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“大会史上最多”3度目の戴冠へ。浦和レッズが宿敵アルヒラルとのアジア頂上決戦に挑む!

2023.04.27

アルヒラルとのACL決勝に挑む浦和。第1戦は4月30日(日本時間)、第2戦は5月6日に行われる[写真]=浦和レッズ

「赤き血のイレブン ラララ 浦和レッズ 世界に魅せつけろ 俺たちの誇り」
 浦和サポーターの声が等々力陸上競技場に何度も鳴り響いた。4月23日に行われたJ1リーグ第9節の川崎フロンターレ戦。16時キックオフの試合が終わり、時刻はすでに夕方から夜に移っていた。浦和レッズの選手たちを乗せたバスが、今まさに会場を出ようとしている。腹の底を震わせるような太鼓の音は止まず、何本もの旗が振られ、魂が呼応するようなチャントが続く。ふと手元のスマホに目を落とすと、車内にいたある選手からLINEが届いた。「(バスへの応援が)すごいです。頑張ってきます!」。大一番に向けて、同日夜の便で浦和レッズは日本を発った。

 ついにアジアナンバーワンが決まる──。AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)決勝は日本時間の4月30日に第1戦、5月6日に第2戦が行われる。激突するのは日本の浦和レッズとサウジアラビアのアルヒラル。2002-03年大会から同名称となり、20回目を数える大会で、両クラブは最多タイの2度の優勝を果たしている。この決勝で栄冠を勝ち取ったクラブは単独最多となる3回目の大会制覇。それは同一シーズンにおけるアジア最強の称号だけではない。つまるところ、“アジアの王者”の地位を確固たるものにできるのだ。

 日本勢にとって、ACL制覇はある意味での鬼門であり悲願だ。優勝経験があるクラブは2007年と2017年の浦和、2008年のガンバ大阪、2018年の鹿島アントラーズのみ。前身のアジアクラブ選手権を合わせても、Jリーグ発足以降では1998-99年大会優勝のジュビロ磐田が加わるにとどまる(ちなみにアルヒラルはアジアクラブ選手権時代にも2度の優勝を経験している)。国内の公式戦と並行する過酷な日程のうえ、ホーム&アウェイで戦うため移動による疲労も大きい。さらにピッチ上だけでなく、気候、時差、文化、ジャッジの違いなども含め、Jリーグでは味わえない消耗戦のような戦いを繰り広げなければならない。

浦和は2007年大会にACLを初制覇。今大会で史上最多3度目の優勝を狙う[写真]=浦和レッズ

「アジア制覇」には、犠牲を強いてでも成し遂げたいと思わせる魔力がある。世界最高峰のUEFAチャンピオンズリーグのアジア版として産声をあげ、20年という時間の中で熟成されて権威ある大会へと成長した。優勝すればクラブワールドカップに出場できるという名誉もあり、今ではJリーグを制するだけでなく、ACLに出場してアジアの頂点に立つことを掲げる国内クラブが増えた。それに伴って、Jリーグの順位で決まるACL出場権争いが白熱するようになり、優勝争いと並んでサポーターの楽しみは増している。何より、この大会での優勝はそのクラブだけでなく、日本サッカーのプレゼンスを、アジア、そして世界に示す意味合いがある。日本代表も前回のワールドカップ・アジア最終予選では、中東の国との対戦で苦戦を強いられた。そういった意味でも浦和レッズとアルヒラルの勝負は、単にクラブ同士の試合以上の価値を持つ。

 今大会の決勝は、絶対に負けられない戦いだと浦和の選手たちは口にする。2017年、日本勢として最多の2回目の優勝を飾ったときの相手はアルヒラル。そして2019年、同大会単独最多の3回目の優勝を狙いながら、地力の差を見せつけられて準優勝に終わったときの相手もアルヒラルだった。まさにがっぷり四つ。そのどちらの試合でもピッチに立っていたGK西川周作は「運命ですよね」と笑う。MF関根貴大は「日本一ではなく、“アジア一を獲って世界へ”をこれだけ意識しているクラブは日本でも他にないと思う」と語気を強める。

アルヒラルとの対戦は2017年、2019年に続いて3度目。今回は2019年大会のリベンジを誓う[写真]=浦和レッズ

 コロナ禍で日程や開催方式の調整があって決勝が今季にずれ込んだため、決勝だけは新チームで臨む。現役を引退した槙野智章氏の決勝ゴールで2021年の天皇杯を制して出場権を手に入れ、選手が入れ替わる中で2022年のグループステージと決勝トーナメント準決勝までを戦った。そして今季、マチェイ スコルジャ監督が就任。西川は「ウガ(宇賀神友弥・現FC岐阜)やマキ(槙野氏)が天皇杯でゴールを決めてくれたから今大会に出られているし、みんなの思いが詰まっている。こんなに長いACLは経験がない。特別なものだと思っていて、人生を懸けて戦いたい」と言い残してバスに乗り込んだ。

 川崎とのリーグ戦後、思ってもいなかった心強い応援があった。アウェイの地で電光掲示板に映し出されたのは「掴み取れACL! 頑張れ 浦和レッズ!」という川崎からのメッセージ。さらにクールダウンをしていた浦和の選手たちに、川崎サポーターから多くの温かい言葉が投げかけられた。

 Jリーグの代表としてアジアの頂点を目指す。FW興梠慎三は「川崎サポーターも“頑張ってこい”と声援をくれた。日本の代表として戦ってきたい」と胸を張った。浦和のサポーターだけではない。この大会だけは各クラブの枠を越えて、日本の代表として、浦和レッズの選手たちはピッチを全力で駆け抜ける。

文=古田土恵介

By サッカーキング編集部

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