サッカーゲームキングジャック6月号
2016.01.24

【全文掲載・前編】注目のJFA会長選へ――原専務理事、田嶋副会長が語る日本サッカー界の明日

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写真=兼子愼一郎

 2016年1月21日、朝日新聞東京本社読者ホールにおいて、朝日新聞サッカーシンポジウム「協会会長候補と語る日本サッカーの明日」が開催された。

 登壇者は1月31日に行われる日本サッカー協会の会長選挙に立候補している原博実氏と田嶋幸三氏、サッカー解説者で日本サッカー協会特任理事の北澤豪氏、サッカージャーナリストの大住良之氏。史上初めて選挙戦が実施されることになった会長選。朝日新聞編集委員を務める潮智史氏の進行により、複数のテーマについて熱い議論が交わされた。

 今回、サッカーキングでは同シンポジウムの趣旨を鑑み、候補者の声をしっかりと皆さんにお伝えするため、編集部で抜粋した形ではなく、原、田嶋両候補の考えを前後編に分けて、そのまま掲載することとした。この会長選は日本サッカー協会の評議員(47都道府県サッカー協会、各種競技団体など)75名によって行われるため、メディアにも一般にも投票権はないが、両候補を含む登壇者の意見をしっかりと見聞きすることで日本サッカー界の未来を考え、広く議論することにつながればと思う。

 最初のテーマは「日本代表強化について」。まず議題に上ったのは、Jリーグにおいてサンフレッチェ広島の森保一監督やガンバ大阪の長谷川健太監督など、若い世代の指導者が実績を残している点についてだ。彼らと同年代の北澤氏、そして大住氏がそれぞれの意見を述べた。

北澤「同年代の森保監督は、Jリーグで4年間で3度の優勝を経験し、昨年末のFIFAクラブワールドカップでの活躍を見ても、対戦経験のない相手に対してあれだけの結果を残せるというのは、指導能力がレベルアップしていると感じますし、長谷川監督も同様です。もっと言えば、僕よりも下の世代の監督も出てきている。それは変化として表れているのかな、と感じます」

大住「日本代表監督は日本人で、というのは言われていましたが、国際舞台やW杯での経験がないというのがネックとなり、不安視する声もありました。しかし森保監督の活躍を見る限り、もうそろそろ大丈夫なんじゃないかな、という気もしています」

 ワールドカップで日本代表を率いた経験を持つ日本人監督は、今のところ岡田武史氏のみ。今後、日本人監督が日本代表を率いる可能性やタイミングについて、まずは原氏が意見を述べた。

「(可能性は)ありじゃないですか。ただ、先ほど話に出たFIFAクラブW杯についても、開催国枠で出場した状況です。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で優勝して出場したわけではないので、そのあたりを経験して、親善試合ではなく、実際に真剣勝負の場を多くこなす日本人の指導者、あるいは中国のチームを率いてACLを勝ち抜くような日本人指導者、またはヨーロッパの1部リーグのチームで監督をやる日本人指導者、こういった方々が増えてくれば可能性はかなり高くなると思います。多くの経験を積んだ素晴らしい指導者が増えているのは間違いないと思います」

「日本人監督だから難しい、ということは?」

「難しいということはないと思います。意外と外国人のほうが日本の良さを知っていたり、日本人だと逆に知りすぎているなど、そういうケースはあると思いますが、それは性格的なものですし、日本人だから、外国人だからというよりは、経験ですよね。日本人監督にもっともっと経験を積んでもらえれば、代表監督を日本人が務める可能性はあると思います」

田嶋「私もイエスかノーかで言えば、イエスです。(日本サッカー協会の)技術委員長時代から、日本人監督はダメだという考えは全く持っていなくて、世界に連れていける監督という基準で選んでいました。そういう意味では日本人監督が代表監督になってもいいと思います。ただ、日本人監督の場合は予選の時にものすごいプレッシャーがかかり、家族だとかいろいろな問題を抱えていたということを今までに聞いています。逆に外国人監督の場合は、そのプレッシャーを受け止めやすい。あまり感じないケースが多いようです。逆に本大会に出た時には、岡田監督がしたように、相手を分析しながら綿密な計画を立てるという意味では、『日本人監督のほうがいいのかな』と思う時がありました。ただ、世界の舞台で勝てる監督を、もっともっと育てていかなければならないなと。何人かは育っていますが、その数をもっともっと増やして、彼らが世界の舞台で実際に経験を積むことが大事だと思っています」

