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制空権奪い試合を支配…運命握る岐阜工エース永田薫の勝負を分けた“頭の差”

同点弾を決めた岐阜工のFW永田薫(中央) [写真]=木村善仁

 勝負を分けたのは”頭の差”だった-。

 岐阜工は18分に香川西の先制を許し、1点ビハインドで後半を迎えていた。しかし清本勝政監督は、試合展開に一定の手応えを感じていたという。「トップの永田薫が制空権はほぼ取っていた。セカンドボールさえ拾えて、外に展開できればチャンスは増えると思っていた」(清本監督)からだ。

 後半の2ゴールはいずれも“制空権”を活かして生まれた。まず53分に、FW永田薫が、熊谷利紀の左CKから「自分の武器」という同点ヘッドを叩き込んだ。58分の勝ち越し弾は、ハーフタイムに清本監督が選手に伝えていたまさにその形。永田が前線でハイボールに競り勝ち、途中出場の安田善裕につながる。安田のクロスを立花稜也がヘッドで合わせ、GKが止めたこぼれ球を自ら押し込むフィニッシュだった。

 香川西の大浦恭敬監督は、澤藤忍・岐阜工部長と大学の同級生。そんな縁もあり、両校は日頃から練習試合を重ねている。大浦監督も当然ながら「伝統的にヘディングが高い」という、相手の特徴は熟知していた。しかしそんなベテラン監督が今日は「それにしても岐阜工のヘディングの強さにやられました」とうめく。岐阜工、そして永田薫の高さにしてやられた80分だった。

 清本監督はヘディングの鍛錬について「特別なことはしていないが、時間を掛けている」と説明する。取り組んでいるのは2人が一組になってボールを頭の近くに投げ、それを返すというオーソドックスな練習。「必ず毎日の練習の中で、ウォーミングアップの後に15分ないし20分やる」というのが他校との大きな違いだ。そのこだわりは「ヘディングが弱い選手と走らない選手は、トップチームで使わないよと話をしています」というほどである。

 ヘディングの弱さは、日本サッカーの課題と言っていい。育成年代の国際試合を見ている方なら、ロングボール、ハイボールへの対応に苦しむ試合を何度も見ているだろう。しかしそれこそが岐阜工の強みだ。

 清本監督は「大事な試合や競った試合は、制空権を取ったチームがかなり優位に試合も支配できる。それをずっと経験的に感じていた」と分析する。大一番はとかくハイテンションで、長いボールが増える。“負けられない”というリスク管理の部分でも、浮き球が増えてくる。ヘディングの重要性は当然ながら増すことになる。

 ヘディング強化の理由はそこに止まらない。指揮官は「(選手は)中学生年代にあまりヘディングの練習をしていない。高校に入ったとき、まずヘディングだけでも強くなれば、それが自信になる。その自信から他のこともできるようになりたいとなってくれればいい。最初のとっかかりです」と理由を説明する。ヘディングは「練習して努力をすれば必ず強くなる」(清本監督)モノで、だからこそ練習の成果が試合に出る。その手応えが選手のモチベーションを高めるという好循環を生みやすい。

 2点に絡んだエース永田薫は現在182センチ。入学時にも178㎝あった長身選手だが、「高1の頃は全然ヘディングができなかった」と振り返る。永田が入学当時に持っていたヘディングの形は打点が低い両足ジャンプのみ。「監督から片足ジャンプをするように言われて、自主練でも取り組んだ。片足で(ジャンプが)できるようになってからは、急成長したとみんなに言ってもらえる」のだという。

 永田は通常メニューの中で行われる「スタンディングで前に返すヘディングを練習」に加えて、今は「GKに蹴ってもらって、DFをつけてバックヘッド」というメニューを自主練習で続けている。後方から飛んでくるボールを擦らして、横に落とすという今日の決勝弾につながったパターンだ。

 とはいえ修得するべきヘディングスキルはまだまだ尽きない。彼が対戦して「すごいな」と感心したのは鹿児島城西高の岩元颯オリビエ。そのスキルを永田は「ヘディングを競るのでなく、DFに競らせないように身体を使っている」と分析する。他にも彼が好きなサッカー選手として名を挙げる岡崎慎司のダイビングヘッドも「できるようにしたい」と意気込む。

 岐阜工業が2回戦で対戦するのは強豪・山梨学院。渡辺剛、大野佑哉の両CBはいずれも永田とほぼ同じ身長を持ち、空中戦に強みを持つ選手だ。永田がこの2人を相手に制空権を握れるかどうか-。そこが今後の岐阜工の運命を左右する大きなポイントだ。

文=大島和人

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