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スポーツ界の未来を担う『JHC』2期生がプレゼン実施…J常務理事・中西氏が説いた“リーダーの在り方”

2017.03.16

 Jリーグが人材育成事業を行っていることをご存じだろうか? 人材育成と言っても、選手や監督、審判といった競技に関わる人材ではなく、プロスポーツクラブのマネジメント人材の育成だ。

 プロスポーツ界の未来を担う”スポーツエグゼクティブ”を育成する、Jリーグ初の一般向けスポーツ人材開発講座である『Jリーグヒューマンキャピタル(JHC)』。リクルート出身で、2014年にJリーグのチェアマンに就任した村井満氏肝いりのプロジェクトであるJHCは、Jリーグ加盟クラブや教育機関等との提携により2015年に発足した。

 2017年3月5日(日)、立命館大学の東京キャンパスでは、JHC2期生たちの卒業制作とも言えるグループワークの最終プレゼンが行われた。2期生総勢31名が5つのグループに分かれ、およそ2カ月をかけて作り上げたプレゼンテーションのテーマは「Jリーグのチェアマンとして、未来のJリーグの成長戦略を考える」こと。

 各グループのプレゼンに対しフィードバックを行うコメンテーターを務めるのは、Jリーグチェアマンの村井満氏、同常務理事の中西大介氏、かつてサンフレッチェ広島の代表取締役社長を務めた小谷野薫氏(現株式会社エディオン取締役)、元ヴィッセル神戸の代表取締役で、当時のJリーグ最年少社長となった清水克洋氏(現株式会社フィールドマネジメント ディレクター)という錚々たる顔ぶれだ。(村井氏はビデオ通話での参加)

 午前10時過ぎ、1組目のプレゼンがスタート。Jリーグ・Jクラブのトップ経験者たちを前にして、グループの面々には緊張の色が見える。張り詰めた空気の中、15分ほどのプレゼンテーションが終了した。

「うーん…このプランの正当性が見えないな」

 最初にコメントを求められた清水氏からいきなりの厳しい言葉。プレゼンを終えたメンバーの表情が強張る。続くコメンテーター陣からも的確で鋭い指摘が次々と飛んでくる。

「本気でチェアマンのつもりになって考えたの?」
「分析が甘い。全然まとまっていないよね」
「1年間勉強してきてこれで大丈夫?」

 だが、生徒たちも負けてはいない。時にはデータや根拠を示し、時には情熱をもって真っ向からコメンテーターたちと議論を深めていた。(それでもバッサリやられてしまうことももちろんあったが)

 そこには、今まさにプロスポーツの世界で生きているトップマネジメントたちと、彼らの背中を追う者たちの本気のぶつかり合いがあった。全5グループのプレゼンは延べ6時間にも及んだが、その長さをほとんど感じさせないくらい、取材している私たちにとっても興味深いアイデアと議論の数々が飛び交う現場となった。

「エンターテインメントビジネスではみんな同じで、自分が何をしたいのかがわからなくなった瞬間、いくらでもグレーな領域だとか、たやすいほうに行動が流れていってしまうので、そこは自分がやりたいこと、理想をしっかり持って、スポーツビジネスに関わってもらいたいと思います」

生徒との議論を終えた小谷野氏がこう語れば、村井チェアマンもあえて厳しい言葉をかけて「刺激を与えたつもり」だと述べた。

「クラブの社長でもチェアマンでもそうですが、周りからはいろんなことを言われ、誰もが心の中で不快感を覚えると思います。このような外部からの刺激で、心の中で不快なものがでてきたときに、どう反応するかによって経営者の資質は完全に見抜けます。本日、みなさんは少しでも不快感を覚えてくれたと思うので、自分の中でその不快感を確かめて、次に向かってもらえればいいと思います」(村井氏)

 そして中西氏は、日本サッカー協会会長として2002年の日韓ワールドカップを成功させるなどサッカー界の発展に尽力し、今年2月に亡くなった岡野俊一郎氏、Jリーグ創設の立役者で同1月に亡くなった元Jリーグ専務理事の木之本興三氏の名前を挙げ、“リーダーとしての在り方”を説いた。

「リーダーは1人では物事を成し遂げられない。自らが得意な分野もあればそうでないものもあるけれども、すべてのことに対して2人ともすごく謙虚だったと思います。だから人の協力が必要で、自分の得意なものを活かしながら、ほかの人たちの持っている能力を引き出して、日本のサッカーを創り上げてきた先輩だったと思います」

「皆さんが次のチェアマンだと考えたときに、いろいろなリーダーのスタイルがあっていいと思います。いい機会なので、岡野さんや木之本さんが歩いてきた道というのを、振り返ってみてください。岡野さんや木之本さんもいっぱい失敗はしています。だけど、この失敗がJリーグの成功をもたらしていると思います」

 JHCは、この4月より3期目がスタートするが、今期からはJリーグの一事業から「一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)」として新たに独立した法人組織に形を変え、サッカー界にとどまらない、競技の枠を超えた未来のスポーツ経営人材の開発と育成を担うことになる。

 JHC1期生42名からは、既に10名がスポーツ界へ転身を果たし、Jクラブの部長やマネージャーとして活躍しているとのこと。学びの場を提供するだけでなく、人材の活用というところまで踏み込んだプログラムを提供しているのが本講座の特徴だ。2017年4月度開講分の募集は既に終了しているが、プロスポーツ界、プロスポーツクラブ経営者への道を本気で目指す人には、きわめて有用な選択肢と言えそうだ。

By サッカーキング編集部

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