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AFCフットサルクラブ選手権 敗戦からつかみとったもの

2012.07.19
 クウェートで行われたAFC フットサルクラブ選手権2012。日本代表として出場した名古屋オーシャンズは準決勝でイランのSanaye Giti Pasandに敗れ、2大会連続のアジアチャンピオンとはならなかった。アジアの地で、彼らが得たものとは。
 

[写真]=futsalgraphic L.L.C [文]=軍記ひろし
 
 優勝候補筆頭のGitiとの対戦は決勝まで避けたいところであったのだが、予選で1敗したことで名古屋オーシャンズは2位通過となり、準決勝でこの強豪と戦うことになってしまった。
 
 さらに、ここまでチームを引っ張ってきた経験豊かな木暮賢一郎が予選最終戦で負傷しベンチ外。ピヴォの渡邉知晃も開始数分で離脱と、もはや2セットすら組めない状況に陥った。選手層の厚い名古屋が、ここまで手負いの状態で試合をする状況は久しく見ていない。
 
 時間が過ぎるにつれて消耗も激しくなり、Giti Pasandの圧力を跳ね返せなくなる。そうした状況の中でもよく戦ったともいえるが、問題はそこではなかったように思う。
 
 やはり最大の要因として、Fリーグとのレギュレーションの違いを挙げねばなるまい。Fリーグでは外国籍選手をベンチに4名、そしてピッチ上では2名までの同時起用が可能だ。名古屋オーシャンズはこのレギュレーションをフルに生かしてFリーグを戦っている。そしてこの戦い方でFリーグを制し、今大会の出場権を獲得したわけだ。しかし今大会は外国籍選手をベンチに1名しか入れられないというレギュレーションだった。
 
 Fリーグチャンピオンとしてこの大会に挑んではいるが、チャンピオンになったチームとはまるで別のチームで戦わざるを得なかった。
 
 もちろんすべての参加チームにとっても条件は同じなのだが、国内リーグ戦を外国籍選手ピッチ1名で戦っているチームと、2名で戦っているチームでは影響の出方が違う。
 
 Fリーグで不動のものとしている圧倒的な攻撃力も、アジアの強豪国の前では発揮することができなかった。名古屋オーシャンズにとっては、外国籍選手ベンチ2名が、ギリギリ対応できるレギュレーションだったろう。早くアジア統一ルールが作られなければ、名古屋オーシャンズに限らず、どこかのチームにとってフェアじゃない大会となってしまう。
 
 ただし、そうした苦しい事情だからこそチャンスが巡って来た選手もいる。北嶋佑一もその一人だ。準決勝でのGiti Pasand戦終了後、北嶋はピッチで泣き崩れた。今大会ここまで一度も出番がなかったのはおろか、Fリーグのピッチにも立ったことのない選手が、アジア王者を決める準決勝という大舞台で出場のチャンスを得た。そして、3失点に絡むという苦いデビュー戦となったのだ。
 
 泣き崩れる北嶋の姿は、今大会で一番印象に残った場面だ。
「悔しい、悔しい、悔しい」「自分のせいで、自分のせいで……」
 現状の自分の力ではどうすることもできなかった。しかし、もっとうまくなりたい。そんな涙であった。
 
 もう一人、いつまでもピッチに座り込んだまま立ち上がらなかった選手がいた。吉川智己だ。彼は今季からの加入でありながら、今大会の予選からフル稼働で活躍していた。今の名古屋オーシャンズには欠かすことができなくなっている選手だ。初めての国際大会、その洗礼を受けた。涙こそ見せなかったが、抜け殻の様な佇まいが印象的だった。
 
 北嶋と吉川は、ともに22歳。悔しさを心に、体に刻んだ。その感覚が、彼らをより一層成長させてくれるであろう。そしてその感覚を得ることのできた選手が、また新たに現れたという事実が、日本にとって、そしてFリーグにとって財産になっていく。
 
 フットサルにおいて、真剣勝負の国際大会の機会というのはとても少ない。敗戦からつかみとるものは何か。貴重な感覚を与えてくれる場所であるというのが、この大会の一番の意味かもしれない。
 

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