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歯向かう選手は大歓迎? 風間八宏が語るチームマネジメント術

2021.04.27

 サッカーチームを率いる監督に求められることは多い。

 見るものを惹きつけるサッカー哲学や理論、それを言葉にして選手に納得させる力からオフ・ザ・ピッチでのケアまで、いわゆる“クラブマネジメント”と称される要素は多岐に渡る。

 2月にレイニーフロッグより発売されたNintendo Switch / PlayStation4用ソフト『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』プレイヤーは自分のクラブの財務管理、選手の売買、スポンサーとの契約、選手とのミーティング、スタッフのスカウト、施設のアップグレードをするだけでなく、チームの戦術とフォーメーションの決定、試合中の選手の操作など、“クラブマネジメント”を多角的に体験することが可能となっているが、マネジメントする人間とは何を心掛け、何を目指し、何を信念として、臨めばいいのか。

 独自のサッカー理論と哲学を示し、川崎フロンターレと名古屋グランパスを率い、今年よりセレッソ大阪で指導者育成に励む風間八宏氏に“マネジメントの真髄”や、組織づくりのアプローチ法を聞いた。

インタビュー=竹中玲央奈
写真=須田康暉

ミッションは「哲学を落とし込むこと」

―――風間さんはサッカースクールであるトラウムトレーニングの代表を務め、明治安田生命Jリーグのクラブでも監督を務めました。本ゲームでは監督視点だけでなく、クラブ経営などの視点も必要な要素となります。これまで“マネジメント”をする側として活躍されていますが、この立場において大切な考え方やスタンスというものはどういったものでしょうか。

風間 まず、どのチームも“哲学”を探していますよね。これまで指揮を執った川崎と名古屋、そして今のC大阪もそれを探しており、具現化したいという要望から始まりました。最も大事なことはクラブのトップがその哲学をどう考えて、下に落としていくか。それが大きなミッションです。

―――フロントや現場のスタッフと一体になる必要があるのかなと。

風間 川崎の場合は「チームの育成組織からトップまで全て攻撃的なチームを作って欲しい」と伝えられました。日本で一番得点を取っていたクラブでしたが、「“攻撃的”とは何か」を模索していた。ただ、その裏側には「観客を増やしたい」、「クラブを大きくしなければいけない」という思いがありました。そのための一番の手段として“攻撃的”を具現化したチームを作ることが大事だと、会社が判断したんです。

―――風間さんが率いたチームは観客動員が増えました。哲学をピッチで体現することで、「このチームはこういうサッカーをする」という認識ができる。哲学が伝播した結果なのかと感じます。

風間 作り手が面白いと思わないとお客さんも来ません。ただ、それを作る過程で経営側とピッチ側に考えの相違が生まれることがよくあります。グラウンド上が華やかではないと、フロントもすごく不安になる。営業側が盛り上げるための活動を起こそうとしても、グラウンド側のトップである監督が「選手を引っ張り回されるのは嫌だ」と言ってうまく進まない。現場からは「こういうサッカーをするためにこんな選手を取ってほしい」とフロントに要望することもあれば、グラウンド外の人たちにも頼みごとをすることもある。

 こういったことはよく起こります。だからこそ、現場とフロントのつながりをスムーズにしなければいけないのですが、これが簡単そうで難しい。まずはピッチで作るサッカーが第一で、それに加えて関わる人たち全員の意識が共有されて、大きくなっていくものです。それぞれのところでバラバラになると組織としてまとまりません。

―――オン・ザ・ピッチで楽しむことが重要とお話になりますが、指導の中で意識していることはありますか?

風間 簡単に言うと、「5-0で勝ちたいチーム」なのか、「1-0で勝ちたいチーム」なのかということです。選手にははっきりした意思を伝えなければいけません。私は「俺たちは5-0で勝つチームになる。そのための技術を身につけないといけない」と伝えます。先ほど話したような“攻撃的”なチームであるならなおさらです。

 もちろんそれぞれに哲学があるので、1-0で勝つチームも良いと思います。でも、毎回複数得点が見られるチームであれば、お客さんも楽しいと思って集まるし、何よりも選手が楽しいと思います。

