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佐藤寿人×髙瀬愛実 リーグMVP&得点王 対談 ゴールの秘訣

2013.01.25

佐藤寿人(サンフレッチェ広島)×髙瀬愛実(INAC神戸レオネッサ)リーグMVP&得点王 対談 ゴールの秘訣
ただ貪欲にゴールを狙い続け、チームを栄光へと導いた2人。リーグMVPと得点王に輝いた2人は、ゴールの先に何を見据えているのか。男女の垣根を超えて実現した初対談。至極のストライカー論に迫る。

インタビュー・文=山本剛央 写真=CORACAO 齊藤友也

チームメートと同じイメージを描けるかどうかが重要

──お2人が初めて会われたのはいつのことですか?

髙瀬 2012年の8月です。私たちがカップ戦で、Jリーグの前座で試合をやらせてもらって、その時に佐藤さんから来てくれて。

佐藤 そうですね。髙瀬選手は僕と同じく、ヒュンメルの契約選手だったので、前々から応援していました。以前、人づてで髙瀬選手からメッセージ入りの色紙をもらっていたので、僕も色紙を送らせてもらっていて。その時が初対面でしたけど、そういったやり取りがあったので、会いたいと思っていたんです。

──佐藤選手はなでしこリーグの試合をチェックしているとのことですが?

佐藤 はい、テレビでもやっていますし。髙瀬選手が途中から得点王争いを独走しているのも知っていました。お互い得点王を獲れたらな、というのがあったので、実現できてうれしかったですし、MVPまで一緒に受賞することができたっていうのも、うれしかったですね。

──お2人とも12シーズンはリーグ優勝を達成されました。改めて喜びの声を聞かせてください。

佐藤 非常に幸せです。本当に長い間、優勝の瞬間をチームとしても個人としても待ちわびていましたから。キャリアの中で自分自身も初めての優勝となりましたが、開幕の時は、優勝できる、優勝する、という思いを持ってシーズンに入ったわけではなく、とにかく自分たちのやれるサッカーをずっと続けていこうと。言ってみれば無欲の状態ですね。徐々に優勝争いをしていく中でいろんなプレッシャーを感じながら、優勝に対する思いがより強くなっていきました。途中、プレッシャーに押しつぶされそうになった時もありましたけど、本当に最高のシーズンを送れました。サンフレッチェ広島に加入して8年になりますが、ようやく一つ大きな結果を残すことができました。

髙瀬 私たちは連覇を目標に掲げ、シーズンに入りました。昨シーズンはなかなか試合にも出られず、結果を残せなかった悔しい思いがあったので、試合に出続けるという目標を立てて、そのために結果を残すという考え方で臨みました。試合に出続けるために、しっかり得点を重ねましたし、チームの連覇のためにという意味も込めてゴールも狙っていきました。自分にとってはすごく良いシーズンだったと思います。

──それぞれ得点王とMVPも受賞しました。

佐藤 それはやはり、チームのお陰ですね。僕は自分の力で局面を打開してゴールを決めるタイプではないので、やっぱりチームメートと同じイメージを描きながらチャンスを作り出して、フィニッシャーとしてゴールを決めるというストライカーだと思っています。チャンスを多く得られたのは、チーム全体が良い戦いができていたからです。ですから、僕の得点王は、みんなで勝ち取ったものだと思っています。自分自身、J2で一度得点王を獲って、またJ1で獲ることができたっていう意味でも、J2に修行に出ている選手やJ1で伸び悩んでいる若い選手に対して、いいモチベーションにしてほしいなっていう思いもあります。

髙瀬 私も同じ考えですね。チャンスを作り出す優秀な選手がそろっているからこそ、自分がゴールを決められている。そういった意味では感謝感謝の得点王でした。それでも、あえて自分の成長した部分を挙げるとするならば、得点を取れるポジションにいられるようになったということですね。ゴールを強く意識してプレーするようになり、その結果としてチャンスが多く回ってきたというか。佐藤選手は周りに助けられたとおしゃっていましたが、自分から見ればそれだけボールを引き出す動きがすごい。私も周りからもっともっとボールを引き出せる選手になりたいですね。

──リーグ優勝できた最大の要因は?

佐藤 チームが一つになって戦うことができたからだと思います。自分たちはこれまでカップ戦さえ優勝した経験がなかったのですが、チームが一つにまとまって戦うことができたからこそ、この結果を成し遂げることができたんだと思います。当然試合に出ている選手もいれば、なかなか出られないベンチに控えている選手もいます。時には紅白戦さえも出られない若い選手もいるのですが、本当に一年間チームの中で雰囲気が乱れることなく、全員が同じ目標に対して同じ方向を向いて戦うことができたので、優勝の一番大きな要因はチームとしての団結にあったと感じています。

髙瀬 やはり、私たちもまずチームの団結が挙げられると思います。チームが連覇を狙っていく中で、豊富な経験を持つ選手たちに、経験の少ない選手が必死についていった。今シーズンに関しては全選手がリーグ戦に出場し、私も含めた若手の選手が引っ張られてばかりではなくて、下からも押し上げていけたということが今回の優勝に関しては大きかったと思います。

──リーグ優勝を成し遂げたことで、広島はクラブ・ワールドカップ、INAC神戸レオネッサは国際女子サッカークラブ選手権と、それぞれ国際大会に出場しました。惜しくも優勝とはなりませんでしたが、国際大会を経験した感想は?

