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「スポーツビジネスのトップランナーに聞く」第7回:久保田圭一さん(アビームコンサルティング株式会社)

2019.04.12

日本国内外のあらゆる産業に対してコンサルティングサービスを提供している総合コンサルティング会社「アビームコンサルティング株式会社」で、主にスポーツビジネスに携わっている久保田圭一氏。

「まだ十分にビジネス化できていない」というこの分野に2013年から携わり、その中で得たノウハウや知見をまとめた著書『究極の“コト消費”であるスポーツビジネス 成功のシナリオ』が3月28日に上梓された。

FROMONE SPORTS ACADEMYでは、5月10日(金)に久保田さんをお招きし、本書の発売記念イベントを開催することになった。スポーツビジネスにはどのようなステークホルダーが存在し、その中でマネタイズするには何が必要なのか。本書を読んで興味、関心を持たれた方は、参加してみてはいかがだろうか。

カメラマン=兼子愼一郎


――まず、ご自身の経歴を簡単にご紹介ください。

久保田  新卒で外資系のコンサルティング会社に入り、そこでは官公庁関連のコンサルティングをやりました。2004年に現在の会社に転職し、2009年まではやはり官公庁関連の仕事をしていました。2010年にスポーツくじの売り上げ拡大のコンサルティング案件を支援することになり、初めてスポーツとのかかわりができました。そして2013年、2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催が決定した瞬間から、僕の中での軸足をスポーツビジネスに移し、それ以降はスポーツビジネスに携わっています。最初は社内にタスクフォースという一時的な組織を作って活動し、その活動内容がそれなりの形になってきたこともあって、2017年4月に現在のセクターという形になりました。

――元々スポーツはされていたのですか?

久保田  サッカーをずっとやっていました。6歳の時に父親の仕事の関係でブラジルに転勤し、そこで始めました。当時はまだカズさん(三浦知良/現横浜FC)がブラジルにいて、僕が通っていたサンパウロの日本人学校に、たまに教えに来てくれていたんですよ。ただ、僕は水島武蔵さん(元サンパウロFCなど)のスクールに通っていたので、カズさんとはそんなに接点がなかったんですよね(苦笑)。ブラジルには11歳までいて、帰国後も高校までサッカーをやりました。現在の仕事も、サッカーやフットサルに関連することに目が向きがちです。

――アビームコンサルティング株式会社とはどのような会社なのでしょうか。

久保田  分類で言うと「総合コンサルティング会社」というくくりになります。金融や保険、公共など、日本の産業のほぼ全体に対してコンサルティングサービスを提供します。戦略の策定や、その戦略に基づく業務の設計、システムの導入、組織の設計など、サービス全般を提供しています。

――これまでスポーツの分野では、どのようなコンサルティングサービスを手掛けてきたのでしょうか。

久保田  スポーツ業界のステークホルダーは大きく5つに分かれると考えています。一つ目はリーグとかチームなどのコンテンツホルダー。二つ目はスポーツ庁や日本スポーツ振興センター、観光庁などの行政。三つめはスタジアム・アリーナ。四つ目は、少し広いんですけどスポーツ推進企業というくくり。元々はスポーツ用品メーカーを想定していたんですが、最近は食品メーカーや化粧品メーカーなども増えています。最後はメディアですね。その5つをターゲットとしてコンサルティングしています。内容はそれぞれ異なるんですが、たとえばコンテンツホルダーに対しては、選手や試合、データ、ファンといったコンテンツを使って何か新しいことができないかと一緒に考えています。

――スポーツビジネス市場の拡大に向けて、どのような施策を仕掛けているのでしょうか。

久保田  スポンサーを増やすための動きをやり始めています。スポンサーは権利を作ろうと思えばいくらでも作れますし、「ロゴを掲出するだけでなく、チームのコンテンツを使ってあなたのビジネスに貢献できますよ」という話もできます。手間はかかるんですが、コンサルティング会社が地域やスポンサーになりそうな企業の分析をして、この企業ならこんな連携の可能性があるんじゃないかと提案し、成約してもらうという、スポンサー拡大支援サービスのようなことに取り組んでいます。


