インタビュー・文・写真=ユーロプラスインターナショナル
ラファエル・ベラスコ氏は昨年も来日し、フィジカルトレーニングの講習会を実施している。来日に先駆けて、日本とスペインのフィジカルトレーニングについての見識の違いや各年代で必要とされるフィジカルトレーニングなどについて話を聞いた。
プランニングが成功への鍵となる
――ラファエルさんは、昨年も来日していますが日本人の考えるトレーニングと違いはありましたか?
ラファエル・ベラスコ氏(以下、RV) 残念ながら昨年は日本のチームをじっくりと時間を取ってすべての練習を視察することはできませんでしたが、私は基礎技術の練習方法と指導者と選手の関係について、スペインと日本では異なるように感じました。まずは基礎技術の練習については、スペインでも基礎技術の練習を行いますが、あくまでもグループで行うことが多いです。指導者と選手の関係については、良い悪いは別として、指導者から選手に対しての厳しさはスペインよりも日本の方があるように思います。
――では、フィジカルトレーニングについて、現在スペインで主流となっているトレーニング方法とはどのようなものがありますか?
RV 先ほど言ったグループトレーニングやボールを使用してのフィジカルトレーニングを軸としているのはもちろんですが、その中でも近年ではスペースを限定したトレーニングが多く行われています。セッション中に限られたスペースでも様々な動きに適応し、試合を想定しながらチーム戦術にも直接的に関連するトレーニングを多く実施しています。常に実戦に対応できるようなトレーニングメニューになってきているのは、戦術や技術のトレーニングだけでなく、フィジカルトレーニングについても同様です。
――なるほど。それは、育成年代から実施されているのですか? また、育成年代のフィジカルトレーニングにおいて特に大事なことはありますか?
RV そうですね。育成年代から実施することで自然と身についていくので重要視されるようになってきました。育成年代の選手たちは精神的に敏感な時期ですので、まずは心理面も考慮しながら、しっかりと構成されたトレーニングをしなければいけません。トレーニング内容としては、体に負荷をかける一般的なダイナミックトレーニング、運動神経を向上させるといわれるコーディネショントレーニングの両方が必要不可欠です。
――ちなみにフィジカルトレーニングにおいて、幼少期・青年期・成人期でそれぞれ大事なことは何でしょうか?
RV もちろん個人によって必要とされるトレーニングは変わりますが、幼少期は、自分自身が持つ体の力に対しての持久系のトレーニングですね。自分自身の疲労をコントロールすることが目的です。青年期は、幼少期のときよりも負荷をあげながらも、筋力や力の最大値の向上は求めず、持久力の向上を目指すことが大事です。成人期に、全てのパワートレーニングや持久トレーニングが必要となり、最大値の向上も目的となります。同時に選手として、コンディションの維持や怪我の予防としてのトレーニングが必要とされます。けがの回避をはじめとして、コンディションの維持をしながら最高のパフォーマンスの向上を目指すことが大事です。
――ラファエル氏が考える「フィジカルが優れている選手」とはどのような選手ですか?
RV 全ての試合において最大限のパフォーマンスを引き出せる選手です。そして、試合の中で判断をしなければいけない時に、体がきちんと正しい判断を下す成功率が高い選手です。
――では最後に、今回は日本で開催されるフィジカルトレーニングの講習を通じてどのようなことを伝えたいですか?
RV フィジカルトレーニングにおいては、トレーニングのプランニングが成功へのカギであるということです。プランニングすることができれば、自身やチームのトレーニングに適応し、正しく活かしていくこともできるでしょう。サッカーがチームスポーツである以上、チームの中で個人は重視しません。ただし、個々の能力の向上がなければグループとしての向上も難しいのです。その答えを講習会でお伝えできればと思います。
【ラファエル・ベラスコ プロフィール】
スペイン国籍
■主なライセンス
コーチライセンスレベル3(日本のS級ライセンス相当)取得
INEF(フィジカルトレーナー資格)
■主な経歴
Real Madridインターナショナルアカデミー監督
Real Madridサマーキャンプコーチ(イタリア)
C.D Cobenaフィジカルコーチ
A.D Alcobendas Sportsフィジカルコーチ
Atletico de Madrid B.Cフィジカルコーチ
By サッカーキング編集部
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