2016.09.13

ペスカドーラ町田の滝田学が伊勢丹新宿でカルチャーイベントをプロデュース 「南アフリカ式サッカーボールづくり」でつながるフットボールの輪

サッカー総合情報サイト

 9月10日(土)、伊勢丹新宿店にて、「日本の“衣・食・蹴”を世界へ」をコンセプトにする「FTW(FUT THE WORLD)」と、サッカーグラウンドづくりを通して貧困地域の子どもたちが安全にサッカーをできる場所と環境整備に尽力するアメリカ発の国際NGO「love.futbol(ラブフットボール)」がコラボしたイベントが開催された。

 イベントレポートの前に、まずは両団体について触れておこう。

フットボール・カルチャーを担う2つの団体

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 FTWは、フットサル日本代表でありFリーグのペスカドーラ町田に所属する滝田学によって設立された団体。世界の約100カ国、1200万人がプレーするとされるフットサルは、日本でも300万人以上に親しまれるレジャースポーツとして浸透しているが、一方でFリーグを頂点とする競技フットサルの認知や普及という点では、いまだに発展途上にあると言える。その舞台の第一線で活躍する滝田は、こうした現状に際して、現役選手としてできる活動を続け、「する」フットサルだけではなく、「見る」フットサルを広げ、さらには、フットサルを「文化」にしていくことを思い描いている。

 その一つが、ファッションを通じたアプローチ。例えば、限定発売されているシンプルにロゴマークがあしらわれたTシャツは、「あおもり藍」染色が施されたこだわりの一枚。青森県内の農場で栽培、収穫された藍葉を用いて、職人の手によって染色された製品は、抗菌、防臭性に優れ、天然由来の安全性と伝統の色合いを実感できる。この「あおもり藍」は2010年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)船内着コンペティションで採択され、山崎直子宇宙飛行士が船内着として宇宙空間でも着用したことでも知られるものだ。フットサルの行き帰りに、フットサルの観戦に、週末のお出掛けに……どんなシーンでも着用可能であり、純粋にプロダクトとしても一級品のアパレルは、FTWが手掛けることによって、スポーツブランド、ファッションブランドの架け橋となる。

 また、積極的なイベント企画も重要なアプローチ。これまでも、彼らが得意とする、“衣・食・蹴”という、アパレル、料理、フットサル(フットボール)を中心に、他の分野を巻き込んだイベントを行ってきた。9月24日(土)、25日(日)には、ライジング・フィールド軽井沢で「TAMALYMPIC(タマリンピック)」という、ボールを中心に繰り広げられるキャンプイベントも主催している。老若男女、年齢を問わず、ボール一つあればみんながつながり、そして笑顔になれる。彼らのイベントにはそうしたメッセージがいたるところに散りばめられ、彼らが胸に刻む「フットサルで世界をつなぐ」が表現されている。

 そしてFTWが今回、コラボを持ち掛けたlove.futbolもまた、ボールを通じた社会貢献を続ける、意義の大きな団体だ。2006年にアメリカで設立され、ブラジルと日本に事業所が設置されている。「貧困街に暮らす人たちが主役となるサッカーグランドづくりを通じて、子どもたちが安全にサッカーできる場所づくりと貧困街の再建をする」というミッションを掲げ、2018年のワールドカップまでに100個のコミュニティ・グランドをつくり、11万人の子どもたちが安全にサッカーをできる環境づくりを目指している。ブラジル代表のエルナネス、ダビド・ルイス、元コロンビア代表のバルデラマ、日本代表の長友佑都なども、このlove.futbolを応援しており、すでに、グアテマラやブラジル、アルゼンチンに20を超えるグラウンドをつくってきた。そして国内では、「love.futbol Japan」が2012年に設立され、代表を務める加藤遼也氏を中心に、本部の活動の支援や広報、「サッカーを通じた社会貢献活動の促進」をテーマにしたサッカー教育のワークショップなどを行っている。

 今回、フットボール・カルチャーの担い手である両団体がタッグを組み、伊勢丹新宿のイベント「My Wellness Life at Isetan」の一環として、7日から12日まで、FTWのアパレルの販売、love.futbolの活動写真やチャリティーグッズの展示が行われ、10日に「南アフリカ式サッカーボールづくり」というワークショップが開かれた。

「南アフリカ式サッカーボールづくり」という“きっかけ”

 イベント取材へ出掛けると、伊勢丹新宿店6階の特設会場に人だかりができていた。
 FTWのイベントにこれだけ多くの人が……と驚きを隠せないまま近付いていくと、何やら聞き覚えのある声が耳に入ってくる。そう、メンタリストDaiGo氏の声。「自分を変えるスポーツの心理学」をテーマにしたトークショーに、男女問わず、何十人もの人が詰め掛けていたのだった……。