 続いて、日本代表の現状について、大住、北澤両氏がそれぞれの見解を示した。

大住「チームがいい状態の時は、チームが成長している時。成長している時とは何かといえば、個々の選手が成長している時。選手が目に見えて成長している時は、いい試合もできるし、いいプレーもできる。しかし現状を見ると、香川真司、本田圭佑あたりが出てきた時のように勢いがあってどんどん成長していって世界に並び立つような選手が出てきているような状態ではない。それがチームの勢いのなさ、停滞感につながっているのは気がかりですね」

北澤「勝たなければならない状況の中で戦うのは大変だと思いますが、それに応えていかなければならないし、どう育てていくかが大事だと思うんですが、おっしゃるとおり、次につながる選手がちょっと少ないという現状は確かにあるかなと思います。ただ場所を提供してあげればいいわけではなく、それを抜かなければいけないわけだから、たくましい時期……年齢的に出てこなければいけないのが少し足りなかったのかなという気はしました」

 田嶋氏は現在、リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を戦っているU-23日本代表の団長を務めている。同氏の目から見て、今のU-23日本代表はアジアの中でどのあたりに位置し、どの程度の危機感を持っているべきなのだろうか。

田嶋「今大会はセントラル方式なので、多くのチームの試合を見させていただきました。その意味で言えば、U-23日本代表はこれまでのところで言えば、4本の指に入るだろうな、というのが実感です。これからが勝負となり、イラン、イラクといった激しい相手に彼らがどれだけできるか。その意味では先ほど大住さんがおっしゃった『選手たちが伸びているな』という実感は今のチームにはあります。ですから次のイラン戦をどう戦うか、そこが本当に試される場になると思っています(結果は延長戦の末に3-0で日本が勝利)」

 代表強化について、原氏は国内リーグを充実させて選手層を厚くすることが強化への近道だと考えているようだ。

「いろいろな強化のやり方があると思うんですけど、たとえば高校からいい選手がJ1リーグ、J2リーグのチームに入っても、ほとんど出場機会がない。その部分を日本サッカー界全体として手を打たないと、(選手を)抱えているけれど試合に出せないという部分において、いくつかの手を打ちました。移籍ルールの緩和、U-22選抜のJ3参加、今年からは(Jクラブの)U-23の3チームがJ3に参加します。ここの年代を強化することが一番大事だと思います。特に感じるのは、日本の選手は18歳以降の成長が遅く、五輪代表ぐらいの年代になってようやくJ1、J2でレギュラーを取って主力になって伸びていく。他の国は、例えば韓国やイラク、イランはアンダー世代からみんな同じメンバーでずっとやっている。17歳で出てきたらそこからまた成長する。日本の場合はパイが広がっていろいろな選手がいて、監督の好みによっていろいろ選べます。そしてU-23くらいの年代からやっと成長していく。ちょっと遅いです。あと2年くらい早くできれば、もっと全体が伸びて海外にもあと1、2年は早く行けると思います。日常のレベルを上げていくために、Jクラブ、あるいは大学、高校と連携してやらなければならないのかなと思います」