佐藤 ある程度やれる手応えを感じた部分もありますし、本当の意味で結果を出していくためには、もっともっと上積みしていかないといけないなっていう、そういった差を感じた部分もありました。今回の大会で得られた経験を生かして、来季はACLで良い結果を残せるようにやっていきたいですね。

髙瀬 国際大会はクラブとしての大きなチャレンジ。私自身、大会前からすごく楽しみにしていて、事実すごく楽しかったです。ただ、最後は決勝でリヨンに敗れてしまって、悔いが残りました。これから日本の国内のレベルを上げるためにもそこを基準にプレーしないといけないなと思った大会でした。個人としても、チームとしても。

──具体的に、世界との差はどういった部分に感じましたか?

佐藤 一つひとつのプレーに対して、高い精度が求められますし、ディテールの部分が勝敗に直結すると感じました。ストライカーとしては、例えばリーグ戦では状況判断が悪くても技術で取り返せる場面があったり、逆に技術が伴っていなくても判断さえ良ければゴールを生み出せる場面があります。しかし、本当の意味で世界のトップと渡り合うためには、そういった部分でも完璧を求める必要があると感じました。少し大げさですが、それだけ高い質を求められていると思います。

髙瀬 女子の場合は、外国人選手との体格差やスピードの差がすごくあります。その中で自分たちのプレースタイルをどこまで貫き通せるかが、勝敗を分けるのではないかと思います。リヨンとの決勝戦は、リードしている中で守りに入ってしまった。攻めの姿勢を貫かないといけないチームが、少し弱気になってしまったんです。その結果として、同点弾を決められ、延長の末に逆転されてしまった。INAC神戸はポゼッションサッカーが主体のチーム。特にそこの部分は、高いレベルを追求してやっていかなければいけないと思いました。


佐藤寿人(サンフレッチェ広島)×髙瀬愛実(INAC神戸レオネッサ)リーグMVP&得点王 対談 ゴールの秘訣

Hisato SATO
1982年3月12日、埼玉県生まれ。市原(現千葉)、C大阪、仙台を経て、2005年から広島でプレー。2012シーズンは、ゴールを量産しチームを初優勝へと導くとともに、リーグMVP&得点王を受賞した。

Megumi TAKASE
1990年11月10日、北海道生まれ。2009年にINAC神戸レオネッサに入団。ルーキーイヤーは、16得点を挙げ新人賞を獲得。リーグ2連覇を達成した2012シーズンは、20得点で得点王を獲得。MVPも受賞した。

プレーから学んで自分のモノにできるかどうか

──では、ここからはストライカー論を聞かせてください。お2人がストライカーとして、最も大事にしていることは何ですか?

佐藤 一つひとつのシュートに対して、決まっている時も決まらなかった時も、そのプレーから学んで自分のモノにできるか、はすごく大事にしています。ゴールを決めた時でも、相手がもっと良い対応をしていたら防がれていたというシーンは結構あるので。常にストライカーとして良くなっていける要素を探すようにはしていますし、その積み重ねでゴールを生み出すことができると思っています。決めて終わりではなく、そこからまた次のゴールへのきっかけを掴むことができるかは意識してずっとやっていますね。

髙瀬 FWなので本当に一番点が取りたいという強い思いを持ってやっていますし、点を取るためにどこにいたらいいのかは常に意識しています。最近は特に、どのタイミングでどういった状態で入るかというのをすごく意識していますね。自分はあまり技術があるわけではないので、ボールを受ける前が勝負と思っています。それはすごく意識しています。

──相手DFとの駆け引きについては、どういった部分が重要と考えていますか?

佐藤 僕はある程度、対戦相手の特徴を頭に入れて試合に臨み、マッチアップしてその時に感じた相手DFの感覚であったり、相手チームとしての問題点などを意識してプレーするようにしています。相手がどういう形で守りたいのか、というのを知らなければ、その逆は突けないと思いますので。

髙瀬 相手DFとの駆け引きについては、まだまだ勉強中の身です。佐藤選手のプレーも参考にしています。特にマークを外す動きは感心してしまいますね。自分も質の高い動きができるように、トレーニングから意識して取りレーニングから意識して取り組んでいきたいです。

──お2人はともにヒュンメルのスパイクを履いて、ゴールを量産しました。スパイクに求めることは?

佐藤 90分間ハードな動きをしても疲れないっていうのは大きな部分です。それにフィット感ですね。試合だけに限らず普段のトレーニングでも1時間30分から2時間弱スパイクを履いてトレーニングをするんですけど、練習の中でも疲労が出てしまうシューズであれば、試合でも良いパフォーマンスは出せないんですね。(ミッドソールに)クッション素材が入っているのが疲労軽減につながっていると思いますし、大きなケガもなかったので、しっかりシューズにサポートしてもらっているのを感じていますね。

髙瀬 私も履かせていただくようになってからケガがなくなりました。プレーしている最中は、いい意味で気にならない。それだけ自分に合っていますし、素足感覚に近い感じですね。このスパイクを履いて結果を残せているので、私も良い印象ばかりです。

──今後のサッカー人生の目標は?

佐藤 来シーズン、サンフレッチェに対して、そして自分自身に対しても周囲の目線が変わってくると思います。その中で結果を出し続けることを求めていきたいです。ACLで優勝して、クラブ・ワールドカップにアジアチャンピオンとして出場したいですね。

髙瀬 私は今シーズン、得点王とMVPをいただきましたが、自分が納得してのMVPではなく、周りの助けがあってこその受賞でした。ただ、自分の中で責任感というか、そういう選手にならなきゃいけないっていう気持ちも芽生えました。次は自分の納得できる形で、賞をいただけるよう、頑張っていきたいと思っています。

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