 そして、イベント終了とともにはけて行く人、人、人……。そんなときに聞こえてきたのは、何やら聞き覚えのない声だった。

「DaiGoさんのイベント並みのお客さんが集まってくれました。FTWとlove.futbolによる、南アフリカ式サッカーボールづくりが始まります――」

 伊勢丹の高級感溢れるテイストに風穴を空けるような圧巻の独創性を発揮したのが、MCを務めたお笑いタレント、ハットトリックの蓮見氏である。知る人ぞ知る、自称“伊勢丹芸人”だ。そして熱狂的なフットボールフリークであり、滝田とは日頃からの蹴り仲間でもあるために、このイベントのMCに抜擢されたという。

 FTWの滝田代表、love.futbol Japanの加藤代表が参加者の前でそれぞれ挨拶をした後、ワークショップが始まった。

 さて、「南アフリカ式サッカーボール」とは何だろうか。テーブルに用意されていたのは、新聞紙とビニール袋、麻ひもだけである。およそ、サッカーボールの材料とは思えない。「これで本当にボールができるの?」という参加者の疑問をよそに、スタッフによって手順が示され、4、5人ずつに分かれた各テーブルで、それぞれ作業が進んでいった。

 新聞紙を丸め、袋に入れて縛り、もう1枚の袋に入れてまた縛り、紐で外側を巻いていく……色も形も異なり、外袋のデザインによって個性が加わり、まさに三者三様のボールが出来上がっていった。このボールは実際、南アフリカでサッカーを楽しむ子どもたちが同じように作っていたのだという。

 グラウンドはおろか、日本人が日頃から蹴っているような環境は何一つとして整備されていないような場所で、子どもたちは、お手製のボールでサッカーに明け暮れている。常に危険と隣り合わせのような治安が悪い場所もある。教育が行き届いていなかったり、貧困が激しかったりもする。それでも彼らはボールを追い掛け、そうしている間は、悩みも感じさせないような輝きに満ちた表情を浮かべている。このワークショップの片隅にあるタブレットには、そうした、現地で撮影された写真が映し出されていた。

 love.futbolのスタッフが現地の子どもたちに教わったというボールの作り方が、参加者に伝えられていく。男性、女性、子ども……年齢や性別を超えて、遠く離れた土地のフットボーラーの姿が、そこにイメージされているようだった。

 そして参加者たちは早速、出来上がったボールをその場で蹴っていく。滝田とともにFTWに携わるペスカドーラ町田の中井健介に送られた子どもからのパスは、中井たちFリーガーが普段から蹴っているフットサルボールと同じように、中井の足元へと届いた。さらに、ゲストで登場した元フリースタイルフットボール日本王者の後呂康人(元ペスカドーラ町田)が、ややいびつな南アフリカ式サッカーボール(滝田作)で華麗なパフォーマンスを見せると、周囲からは大きな歓声が上がった。

 最後に、自らつくったサッカーボールを手に記念撮影する参加者とスタッフの顔が、笑顔で溢れる。ワークショップは、1部、2部ともに40分ずつ同じ内容で行われ、大盛況のうちに幕を閉じた。

 ちなみにワークショップ中、作業に真剣な参加者やスタッフをよそに、止むことのない軽快なトークを繰り広げていたのがMC蓮見である。催事場周辺の店舗やスタッフまでも巻き込み、イベントとは全く関係のない(と思われる)やり取りにも時間を割き、「なんなんだあのMCは」と、誰しもが気になる展開に持ち込んでいく。その絶妙(?)な話術は、自称“伊勢丹お墨付き”のスキルに他ならない。ある意味で、伊勢丹らしからぬ雰囲気を漂わせ、伊勢丹ではあまりお目に掛かることができないであろうフットボールイベントを成功へと導いた、陰の立役者だと言えよう(と、いうことにしておく)。

 しかし改めて驚くのは、このイベントを主催したのが、現役のFリーガーだということ。現役のトップ選手だからこそできることがあり、現役のトップ選手が与えるきっかけだからこそ、大きく響くものがあるのだと、常々感じさせられる。

 南アフリカ式サッカーボールづくりという“きっかけ”を通じて、貧困地域のことを考えたり、身近な問題を思ってみたり、あるいは、プレー専門だったフットサルの試合観戦に出掛けてみたりする。
 そうした“きっかけ”になることこそ、FTWやlove.futbolが発信したかったメッセージなのだろう。

FTW:http://futtheworld.tokyo
love.futbol Japan:http://www.lovefutbol-japan.org/

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