―――ゲーム内では監督として、試合中に指示を出すこともポイントになります。シチュエーションで違いますが、ハーフタイムにはどういう声かけをしているのでしょうか。

風間 川崎時代の例を1つ上げると、2014年のAFCチャンピオンズリーグ、ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ戦です。自陣にべったりと引いている相手に対して前半は点を取れなかったのですが、「頭を変えてみろ」と伝えました。「前に相手がいるからシュートがゴールまで飛ばないと思っている。でも、相手GKもそれは同じだ。前にたくさん人がいるというのはGKにとっても難しい状況だから、ためらわずに思い切って打ってみろ」と伝えたのですが、後半に大島僚太がミドルシュートを決めました。指導者は選手が何を考えているかも、相手がどういう状況かもわからなければいけません。

―――選手が見えていないところを引き出すと。

風間 そのためには、普段から言葉がすぐに伝わるようにしておかないといけません。急に指摘されても簡単には変えられない。ハーフタイムを経て「変わったな」、と思うチームがあれば、それは普段ちゃんとトレーニングをしているチームです。変わらないのであれば監督が“言葉だけ”を使っているチーム。結局、毎日のトレーニングが大きいですからね。日々のトレーニングがあるから言葉が通じるんです。

サッカーはグラウンドだけでやるものではない

―――ゲーム内では財務管理、選手の売買、スポンサーとの契約、理事会とのミーティング、スタジアムのアップグレードなども考える必要があります。風間さんがオフ・ザ・ピッチで意識したのはフロントとの繋がりでしょうか。

風間 どこのクラブでもまず社長とはしっかり話をさせてもらいます。「選手とこういうことに取り組んでいるから、トレーニングを見に来てくれ」ということも伝えていました。あとはお客さんがどれだけ入っていくかを見ていきましょう、と。意図が共有できていれば、フロントもグラウンドを守ってくれますし、自分たちが結果を出せばもちろん周囲も変わってくる。そうやってクラブは一体になっていきます。

―――フロントの方も練習場へよく足を運ぶと。

風間 トップの人と「どういうものを作るか」を話して、みんなが努力をしてくれました。例えば名古屋では「ここには4万人を入れに来た」と話し、実際にそれをみんなで実現しました。これが重要です。

“自分が来たらこのクラブがどうなるか”をしっかりと話さなければいけません。そして、クラブ側もそのために自分を呼んだことを確認しなければいけない。

 営業部や企画部もその哲学と目標のためにどう動くかも重要です。名古屋時代は、営業企画のメンバーの合宿に参加して話し合いの場を持たせてもらいました。川崎のときも現場とフロントが離れすぎないように、プロモーション部とはよく話をしました。

 こうやってフロントサイドと繋がると企画側がクレイジーなものをどんどん持ってくるので大変ですけどね(笑)。名古屋では180人くらい集まるプレミアム会員との集まりで歌わされたし、川崎のファン感謝デーでも水でずぶ濡れになるようなこともありました。でも、それはそれで面白いから良かったですし、そういう面も含めて一つにならないとクラブは大きくなりません。

―――ちなみに、風間さんがプレーをしたドイツではどうでしたか?

風間 当時は選手がどのクラブに加入するかを決めるときは監督やコーチでは決めませんでした。フロントがしっかりしているかどうかの情報を聞き、移籍を決めます。グラウンドでは監督と勝負ができるけど、クラブと勝負はできない。だからこそ内側を見るという習慣はありました。理解はここで生まれたかもしれません。

歯向かう選手を“止めて”はいけない

―――組織のモチベーションを高めるために取り組んだことなどはありますか?

風間 川崎の監督に就任した初日の練習で、選手とチームに刺激を与えるため、ピッチレベルまでメディアに入ってもらい、練習をしました。選手たちを見た際、「個々が持っている実力が発揮できていないな」と思ったんですね。そこで「我々の仕事は見られることであり、自分たちが力を出さなければダメだ」と伝えました。そして人のせい、モノのせいにはしない、ということを約束としました。あとは「ボールを取られるな」ということですね。これらの約束はプロに限らずどこのチームでもしています。選手1人1人に「何をしたいのか」かも聞きます。

―――一人ひとりと面談を?