 これに対し、田嶋氏はエリート教育が有効だと断言する。

田嶋「これまでに育ってきた選手、本田にしろ長谷部誠にしろ香川にしろ、長友佑都にしろ、大迫勇也にしろ、ヨーロッパに行ける選手は、高卒でもJ1で試合に出られているんです。J1で試合に出られる選手こそ、世界で通用する選手になれる。試合に出られるという環境を与えるのはもちろん大事だし、底上げももちろん大事です。そこを訂正するつもりはないし、クラブでの経験も非常に大事だと思う。でも、実際に一つのクラブでやっていると、天井効果で“お山の大将”になってしまう選手がいる。それならもっとうまい選手を集めて、うまい人同士でプレーさせる。海外に連れて行って、実際にクリスティアーノ・ロナウドと18歳の時に初めて試合をした選手は驚いていました。クラブで強化をする必要がないと言うわけではありません。それは当然のようにやらなければいけないですけど、やっぱりある特定の選手たちをレベルアップさせていくのは日本サッカー協会の役目だし、そこで勝ち続けて行くことが代表にもつながっていくと思います」

「田嶋さんは、代表を強化するためにはJリーグとの協力が必要だとおっしゃっています。具体的にどのように協力していくのかのアイデアがあれば教えてください」

田嶋「まず一つは年間5億円、それを4年間、サッカー協会から資金援助する。それはクラブの経験などに使われる気がします。Jリーグに一番いい選手が行っているということに対する我々の評価でもあり、そこに期待する表れでもある。これがまず一つですね」

 ここで大住氏が、田嶋氏に対して質問をぶつけていく。

大住「エリート教育は『早い段階から国際経験を積ませていこう』ということだと思いますが、2006年に始まったJFAアカデミーはスタートから10年経ちますが、なかなかJ1で活躍する選手が出てきていない現状があります。この状況については?」

田嶋「10年ということで、男子は一番上の世代で22歳。大学を卒業する年齢です。Jリーガーになっている選手はたくさんいます。U-20の代表選手は出ていますし、プロ契約している選手もいます。私もここ数年はアカデミーの現場から離れてしまっているので、私自身も同じ意見を持っていますが、必ずしもそれがマイナスだとは思っていません。ある意味、プロ選手がしっかりと育っていて、他のクラブと比較しても遜色ない部分はあると思います。ただ、本当にスーパーな選手を育てるということを忘れてはいけないし、それをもう一度、認識しなければいけない。逆に女子について言えば、それなりの成果が出ていると思っていますが、これはしっかりとした立て直しをしなければいけないとは思っています」

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 数日前、原氏は会長選挙のマニフェストに一部、修正を加え、その中に「代表スタッフとJリーグの育成を含めたスタッフとの交流」という項目を入れた。具体的にはどのようなことを目指しているのだろうか。

「例えば、今まで代表監督はどうしても客観的に選手を見るだけで、クラブとの交流であったり、クラブに練習メニューを見に行くことは少なかったですよね。ですけど、やはり『日本代表』と『Jクラブ』のどちらかだけが強ければいいというわけではない。海外に出ている選手も多いですが、国内のクラブが影響力を持たなければと思いますし、そこの垣根を取っ払っていきたい。特にフル代表のスタッフが、もっとJを見たり、Jのアカデミースタッフといろいろな議論する機会を増やしていく。それはできると思います。例えば長友や武藤嘉紀は、アンダー世代の代表にはあまり選ばれていません。長谷部にしたってアンダー世代からずっと入っていたわけではない。ただ、それがむしろ、日本の良さだと僕は思っていて、だからその種をたくさん撒いて、クラブレベルで海外経験や指導者がいろいろな経験をする機会を増やす。遠回りのようだけど、そうすることによっていろいろな場所から選手が出てきて、韓国やイラクやイランのような強化ができる。いろいろな選手が出てくるための取り組みをさらに進めていったほうがいいと思っています」

 原氏はさらに、トレセンの改革にも着手したい考えを持っているようだ。

「今、この立場で地方を回らせてもらって皆さんの意見を聞くと、トレセンの関係者の方たちは非常に一生懸命やられているのが分かる。ただ、皆さんに『どうですか?』と聞くと、『もう、疲れています』という意見が多いんですね。それは、リーグ戦を年間に何試合やらなければいけない、土日が今までは学校が休みだったのが、学校行事が入ってきて、なかなかリーグ戦が組めない。その間にトレセン活動をしなければならない。選手もそれに参加しないと次に選ばれなくなってしまう。だから行きたい。でも疲れている。それは地方の事情によっていろいろ異なるので、それこそ『プレーヤーズ・ファースト』で、指導者が選手のためにここは休ませたほうがいいと思えば休ませればいいし、リーグ戦の数も今までよりもある程度は緩和して、地域に合ったやり方を模索していたほうがいいというのが、各地域で意見を聞いてきた僕の感想です」

