2016.05.25

多数のプロ選手が師事…プロスプリントコーチがサッカー界を変える/第1回

サッカー総合情報サイト

インタビュー・文/池田敏明
写真/小林浩一

 走るのが速くなりたい、というのは、スポーツをする人なら誰もが願うことだろう。速く走れることは、それだけで一つのステータスであり、武器にもなる。「走る」競技であるサッカーの場合、その傾向はさらに顕著になる。

 Jリーガーの中には、走るスピードを上げるために、「走りのプロ」の指導を仰いでいる選手がいる。浦和レッズの日本代表DF槙野智章を始め、MF宇賀神友弥やMF梅崎司、MF関根貴大、川崎フロンターレのFW大久保嘉人やMF大島僚太、柏レイソルのDF増嶋竜也など、日本トップクラスのプレーヤーたちは、同じ「プロスプリントコーチ」から走り方の指導を受けている。

 それが元プロ陸上選手の秋本真吾氏だ。秋本氏は400メートルハードルを本職とし、2010年からはプロの陸上選手として活躍。オリンピック強化指定選手にも選ばれ、同年には男子200メートルハードルのアジア最高記録を打ち立てた。100メートル走では10秒44の自己ベスト記録を持っている。

 2012年の日本選手権を最後に現役引退し、現在はアスリートタレントやモデルとして活動しながら、プロスプリントコーチとしても老若男女、プロアマを問わず、様々な方に「速く走るための方法」を指導している。

 サッカーキング・アカデミーでも、昨年の10月から11月にかけてスプリント力向上セミナーを実施。多くの参加者に速く走るためのレシピを伝授した。

 このセミナーが好評を博したため、今回、再び「スプリント力向上セミナー」を開催することになった。「指導すれば、絶対に全員を速くできる自信がある」と断言する秋本氏が、その方法の一端を語ってくれた。

対象はすべての層…絶対に速くできる

――陸上を始めたきっかけを教えてください。
秋本真吾 小さい頃から走るのが好きで足が速くて、ずっと外で遊んでいるような子だったんですが、小学6年生の時にランニングクラブに入って本格的に始めました。中学では3年間バスケットボール部だったんですが、大会出場に向けてトレーニングする「特設陸上部」で陸上もやっていました。

――400メートルハードルをやるようになったきっかけは?
秋本真吾 小学6年生の時に100メートルを12秒8で走っていたんですが、中学に上がったタイミングで成長期と重なって自分の体をコントロールできなくなり、遅くなってしまいました。そのタイミングで棒高跳びに転向して、高校でも続けていたんですが、ある日、顧問の先生に「次の大会400メートルハードルにエントリーしたから出てみろ」と言われて(笑)。試合の一週間前に言われたのでほとんど練習できず、最初の試合はダントツの最下位でした。そこで悔しい思いをしたのがきっかけになり、とにかく練習し高校3年目にインターハイに出場できました。

――顧問の先生は、秋本さんのどんなところに400メートルハードルの資質を見いだしたのでしょうか。
秋本真吾 バスケットボールをやっていたのと、走り幅跳びや三段跳びなどのフィールド競技もやっていたので、バネはものすごくあったんですね。それにプラスアルファで、高校の部活ではとにかく走るトレーニングが多く、走っているうちに走力、持久力がついていったんです。そういった部分が僕にマッチしていると考えてくれたようです。

――「走った」というのは、具体的にどのようなトレーニングをされていたのでしょうか。
秋本真吾 走り込みの日は、400メートル走を20~25本とか。あと、土手に行って走る時は、顧問の先生が枝を拾ってポキポキ折り始めるんですよ。それで100メートルダッシュをやって、1本走るごとに枝を1本捨てる。「枝がなくなったら終わり」とか(笑)。質や走るフォームについては一切考えず、とにかく走りまくりました。その練習が僕の土台を作ってくれた部分もありましたね。

――ということは、理論を学びながら走るようになったのはいつ頃からですか?
秋本真吾 高校時代は、試合に出て感じたことを自分の体で表現していって、それが大学の4年間も続いた感じでした。大学時代は、当時の監督さんが理解ある方で、自分たちでメニューを考えて練習させていただける環境を提供してくれました。そこで考える力がついていったと思います。理論と向き合うようになったのは、社会人になってからですね。

――何かきっかけがあったんですか?
秋本真吾 高校1年で400メートルハードルを始めて以来、8年間ずっと自己ベストを更新し続けていたので「頑張ったら結果が出る」という思いになっていたんですが、その記録更新が途絶えて、スランプに陥ってしまったんです。その時に初めて「自分のフォームってどうなっているんだろう」と思い、見直すようになりました。

――その時の経験が現在のご活躍に繋がっているのですね。では、現在どのような活動をされているのか、詳しく教えていただけますか。
秋本真吾 小さい子供からプロアスリートまで、様々な方を対象に、いろいろな場所で指導しています。週末はイベントに参加してハードルのデモンストレーションをしたり、陸上教室をやらせてもらったりすることが多いですね。また、NIKEと契約しているので、NIKEランニングエキスパートとして、一般ランナーの方にトレーニングを提供することもしています。

