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【ACLラウンド16展望|名古屋】数々の困難を乗り越え“らしさ”が復活…12年ぶり決勝T初戦突破なるか

2021.09.14

[写真]=Getty Images

度重なる不運と疲弊の影響で苦戦

 グループステージを圧倒的な強さで突破した名古屋だったが、このAFCチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦については、良くも悪くも“間に合った”という印象も強い。予選の地、タイから始まった1カ月以上にわたる隔離生活のダメージが、チームに暗い影を落とした時期もあったからだ。

 韓国の強豪・浦項などを相手に5勝1分と結果を残す一方、帰国後も続くバブルの中で戦ったJリーグでの鳥栖戦を1-3と大量失点で落とし、そこからリーグ3連敗。心身に強い負荷のかかった隔離生活をフィッカデンティ監督は、「次もこの条件と言われれば絶対にやらない」と吐露したほどだった。

 不運は続くもので、帰国後すぐに予定されていた天皇杯3回戦が雷雨により中止・延期となり、本来ならば取れるはずだったリーグ中断期のオフがほぼ取れなくなる事態にも見舞われた。チームに折り重なる疲弊とワクチン接種などの影響も加わり、8月頭までの名古屋はまるで名古屋らしからぬ戦いを繰り返した。

戦術修正と新戦力フィットで復調

 ただし、名古屋のタフガイたちは「苦しい」「辛い」とうめくばかりでは終わらなかった。懸命なコンディション調整と並行してチーム戦術の継続に腹を据え、「“ゼロからチームを作ろう”ではなく、試合に入るところの準備をしていく上で、物足りない部分の修正を軸にした」と、戦い方の肉付け部分の見直しを図る。

 連戦の疲労も癒えない中ではある程度の割り切った攻守の展開も良しとし、3連敗後のリーグ戦では3連勝を含む4戦3勝1分、神戸との天皇杯4回戦を含めれば公式戦4連勝と復調を誇示してみせた。その5試合ではわずか1失点と身上である堅守が復活し、無失点ベースで決勝点を奪う“普段着の名古屋”が見られたことが何より大きかった。

 また、その良い流れの中に新加入のポーランド代表FWシュヴィルツォク、札幌から期限付き移籍で獲得したDFキム・ミンテがしっかりと組み込まれている点も見逃せない。昨年11月の負傷以来、9カ月ぶりに復帰したFW金崎夢生も日に日に状態を上げており、チームの調子と夏の新戦力の両面で、名古屋はACLの重要な一戦に“間に合った”わけである。

初戦突破へ万全の体制が整う

 ACLにおける戦い方は数あれど、名古屋のそれは国内での戦いとほぼ変わることはなかった。無失点を念頭に置いた守備を重視したゲームメイクは、マテウスや相馬勇紀といったスピードのあるサイドアタッカーの突破力を前面に押し出す速攻によって変化がつけられる。

 グループステージでは齋藤学をウイングに、長澤和輝を3インサイドハーフに使う4-3-3も高い効果を発揮。この布陣は、彼ら2人のいる左サイドがダイナミックにポジションチェンジを繰り返し、崩しの局面を作るオプションとして使われた。

 浦項との初戦ではこの形が絶妙にフィットし、グループのライバルを3-0と打ちのめしている。タイでは大活躍だった山﨑凌吾は負傷離脱中だが、シュヴィルツォクや金崎に加え、最近は前田直輝がツートップでのFW起用に覚醒するなど、攻撃のバリエーションはむしろ増大中。

 守備面でもキム・ミンテの適応が非常に速く、木本恭生をアンカーでも使えるようになったことで戦い方の幅が拡がっているなど良い傾向にある。大邱はグループステージ6戦で22得点を挙げている攻撃力のあるチームだが、苦難を乗り越えスケールアップを果たした名古屋にとって、ことさらに恐れる必要はない相手と言える。トーナメント初戦という難しさのあるシチュエーションとはいえ、それを有観客のホームで戦えること、そしてこの一戦に先立ってルヴァンカップのトーナメント初戦で鹿島を相手に快勝を収めていることも、追い風として彼らに果敢さを加えてくれるに違いない。

 名古屋はACL初挑戦となった2009年こそベスト4に進出するも、その後2度の挑戦ではいずれもラウンド16で苦杯をなめている。クラブ史上屈指の手堅さを誇る現チームだけに、勝負強さを求められる戦いではその期待値も上がるところ。9年ぶりのアジアの舞台で、12年ぶりのトーナメント初戦突破へ。その視界は実に良好と言える状態まで、名古屋は仕上がってきている。

文=今井雄一朗

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