 北澤氏は選手としての経験、そして日本サッカー協会特任理事として各地を巡回した経験を踏まえ、このように語った。

北澤「選手にしてみればいろいろなチャンスがある。僕自身もアンダー世代で代表に入っていなかったですが、チャンスをもらえたのは地域にサッカーをやれる場があって、そこでしっかりやれたのが大きいと思います。それが今、話にあったように『疲れている』のは良くないことだと思うし、それを改善するために整理していくことは必要なのかなと思います。確かに僕も各地を回っていろいろな意見をいただきましたし、その現状を知ることが大事だと思います」

 また、原氏は2020年の東京五輪に向けて、現在のU-19日本代表を月に一度程度のペースで招集し、集中的な強化をするという方策も打ち出している。

「既存のリーグ戦はもちろん大事にしなければなりません。日常の練習、そしてリーグ戦はベースだと思っています。その中で月に一回程度であれば、幕張に新しくできるナショナルフットボールセンターに集まれるのではないかと。日曜日の試合が終わったら月曜日の昼までに集まってもらって、午後は練習。火曜日は午前、午後に練習をして、水曜日の午前中にJクラブとの練習試合や紅白戦をやるというスケジュールが組めるのではないか。もちろんリオ五輪最終予選やW杯予選も大事ですけど、2020年の東京五輪に向けては男子も女子もすぐにやっていかなければならないと思っています。長期間ではなく、3日間程度でいいので、月に一回は集めて、そこで協調させる。それが大事かなと思っています」

 一方の田嶋氏は、2020年東京五輪で結果を出さなければならない、という意見に同調しつつ、強化のためにはより長いスパンで成熟させる必要がある、という意見のようだ。

田嶋「私のマニフェストにある、秋春シーズン制への移行は、まさにそのためのものです。クラブで評価されるのは当然のことであり、誰も反対するものではない。月に一回集まって、それで評価できればいいですが、例えば今の手倉森誠監督のU-23日本代表を見ていると、やっぱり12月に10日間、石垣島でキャンプを張ってから、カタールに行ったことが大きかったなと。長期間、一緒に過ごすことは、日本人にとっては結構必要なことがあるんじゃないかと思っています。岡田ジャパンの時も、南アフリカW杯の前はかなりの日程を割いています。成熟したドイツやスペインも同じようなことをやっています。成熟したものを目指したり、長い目で見るという部分に関しては、原さんの意見に同調する部分もありますが、ある一定の中で成果を出さなければならないことを考えると、現状を考えると日本ではそういう部分が必要だろうと思います」

 U-17、U-20日本代表は近年、アジア予選を突破できていない状態が続いている。この点について、田嶋氏は「検証が必要」とマニフェストに掲げているが、進行役の潮氏はそんな田嶋氏に対して「今まで検証はしてこなかったのか」という質問を投げかけた。

田嶋「理事会でそのような質問があったのは事実です。U-20代表は4大会連続でアジア予選を突破できていない。その理由は検証すべきだと思うんですが、その上で、どのようなプランが必要なのか、どうすれば出られるようになるのかを考えなければならないですね」