――多くのプロサッカー選手も指導されているそうですね。
秋本真吾 浦和レッズの選手たちとの付き合いが長く、槙野智章選手、宇賀神友弥選手、梅崎司選手、関根貴大選手、李忠成選手、森脇良太選手、加賀健一選手に指導しています。また川崎フロンターレでは大久保嘉人選手、大島僚太選手、谷口彰悟選手、柏レイソルの増嶋竜也選手、ジュビロ磐田の太田吉彰選手、愛媛FCの小島秀仁選手、坂野豊史選手、FC東京の吉本一謙選手、橋本拳人選手、ロアッソ熊本の髙柳一誠選手も過去指導させていただく機会がありました。

――アマチュアや一般ランナーへの指導は、どのような方を対象にすることが多いのでしょうか。
秋本真吾 先日は新宿区の主催で保護者の方向けの講習会をしました。自分が速くなりたい、子供に走り方を教えたい、という方が集まって、講義と実技をしました。この層は対象外、というのは作りたくないので、大人から子供まで、幅広い層に向けて教えています。

――サッカーキング・アカデミーでも、2015年10月から11月にかけてセミナーを開催していただきました。
秋本真吾 サッカー指導者の方が多く参加してくれたんですが、すごく意識の高い方々が集まってくれたので、僕もやりやすかったですね。講義の時には今まで教えてきたプロ選手の映像を見ていただいたり、参加者の映像を実際に自分の目で見ていただくんですが、参加者の方のアンケートを見ると、理論から知ることができたのはすごく大きいという声をたくさんいただきました。速く走るとはどういうことか、というのを理論として伝えるのは、陸上界では当たり前に行われていることなのですが、他のスポーツからすると新鮮なんだな、というのはその時に実感しました。

――今年の3月には、駒澤大学高校のサッカー部を指導されたそうですね。
秋本真吾 まさにそのサッカーキング・アカデミーのセミナーに、駒澤大学高校のトレーナーの方が参加されていて、講習後に「ぜひサッカー部に来て講習をしてください」と直接、連絡を頂いたことがきっかけです。サッカーキング・アカデミーからの広がりで実現した講習でした。

――強豪校の選手たちを指導されて、どのように感じましたか?
秋本真吾 最初に選手たちの走る姿を動画で撮って、今、自分のフォームがどうなっているのかを見せるんですけど、その時にどんな印象を持ったかを聞くと、「こんなはずじゃなかった」というネガティブな意見が多くて、イメージ通りに走れていた、という選手はほとんどいませんでした。それをどう直していくのかを一つ一つ伝えていき、最後にもう一度、動画を撮って変化を見ていました、本人たちもやっていくうちに「俺ちょっとずつ変わってきている」とか、「スピードが出てきている」と思い始めたようで、最後にはポジティブな言葉を多く聞くことができたので、すごくよかったな、と思いました。

――後日、学校側から何らかの報告はありましたか?
秋本真吾 タイムが速くなっている、スピードが上がっている、という声は頂いているので安心しているんですが、単発の指導で気をつけなければならないのは、講習後は僕ではなく、学校側の指導者が選手を見るので、ブレずに指導していくことが一つのポイントになるのかな、と思いました。

――本来は継続的に、定期的に指導したほうがいい、ということでしょうか。
秋本真吾 本当はその方がいいと思います。僕もどこかのクラブに1年間入って、スプリントコーチとかフィジカルコーチとして指導すれば、絶対に全員を速くできる自信があります。いつかそんなことができれば面白いかな、とは思っています。

――全員を、確実に速くすることができると。
秋本真吾 絶対にできます。僕がある高校や大学の陸上部に行って、全員を速くすることは難しいと思います。陸上をやっている学生は突き詰めてきている子が多いですし、100メートル走で0.01秒短縮するのってめちゃくちゃ大変なんですよ。でも、100メートルを10秒台で走れるサッカー選手ってそう多くないですし、僕自身は10秒台で走るためのレシピやメソッドは持っているので、サッカー選手が現在、持っている能力を引き上げることは絶対にできます。

サッカー選手は可能性だらけ…秋本氏が選手の走り方を変える/第2回

誰でも速くなる可能性はある…秋本氏が走りの極意を語る/最終回

スプリントコーチ
秋本 真吾(あきもと しんご)

元陸上競技選手として活躍。400m ハードルにおいて、数多くの大会で上位入賞を果たし、2010年には男子200m ハードルでアジア最高記録、日本最高記録を樹立。
2012年6月に引退後、本格的に指導者として活動を開始。スプリントコーチとして、オリックス・バファローズ(プロ野球)、オービックシーガルズ(アメリカンフットボール)、INAC 神戸レオナッサ(なでしこリーグ)で指導経験を持つ。
Jリーグでは、浦和レッドダイヤモンズの宇賀神友弥、梅崎司、加賀健一、関根貴大、槙野智章、森脇良太、李忠成をはじめ、大久保嘉人、大島僚太、谷口彰悟などの個人指導も行っている。
一方、トッププレーヤーだけではなく、全国で子供たちの走り方教室など小中学生を対象とした活動も幅広く展開している。現在は地元の福島県大熊町の子どもたちを支援する被災地支援団体 ARIGATO OKUMA の代表も務めている。
2015年には NIKE と契約し、 NIKE RUNNING EXPERT、NIKE RUNNING COACH に就任。

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