2016.06.15

データスタジアム社員が語る④…活用できる場をもっと増やすべき、データ分析の未来

サッカー総合情報サイト

インタビュー・文/池田敏明
写真/小林浩一

 Jリーグは、2015年シーズンから「トラッキングシステム」と呼ばれるデータ計測システムを導入している。試合中、選手がどの位置にいてどんな動きをしているのかを自動追尾し、そのデータを元に走行距離や最高速度、スプリント回数などを算出するシステムだ。

 算出されたデータは、Jリーグの公式WEBサイトで気軽にチェックできる。データ好きのファンはもちろん、今までそういった数値に関心がなかったファンも新たなサッカーの見方を開拓できるため、非常にうれしいシステムと言えるだろう。

 このトラッキングシステムを運用・管理しているのが、サッカーや野球、ラグビーを始め、様々なスポーツにおいてデータ収集・分析を行っているデータスタジアム社だ。

 トラッキングデータの用途は、ファンへの公開だけにとどまらない。データスタジアムは、集積したデータをさらに細かく分析し、Jリーグクラブに提供する事業も展開している。コーチングスタッフは、そのデータを元にチームの特徴やウィークポイントを把握し、どのように強化していけばいいのかという方針を立てる。

 藤宏明氏は、データスタジアムのフットボール事業部に所属し、Jリーグクラブにデータを提供する際の窓口となっている。

 元々、ヴィッセル神戸や名古屋グランパスで分析担当を務めていただけに、データ活用の重要度や有効性は熟知している。その経験を生かし、チーム側がどのようなデータを求めているのか、どこまで踏み込んで分析すればいいのかを判断しながら、チーム強化のサポートに務めているのだ。

 分析のスペシャリストとしての視点から、藤氏はJリーグの現場においてデータがどのように利用されているのか、将来的にデータはどのように活用されるべきかを語ってくれた。

客観的な分析と育成年代への普及…今後の日本に必要なこと

――ヴィッセル神戸、名古屋グランパスで分析担当を務めたご自身の経験を踏まえてお答えいただきたいのですが、データスタジアムが提供するデータを受け取る側のJリーグクラブは、そのデータをどのように活用しているのでしょうか。
藤 宏明 データの活用の仕方としては主に二通りあると思います。一つはチーム作りの部分ですね。自分たちのチームをいかに良い方向に、監督のコンセプトどおりに導けているかを確認するための指標として、データを活用するというのが一つ。二つ目は対戦相手に関するデータ分析の部分。次の試合で勝利を収めるためには対戦相手を攻略する必要があり、弱点をあぶり出したり、どんな傾向があるのかを把握したりするためのデータもあります。自チームの部分と他チームの部分、その両面から数字を見ることが、現場では多かったですね。

――日本のサッカー界で、Jリーグクラブ以外にデータ分析に取り組んでいる団体はありますか?
藤 宏明 今、思い浮かぶところでは、大学サッカー界ですね。そういった部分に今後、より力を入れたいと考えている大学がいくつかあるようです。

――今後、日本のサッカーを強くしていくために、データをどのように生かすべきだと思いますか?
藤 宏明 僕が考える活用法は二つあります。まず、データの種類を増やすだけでなく、そのデータを生かせる人材の絶対数を増やすことが、今の日本サッカーには必要なのかな、と思っています。現場において実際に主観で見るということについては、元プレーヤーでサッカーを熟知している、かなり専門的なスタッフが大勢います。ただ、客観的に評価するという側面に関しては、まだなだ発展する余地があると思っています。

――客観的に、ということはつまり、クラブ以外の人間がデータ分析をするということでしょうか。
藤 宏明 クラブ以外の人間というわけではないですが、データ分析に精通したスペシャリストが、クラブと我々のようなデータを提供する企業の間で「ハブ」となり、分析したものを選手に渡したり、監督やコーチに提供したりする。そのような流れになっていくことを期待しています。チーム強化のためには、主観的に指導する人と、客観的に分析する人、その両輪が必要なのかな、と思っていますので。

――なるほど。では、もう一つの生かし方とは?
藤 宏明 トップチームだけでなく、育成年代においてもデータを生かしていくことが必要なんじゃないかな、と思っています。トップの現場ではかなり普及していて、データの認識がだいぶ高まっているんですけど、育成年代に対しても、もっと使っていかなければいけないと思っています。段階的に選手を育てていく上で、世界と比べて日本が今、どのような状況なのかを把握できますし、また日本国内のクラブ間において、育成がうまくいっているかどうかを比較する上での指標にもなります。育成年代においても、もっと積極的にデータを使っていくべきだと思っています。

――育成年代のデータ分析を、既に始めているクラブはあるのでしょうか。
藤 宏明 僕の知る限り、トップチームと同じレベルで取り入れているクラブはないと思いますが、クラブスタッフ自らが手作業で収集しているところはあると思います。とは言え、まだその段階なので、もっと普遍的にデータを収集できる環境を整備し、データを取りながら育てていける環境にしていく必要があるんじゃないかな、と思っています。

――では最後に、今回のセミナーで参加者がどのような収穫を得ることができるのか、教えていただけますでしょうか。
藤 宏明 僕の強みは「現場での話」ができることだと思います。実際に僕がクラブにいた時にどのようなことをしていたのか、現在の日本サッカー、Jリーグの現場でデータがどのように利用されているのか、また今後どのように活用していくべきなのか。そういった現場の話を伝えることができればな、と思っています。それによっていろいろなことをお互いに考えて、意識を高め合っていきたいですね。

 実際にJクラブで分析担当を務めていたその経験から、藤氏は日本におけるデータ分析の現状を冷静に把握していて、今後どうしていくべきかという明確な道筋も見えている。ブラジル・ワールドカップを制したドイツのデータ分析は、大会当時と比較してもさらに進化しているという。日本のデータ分析にも、まだまだ大きな可能性があるはず。藤氏が期待するように、様々な場面でのデータ分析が進み、それが日本サッカーの強化につながる世界は、すぐそこまで来ている。

データスタジアム株式会社
フットボール事業部
藤宏明

1982年生まれ。筑波大学卒業後、ヴィッセル神戸にてチームマネージャー、分析担当として従事。
その後、2014年から名古屋グランパスでコーチ(分析担当)を経験。2016年2月より現職。
現在は、チーム向けの分析システムなどの営業やトラッキングシステムの運用などを担当している。

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