 田嶋氏は、代表選手を輩出したチームやクラブへのインセンティブや支援についてもマニフェスト内で掲げている。

田嶋「U-12の少年団やクラブ、そこに対するコンペンセイション……育成資金は、今は支払われていません。FIFAのルールでは12歳から18歳までは支払うことになっています。僕が思うのは今、Jリーグに対して育成資金をもっと多く払えと言うのではなく、中学校、高校に払っているぶんを、6ではなく7で割ってほしい。自分のチームがJリーガーを出したということが、どれだけ誇りになるか。クラブが法人化していないのだったら、ボールを進呈する形でもいい。そういうことをちゃんとやっていってほしい。今、代表に初招集された選手が3枚のペナントをもらい、それを自分がお世話になった指導者に進呈する『ブルーペナント制』を実施しているんですが、僕も以前、ある選手からそのペナントをもらったことがあります。それは誇りですね。自分がかかわった選手が代表に入ったというのは。そういう部分をちゃんとやっていきたい。それからJリーグには今、年間5億円を僕らの期待を込めてお渡ししているわけですが、今、実際にJリーガーになる選手、代表になる選手を見ると、必ずしもそこから出るわけではない。高校や大学からも出ている。その意味では、来年度の予算はすでに決まっているので、今すぐにできるものではないですが、そこに対する何かコンペンセイションや、高校選抜や大学選抜に対しても、海外遠征などの刺激を与えてあげる必要がある。刺激しがいのある選手がいるんじゃないかという、そういう意味で(マニフェストに)書かせてもらっています」

 長年にわたって現場での取材を続けている大住氏は、U-20日本代表が4大会連続でアジア予選敗退を喫している現状を危惧した。

大住「U-20日本代表は、4大会連続でアジア予選の同じラウンド(ベスト8)で、同じような形で負けている。続いているのは非常にショックです。負けても次につながるものがあればいいんですけど、だけど、日本全国の指導者たちと一緒に『育てていきたい』と言って育成してきた選手を預かってあの結果というのは残念でならない。もっと協会を挙げて対策に乗り出さなければならないし、なぜ今ごろになって田嶋さんが『育成の立て直し』とおっしゃっているのか、理解に苦しむというか、もっと早い段階で手を打たなければならなかった。U-20の総括もありましたが、それが全然生かされていない。困った状態だと思います」

田嶋「U-20の強化には、ある程度、一緒にいる時間を作っていく必要があると思っています」

 ドイツはブンデスリーガの収益の3パーセント(100億円超)をドイツサッカー協会に渡している。一方で、協会からブンデスリーガに渡る金額は、W杯やユーロで得た賞金の半額や、代表チームのマーケティング収益の15~30パーセントなど、お互いに補完し合う、共倒れにならないシステムができ上がっている。原、田嶋両氏とも、Jリーグと代表は日本サッカーの両輪だという考えは共通しているようで、原氏はその重要性を次のように語った。

「リーグや代表の収入の大きな割合を占めるのは放映権だと思うんですが、それがプレミアリーグやブンデスリーガ、リーガ・エスパニョーラとは桁が違うわけです。Jクラブがもっと注目度を集めて、お客さんを集めてスポンサーがつかないと、数パーセントの額が大きく違ってきます。現在、入場料収入の3パーセントは5億円です。その5億円を我々はJリーグと協力して、女子に使ったり、育成に使ったりしてやってきているわけですね。そこのパイを増やさないといけない。今でいうと、日本代表の視聴率は高いけど、Jリーグの視聴率はなかなか上がらない。それを両方上げていかないと。代表が勝てなくなると、Jリーグも大変なことになってしまう。自分も長い間Jリーグで監督をやってきたので、だからこそJリーグでの日常を大事にして、日本のサッカー界がもっと成長して、スペインやドイツやイングランドのように、毎日いろいろな場所でサッカーの話をしているようにならないと。代表の時だけ盛り上がりましたではなくて……なでしこジャパンは盛り上がっているけど、なでしこリーグは集客が少ないですという状況では無理なんですよ。それをどうやって一緒に上げていくかを考えると、協会と各種連盟が一緒にやっていかなければならない。遠回りのように見えるんですけど、それしかないんですよ。どっちかだけ強くしてもダメ。Jリーグが栄えないと大変なことになる。Jクラブが53クラブに増えて、育成もやって地域にも貢献する、その両方を今こそやっていくことが大事なんじゃないかと思っています」

 2015シーズンに2シーズン制へと移行したJリーグ。現在、秋春シーズン制への移行の是非が大きな議論を巻き起こしている。この点について、まずは北澤氏がマイクを取った。

