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【スペシャルコラム】30周年を迎えたMORELIAが愛され続ける秘密

2015.01.31

試行錯誤を重ね、1985年にデビュー

 1985年の誕生から30周年を迎え、さらなる進化を遂げたフットボールシューズ、MORELIA。長年にわたって世界中のプレーヤーに愛され続けている理由は、一体どこにあるのか。今回は名スパイクが歩んできたヒストリーを紐解きつつ、革新的なリニューアルを遂げたMORELIA II、そして熟練のクラフトマンシップに焦点を当て、ミズノが誇るロングセラースパイクの魅力を解き明かしていく。

 まずは、MORELIAの歴史を振り返ろう。1985年に産声を上げたMORELIAだが、開発にあたっては当然ながら試行錯誤が繰り返されていた。当時の開発担当、安井敏恭は、『日本人の足に合うスパイク』を追求。そのヒントを得るため、単身ブラジルへ渡った彼は、体格やプレースタイルにおいて日本人と共通点の多いブラジル人選手やホペイロ(用具係)に理想のスパイク像を聞いて回った。

 そうして導き出した答えが、現在もMORELIAの不変のコンセプトとなっている「軽量・柔軟・素足感覚」である。多くのプレーヤーの声に耳を傾けた結果、『スーツのポケットに入れて持ち歩けるようなスパイク』を目指した。開発からおよそ3年。ついに完成したMORELIAは、当時としては超軽量の245グラム(片方26.0cm)を実現した。


1985年にデビューした初代MORELIA(左) 1991年に発売されたMORELIA II(右)

 発売以降、徐々に日本人プレーヤーに浸透していったMORELIAは、ほどなくして海外の選手からも高い評価を獲得。当時のブラジル代表FWカレカとサプライヤー契約を結び、彼はMORELIAとともに1986年のワールドカップ・メキシコ大会を戦う。その4年後の1990年、ワールドカップ・イタリア大会では、ブラジル代表選手22名のうち、実に15名がMORELIAを着用して大会に臨むほどMORELIAの「軽量・柔軟・素足感覚」は世界、とりわけブラジル人選手から絶大な信頼を寄せられるようになった。

 1991年には、素足感覚のフィット感をさらに高めたMORELIA IIが登場。日本サッカー界、新時代の幕開けとなった1993年のJリーグ開幕時においても、多くのJリーガーがMORELIAを選ぶなど、発売から8年を経てMORELIAはフットボールシューズとして確固たる地位を築き上げた。

 その後、テクノロジーの進化とともにMORELIAも進化していく。2003年に高機能モデルのMORELIA WAVEが、2011年に徹底的に軽量化を追求したMORELIA NEOがデビュー。多様化する現代サッカーのニーズに合わせ、MORELIAはマイナーチェンジを遂げていった。そして迎えた2015年、MORELIA IIは30周年という節目に、これまでにない革新的なリニューアルを遂げた。

革新的なリニューアルを遂げたMORELIA II

 リニューアルを果たしたMORELIA II、最大の改良点は「軽量化」である。アウトソールを改良したことで、45グラムもの軽量化に成功(片方27.0cm)。剛性を担保しつつ最新の技術で薄肉設計を施したことで、ソールは水にも浮く軽さを実現した。
 
 では、軽量化を遂げたことは、具体的にプレーにどのような影響を及ぼすのか。長年、MORELIAを愛用する川崎フロンターレの中村憲剛は次のように期待を語っている。「スパイクは軽ければ軽いほどいい。より素足感覚でプレーできるはずですし、それがいいプレーにつながっていく」。同じく川崎フロンターレのMF、大島僚太も「これほど軽いと雨の日でも重さを感じずにプレーできます」と先輩の声に同調している。

 もちろん、MORELIA最大の魅力と言える、抜群のフィット感は全く損なわれていない。それどころか、フィット感も向上していることが今回のリニューアルの大きなポイントの一つだろう。伸びやすいアッパーのつま先部分の裏側に補強材を導入。足を包み込むような感覚がさらに高められている。加えて、これまではフラット設計だったアウトソールを、足裏にフィットするよう前後左右のラウンド形状へと改良。プレー中に強く踏み込んだ際も、しっかり足裏がホールドされている感覚を味わえる。

 また、アウトソールは人工芝でのプレーにも対応するなど、MORELIA IIはその活躍の場をさらに広げることになった。

 このように開発者たちによる渾身のテクノロジーが結集したMORELIA IIは、「軽量・柔軟・素足感覚」がさらに進化。“30年目の革新”を遂げている。

中村憲剛
MORELIAの魅力を語る川崎Fの中村憲剛

MORELIAの人気を支える、モノづくりへの情熱

 最後に、プレーヤーの心をつかんで離さないMORELIAのこだわり、クラフトマンシップ(職人の技能)に焦点を当てよう。1985年のデビューから一貫してMORELIAは“純国産ブランド”として知られ、日本の職人が一足一足、丁寧に、一切の妥協なく、MORELIAをつくり続けている。このモノづくりに注がれる情熱こそが、MORELIAが愛され続けている最大の理由と言っても過言ではない。

 では、どのようなこだわりをもってMORELIAは世に送り出されているのか。具体的な製造工程を抜粋して紹介しよう。

 まず始めにアッパーに使用するカンガルー革が選定されるが、一枚一枚、微細なチェックを経て上質なものだけが選ばれる。次に型抜きをし、縫製したアッパーをラスト(靴型)に合うよう引っ張り、固定する。このラスティングと呼ばれる工程では、その日の気温や湿度に合わせて、革の伸び具合を予想し、その都度、機械の設定も微調整される。熟練の職人の経験が生かされる工程だ。

 その後、ソールの成形&接着、圧着を行う。この工程においても、MORELIAならではの創意工夫に満ちている。MORELIAはアッパーとソールを別々に作って合体させる圧着式を採用。圧着に使用する型は、圧着テストを何度も行ってたどり着いたMORELIA II専用の型となっている。


圧着はMORELIA II専用の機械で行う(左) 最後の仕上げ。磨き材で丁寧にクリーニング(右)

 圧着の終わったシューズは、ラックに乗せて24時間かけて自然乾燥させる。一般的には乾燥させずにラストをすぐに抜き取ってしまうが、ラストを抜かずにおくことで革がラストの形に馴染み、使い始めてから型崩れしにくくなるという。

 乾燥が終わると最後の仕上げ作業を行う。シューレースを通し、手作業で磨きをかける。磨き材は汚れの度合いに応じて3種類を使い分け、一足一足、丁寧に確実にクリーニングする。この段階で厳しく検品されるが、廃棄となるシューズは皆無というほど精度の高い製品がそろう。まさに職人技だ。なお、日本の工場では約20人が製造ラインに入りMORELIA IIを仕上げているが、他の製品であれば製造ラインの人数は200~300人。MORELIA IIの生産効率は通常の6分の1~7分の1程度だという。

 熟練の職人が手を入れ、多くのこだわりを込めたものだけが完成へと至るMORELIA II。その品質の高さこそが、30年の伝統を育み、世界中のプレーヤーに愛され続けている秘訣である。

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