――今回、出版された著書『究極の“コト消費”であるスポーツビジネス 成功のシナリオ』についてうかがいます。どのような想いでこの本を執筆されたのでしょうか。

久保田  スポーツビジネスには大きな可能性があるんですけど、今はまだ十分にビジネス化できていないと思っています。2013年にタスクフォースを立ち上げてから色々やってきましたが、ようやくある程度のノウハウが貯まり、知見も出来てきました。それらをいったん世の中に出して、少しでも参考にしていただき、スポーツのビジネス化を推進してもらえればうれしいな、という思いから書きました。

――どのような内容なのか、簡単に教えていただけますか。

久保田  大きく出しているコンセプトは「SET分析」という考え方です。「S」はシンパシー。「E」がエコシステム、「T」がタイム。2017年にバルセロナのカンプ・ノウでスタジアムツアーに参加した時、売店でカプセルに入った芝生が売られていて、聞けば「カンプ・ノウの芝です。メッシが踏んだ芝ですよ」と言われたんですよね。僕は元々バルセロナのファンで、近くに感じていたいという気持ちから購入しました。それがスポーツの生み出す共感、価値であり、それをうまく使うことが、スポーツをマネタイズする上ですごく重要だと思っています。そして、それを商品やサービスとして提供する際、チームなど単独でできることは限られているので、協力できる相手を最初から選んでおこう、というのが「エコシステム」。最後の「タイム」は、体験することは時間を奪うことだという考えに基づき、朝起きてから寝るまでの時間をどうやって奪うかを考えましょう、という考え方です。“コト”ビジネスをやるには、何を共感として訴えられるのか、誰と組めばうまくいくのか、どうやって一般の人たちの時間を奪うのか、という観点で考えましょうというのがSET分析で、本の中では1章まるごと使って紹介しています。他にも、今後のスポーツビジネスで何が展開されていくのか、その課題がどこにあるのかについても書いています。

――著書内でも明かされていると思いますが、HONDA ESTILO株式会社との取り組みについて教えていただけますか?

久保田  彼らが運営するSOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOLのコーチ評価制度を作りました。スクールの急激な拡大に伴って新しいコーチが増えたのですが、コーチたちがスクールの理念を守った行動を取れているのか、コーチの質が求めている水準に達しているのかという懸念があり、それを評価し、管理する制度がなかったので、理念に基づいた評価制度を作ってコーチを評価しましょう、というものを作りました。行動を意識する基準ができたので、コーチたちの意識が高まったというのは導入から約半年後に成果として出ていると聞きました。

――どのような方たちにこの本を読んでほしいと考えていますか?

久保田  コンテンツホルダーの方はもちろんですし、アスリートにも読んでほしいですね。アスリートがスポンサー営業に同行した方が相手に刺さるんですよね。アスリート本人から「自分のことを応援してほしい」と面と向かって言われたら、「イヤです」とは言いにくい(笑)。それでスポーツ界にお金が流れて発展するのはいいことだと思っていて、そういった内容も書いてあるので、アスリートの方にも呼んでほしいです。もちろんスポーツ行政に関わっている方、スタジアム・アリーナの関係者、新規事業でスポーツを使いたいと考えている人にも読んでほしい。メディアの方にはアピールしてほしいです(笑)。スポーツ産業を作っているステークホルダーの方々、そこで働こうと考えている学生にも読んでほしいです。

――参加を検討されている方々へのメッセージをお願いします。

久保田  「スポーツビジネス」という言葉が先行して、あたかもビジネス化されていてバラ色の世界のようなイメージを持たれているかもしれないですけど、現状ではそんなことはありません。これからいろいろな課題を解決して、実際にお金を生める、スポーツビジネスと呼べる世界にしていかなければならないですし、イベントに参加される方はそこに何かしらの貢献をしたいと考えている方が多いと思うので、一緒に連携し、協力して取り組んでいきましょう。

 

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