北澤「どちらにしてもいいかな、という思いはありますね。特別どちらがいい、という考えは、僕の中ではまだないですね」

潮氏は「どっちが正解、という問題ではなく、どちらを選択するか、どちらのメリットを取るか、というところだと思う」と自身の見解を述べつつ、田嶋氏に対して「そろそろ決断を下してもいいのではないか」と問いかける。

田嶋「シーズン制の移行は今回の選挙のために作った公約ではなく、私は10数年前から、ヨーロッパに合わせるべきだと言っています。その理由は、ヨーロッパへの移籍がスムーズになること。もう一つは、FIFAが2024年までのインターナショナルマッチデーのカレンダーを出したんですが、そこでは2022年のカタールW杯は11月、12月に開催することが決まっている。でもそれ以外の年は、今と同じように9月、10月、11月は必ず2試合ずつインターナショナルマッチデーが入る。つまり今のJリーグのスケジュールだと、終盤が代表の試合でぶつ切りになってしまう。逆に4月、5月にはインターナショナルマッチデーは一切入ってきません。もしかしたら、W杯が入ってこなければ6月までできるかもしれない。そうすると、実際には盛り上がるところがJクラブにはACLやヤマザキナビスコカップとかいろいろ入ってくるかもしれない。でも、それはクラスの中で解決できる問題になる。それから、降雪地帯の問題はちゃんと考えていかなければならない。今、私が提案しているのは、2018年にファーストステージとセカンドステージ、そして2019年前半にサードステージとプレーオフをやって、2019年から秋春シーズン制に移行すること。そうすればシーズン移行はスムーズにできると思っています。降雪地帯の問題はJリーグだけじゃなく、JFLや地域リーグとも考えていかなければならないし、1月と2月にやらないのは、今の日程と変わらない形で提案しています。でも皆さん、実際に今シーズン、FC東京は2月9日に試合があるんですよ。ここに北国のチームが来てもおかしくないわけです。そう考えると、どこかで降雪地帯のことを考えなければ移行すべきであり、早く決断したほうが行政が動きやすいし、インフラ整備もしやすいと考えています。それと、やはり東京五輪の問題。今年もリオ五輪の出場権を獲得すると、代表選手たちが6月、7月で6~7試合出られなくなります。東京五輪への強化を考えると、18年から19年のところで7月に少し強化ができる。2020年もJリーグのシーズン期間中ではなく、オフの間に五輪ができる。今まで1月は休ませなければならず、1月後半から2月はチーム作りの一番大事な時期。だから強化できないと言われていた期間に強化できるメリットがある。そして、早いうちからインフラ整備を進めていけば、将来もしかしたら1月や2月に降雪地帯で試合ができるかもしれない。これはもちろんJリーグのガバナンスに則って理事会、総会で決めていただくことです。でも、今まで何度も何度も話し合ってきて、前回の理事会では決まりそうだったんですけど、カタールW杯の開催時期がズレそうだということで立ち消えになった。そういうことを考えると、もちろんやらないという選択肢もあると思いますが、どこかで決断したほうが、インフラ整備のためにも、お互いの準備のためにも、やりやすいんじゃないのかということでの提案です」

 シーズン移行はACLなど国外のカレンダー、そして日本の学校制度など、あらゆるスケジュールとの調整が求められる。

田嶋「ACLについて言うと、西側の国は『シーズンを変えてくれ』と言っていますが、ここはもう18年まで変わらない。そう考えると、そこを変えたほうがいいのかも含めてJの判断を考えていかなければならない。そこのガバナンスに則って、JリーグもJリーグだけではなく、協会や様々な学校との卒業のタイミング、ACLをどう変えていくのかという議論をした上で、決めていかなければならない。ただ、そろそろその議論を経た上で、決断を下してもいいのではないかと思っています」

