュートを決めて逆転勝利に持ち込んだ。

 逆転弾は、ラッキーゴールに見えた。右サイドから放ったシュートは、ニアサイドへ。それほど鋭いというわけでもなく、長崎総科大附のGK湊大昂(3年)が反応。ところが、バランスを崩した湊が転ぶように倒れた。相手の選手には「クロスのミスキック」にも見えた場面だが、ゴールを2度見てシュートを選択したと話した熊澤は「ボールが上がった時点でゴールを1回見て、GKが高い位置に出ていると思いました。トラップした後にも見たら、ニアが結構空いていたので入ると思って打ちました。グラウンドが、ボールが滑る感じだったので、ゴール前に速いボールを蹴ったら、そのまま入るんじゃないかと。GKが触ろうとしたときはビックリしましたけど、入ってホッとしました」と感触を振り返った。GKがバランスを崩したのは、ラッキーな部分もあったかもしれないが、状況を見て狙っていなければ生まれないシーンだ。クロスを予測した相手GKが前に出て、重心が寄ったところを突いた一撃は、見事だった。

 同点弾となったPKもラッキーだったかもしれない。序盤から積極性を見せてゴールを狙い続けていた右MF加藤蓮が倒された場面だが、判定の正否は、意見が分かれそうなところだ。ただ、PKを決めたのは、実力だ。PKのキッカーを務めた宮本は、県予選の決勝でもPKを決めていた。「監督からルーティンを作れと言われて、毎日蹴り込んでいたので、冷静に蹴れるようになった」と振り返った。ボールをセットし、ポスト、ボール、自分が一直線になる位置に立ったら、6歩下がって、ポストを見て、ボールを見て、助走に入る。ラグビー日本代表で活躍した五郎丸歩(ヤマハ)と似た発想のルーティンを着実に行うことで、蹴ることだけに集中していた。

 2倍以上のシュートを打たれながら勝機を見出していた長崎総科大附の戦いぶりも立派だったが、少しの運も味方につけて勝ち上がった流経大柏の強さは、本物だ。翌3日に行われる準決勝で、流経大柏は前橋育英高校(群馬)と対戦する。両チームは2015度の全国高校選手権準決勝で戦い、PK戦の末に前橋育英が勝っている。強豪同士の因縁の再戦を制するのは、どちらか。「少しの運」のつかみ合いとなる。

取材・文=平野貴也

By 平野貴也

元スポーツナビ編集部。フリーに転身後はサッカーを中心に様々な競技を取材するスポーツライターに。

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