サッカーゲームキングジャック6月号
2014.12.07

日本サッカーにとって他人事ではなくなった八百長疑惑の経緯/小澤一郎が説くスペインの現在

La Liga Match-Fixing Probe
八百長疑惑についてコメントを求められる元スペイン代表のレバンテDFフアンフラン [写真]=Getty Images

「辞任勧告」など様々な憶測が飛び交う日本代表ハビエル・アギーレ監督の周辺だが、改めてスペインで「起訴間近」と言われる八百長疑惑の経緯と現状についてまとめてみたい。

 現在、八百長が疑われスペインの検察庁反汚職課が立件に向けて動いているのが2010-11シーズンの最終節、5月21日に行われたレバンテ対サラゴサの試合だ。当時の両チームの状態はレバンテがすでに残留決定、サラゴサが残留争い中だった。結果は1-2でサラゴサの勝利。残留争いのライバルであるデポルティボがバレンシアに敗れたことでアギーレ監督率いるサラゴサは1部残留を決定した。

 3年以上も前の試合について調査が行われているのは2つの大きなバックグラウンドがある。1つがリーガ・エスパニョーラを管轄するプロサッカー協会(LFP)が八百長を徹底排除したクリーンな運営環境作りに大きく舵を切ったこと。もう1つが2010年6月にあったスペイン国内の刑法改正だ。この改正によりこれまで刑罰の規定がなかった「スポーツ詐欺」に6カ月から4年の禁固刑が付き、法整備が整った。

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当時レバンテにレンタル移籍していたウルグアイ代表FWストゥアニ [写真]=Getty Images

 こうした背景から検察庁が長期間の捜査に入り、選手個人の口座や携帯電話の通話記録などを調べあげ、ある程度の確証を得た段階で10月2日と3日に今回の問題に関係したと見られる関係者を任意の事情聴取として召喚した。首謀者と見られているのがサラゴサの前会長であるアガピト・イグレシアス氏だ。

 最終節が消化試合となるレバンテの選手十数名にコンタクトを取り、約120万ユーロを用意してまずは「勝利ボーナス」の名目としてサラゴサの選手10名に8.5万ユーロから9万ユーロを入金した。すると選手たちは入金直後からそれと同額を自身の口座から現金で引き出し、クラブに返納したということがスペインの報道ではなされている。

 検察側はその名目上の「勝利ボーナス」がサラゴサの選手を経由して最終的にレバンテの選手側に手渡しされた、つまり八百長があったのではないかというストーリーを描いて捜査を続けている。スペイン国内の報道によれば、実際にレバンテの選手の中には出処不明のお金で高級車を購入した者もいるという。

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事情聴取のため出廷する当時レバンテ所属のベティスMFシャビ・トーレス [写真]=Getty Images

 実際、10月2日の事情聴取に応じた当時サラゴサのMFガビ(現アトレティコ・マドリード)はクラブから8.5万ユーロの入金があったことを認め、「そのお金がどうなったのかは全く知らない。当時クラブは、破産法適用に向けて動いているのでそうした目的に使われるのかと想像していた」と説明している。

 10月初めの事情聴取を受けて検察側は近日中にも起訴する見込み。裁判は長引くと予想されるが最大の禁固刑が4年、執行猶予が6年あるスペインの刑法で八百長が認められるとすれば、日本代表監督を務めるアギーレ監督の職務続行も危ぶまれる。現時点で憶測や予想のコメントはできないが、間近に迫ったスペイン検察庁の起訴の動きとその後の展開を待ちたい。


小澤一郎(おざわ・いちろう)。1977年9月1日生まれ。京都府出身。早稲田大学卒業後、社会人経験を経て2004年にスペイン移住。バレンシアCFのリポートを中心としたブログが話題となり、サッカージャーナリスト活動を開始する。2010年に帰国後は、日本とスペインでの指導経験から「育成」を主軸にしつつ、指導者目線の戦術論やインタビューを得意としている。多くの媒体で執筆活動を行いテレビなどの各メディア、セミナーやイベントでのトークもこなす。著書に、「スペインサッカーの神髄」(サッカー小僧新書)、「FCバルセロナ史上最強の理由(共著)」(洋泉社)、「サッカー選手の正しい売り方」(カンゼン)、「サッカー日本代表の育て方」(朝日新聞出版)、「レアルマドリード モウリーニョの戦術分析 オフェンス編・ディフェンス編」(スタジオタッククリエイティブ)等。

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