風間 そうです。彼らがどうなりたいのか、何をしたいのかを聞きます。私が何をしたいのかは全員の前で伝えますから。

 選手との対話の中でエネルギーが強い選手はこちらに向かってくることもありますが、“歯向かう”選手は人の何倍も「勝ちたい」というエネルギーが強い。監督に向かってくるタイプの彼らに対しては、止めるよりも、やらせるほうが良い。「何をしているんだ、まだまだやれるだろ!」と。

 火がある選手は燃やし続けなければいけません。蓋をしてしまっては、力を出させてあげることはできません。選手は生き物なので、向き合う際に感情が先に来ないようにする術を持たなければいけないと、私は考えています。

―――感情的にならないポイントはあるのでしょうか。

風間 言葉を砕いて考えていくことですね。試合終わりに“なぜ頭にきているか”を砕くと、“FWの選手が点を決めていないから”となる。では、点を決めていくためにはどうすればよいかを考えると、翌日以降の練習に焦点が当たります。そのタイミングで「自分ができることはこれだな」と思う。そして、怒りがなくなります。感情と感情がぶつかりあうと摩擦が生まれ、関係は保てないですから。一番邪魔なものは感情です。感情で戦うとロクなことになりません。

言葉一つで全員に伝えることが必要

―――ゲームではスタッフも適切に配置していく必要があります。スタッフへのアプローチも、選手と同じ形でしょうか?

風間 近いですね。スタッフに対して一番は、食事をおごることですね(笑)。職場だけにいると、仕事の中での関係にしかならない。だから職場以外の関係を作ることが大事です。入り過ぎはしないですけど、メンバー平等に呼んで、“場面を変える機会”を作ることはします。その後は壁が取れるので、仕事のコミュニケーションもうまくいくようになる。

―――改めて、風間さんが集団を組織するに当たって大切にしていることを教えてください。

風間 目や言葉を揃えることですね。

 例えばボールを「止める」と言っても、人それぞれの「止める」がある。でも、「自分が蹴りやすいところに完全に静止させる」、「次のプレーで何でもできる(蹴る)ところに静止させる」という意味の「止める」だと定義すれば伝わります。

 止める部分に関しては親指かもしれないし、足の甲かもしれない。そこは人によって違って良いと思いますが、ベースの部分の目や言葉を揃えることは重要です。「止まる」の定義が別々だったら指摘しても響きませんからね。

 私は横文字を使いませんが、それは細部まで伝わらないからです。日本語であればこれ以上、分解できないというところまで落とし込める。言葉は一つで全員に伝わらなければいけない。そういったことを意識しています。

『サッカークラブライフ プレイングマネージャー』

マネジメントとアクションがミックスしたトータルサッカーマネジメントシミュレーションゲーム!
ヨーロッパの各国で自分のクラブを頂点に導け!
マネジメントとアクションがミックスした新感覚のサッカーゲームの登場です。
プレーヤーはクラブの財務管理、選手の売買、スポンサー契約、クラブ理事会、スタジアム拡張などのクラブ運営を行っていきつつ、ピッチ上ではチームをコントロールし、選手が満足いくようにマネジメントしていきます。
また、クラブマネジメントと並行して、監督としてチーム戦術やフォーメーション設定、選手選考などに取り組み、試合中の局面では結果を左右するプレー判断を求めらるなど、シミュレーションだけでなく、スポーツゲームとしても楽しめる要素が多数盛り込まれています。
役員室からペナルティエリアまで、トータルでサッカーをマネジメントするゲームです。
公式HP
◆商品情報
タイトル名:サッカークラブライフ プレイングマネージャー
発売日:2021年2月10日(発売中)
対応機種:Nintendo Switch/PlayStation4(PS4はDL版のみ)
価格:3,500円(税別)/DL版:2,500円(税別)

メーカー:レイニーフロッグ
<購入>
Nintendo Switch版
無料体験版配信中です。ぜひプレイしてみてください。
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000033358.html
PlayStation 4版
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP1309-CUSA25019_00-SOCCERCLUBLIFEJP
ジャンル:サッカーシミュレーション/アクション
プレイ人数:1P
CERO:A「全年齢」
権利表記:©2018-2021 New Star Games Ltd. All rights reserved.
Licensed to and published by Rainy Frog LLC.

ゲーム公式HPではオリジナルパッケージも作成可能!(上記デザインパッケージの販売はありません)

公式HP

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