 田嶋氏が移行推進派であるのに対し、原氏はやや慎重な姿勢を見せている。

「シーズン移行は将来構想委員会などで常に検討しながらやっているんですが、メリットとすれば(リーグ戦が佳境になる)4月、5月に代表の試合がないこと。これは間違いない。ですけど一方で問題になっているのは、AFCのカレンダーが決まらないことなんですよ。FIFAは決まっている。11月にインターナショナルマッチデーがありますが、今年で言えば週末2回をACL決勝のホーム&アウェーで使うわけです。そうしたらここ1カ月間、ほぼリーグ戦がないんですよ。これでいいカレンダーができるわけがない。だからまずはAFCもしっかりしてもらって、例えばACLも決勝は1試合にするとか、アジアでどうするかも考えなければならない。シーズン移行を検討していないわけではないです。Jリーグの人たちと本当に一生懸命議論して、それで1月、2月よりも、やっぱり12月にやれる環境をまず作ろうと。それでチャンピオンシップとかクラブW杯が来たりして、いろいろな要素を入れても12月をやれる環境を整える、あとはチャンピオンシップとか天皇杯とかを入れて、1月にもやれる環境を整える。12月にリーグ戦をやれるようにして、その時々でズラせばいけますよねという話を我々はしています。だから検討していないことはないです。何度も何度も検討している間にAFCのカレンダーが変わったり決まらなかったり、その中でやっているのが現状なので、議論しないということは全くないです。でも、4月、5月は全くないと言いながら、前回もACLの日程が変わると言っていたんですけど、変わっていないんですよ。で、もし変わらないままで4月、5月に行ったら、ACLが3月、4月、5月に入るわけですから、それをどのように考えるかと言ったら、シーズン終盤にファーストラウンドが入る。これは大変ですよ。しかも日本で一番気候がいいゴールデンウイークが使えない。それと、検討した中で一番の問題は、今はホームグラウンドが自前じゃないわけですよね。自治体との交渉は12月までしかできない。次の年にJ1にいるかJ2にいるのか分からないカレンダーを決めなければならない。今は12月に翌年分がほぼ決まっていて、3月から12月までの場所を取るわけですが、それを次の年になった時に押さえられないんですよ。そういった具体的な検討もJリーグの人たちとはしていて、リーグ戦で12月が使えるようにならないといけないよね、(シーズン移行は)その次のステップだよね、という中で今、議論しているのが正直なところです」

 では、12月を使えるようにするためには、具体的にはどのようなことをしなければならないのだろうか。

「やっぱり北国の人たちに聞くと、試合会場よりも練習できる環境。結局、天皇杯でモンテディオ山形が勝ち上がった時は雪が少ないから良かったんですけど、12月は北国のクラブは準備期間はずっと県外に出ていた。その期間に練習できる環境を、Jリーグや協会が何とか作らないと。結局、練習ができないわけですから、試合の時だけ何とかなったとしてもダメで、練習環境を何とかしなければならない。それをやはりドーム型の練習場とか、それは我々がJリーグと一緒になって、いろいろなことを検討してやっているのは事実です」

田嶋「ただ、12月を最後にすると、実際に昨年はアルビレックス新潟と柏レイソルの試合が降雪で延期になったわけです。シーズン最後のところでそのようなリスクがあるのは、リーグとしては厳しい状況だと思っています。たまたまあの2チームは入れ替え戦にも上位にもほとんど関係なかったので、翌日にカシマサッカースタジアムで試合をして事なきを得ましたが、あの時期にはなおさらやらないほうがいいんじゃないか。シーズンをずらせば、11月、12月、1月にもし雪が降っても、それは4月や5月の予備日に動かすことができる。それからAFCの日程が決まらないのは、本当にそのとおりです。自分もイライラしています。でも、11月にホーム&アウェーが入るというのは決まっていますよね。そうすると、そこはもう使えなくなる。これはもちろん早く決まれば違った対処もできますが、ここはもう決まってきているということを考えるとすれば、実際にそれが埋まるんだったら、他の案を考えなければならない。だからこのシーズン移行を提案しています」

 田嶋氏と原氏による議論の続きはこちらに掲載しています。