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表面化したバルセロナサポーターのフロントへの不満/スペイン現地コラム

2014.11.28

<<enter caption here>> at Ciutat Esportiva on July 25, 2014 in Barcelona, Spain.

FC Barcelona v Sevilla FC - La Liga
[写真]=Getty Images

 リオネル・メッシにとって、記念すべき1週間となった。11月22日に行われたリーガ・エスパニョーラ第12節セビージャ戦でハットトリックを達成し、リーガ最多得点記録を半世紀ぶりに更新した。1940年代から50年代にアスレティック・ビルバオで活躍したテルモ・サラのリーガ通算251ゴールを抜き、メッシが253得点でリーガ歴代最多得点者となった。

 リーガ最多得点記録を更新したメッシは11月25日のチャンピオンズリーグ、アポエル戦でもハットトリックを達成。元レアル・マドリードのキャプテン、ラウール・ゴンザレスが持つ同大会最多得点記録71ゴールを更新し、通算得点数を74に伸ばした。

 メッシの2試合連続ハットトリックによる記録更新。この2ゲームはピッチで笑顔を見せるなど「メッシがプレーする喜びを取り戻した」とバルセロニスタを安堵させるものだった。というのも、アルゼンチン代表活動時にアルゼンチン紙『オーレ』のインタビューで、将来的にバルセロナの退団する可能性があることを示唆したからだ。普段メッシはメディアに語らない。その彼が退団の可能性をメディアで口にしたのだから、多くの人が驚いた。

FC Barcelona v Sevilla FC - La Liga
[写真]=Getty Images

 しかし、バルセロナのユニフォームを着て、ハットトリックし、記録更新を笑顔で喜ぶメッシを見て、世間はすっかりそんな彼のコメントを忘れてしまったようだ。低調だったチームが復調していることも取り上げられていない。12節は今シーズン好調のセビージャ相手にホームとはいえ5点を決めて、大勝したのだ。“クラシコ”敗戦後のダメージは少しずつ取り払われており、ルイス・エンリケのプレスルームでの姿勢も少しは柔和になったと地元ラジオは伝えていた。

 チームが上向く中、それと逆行するようにクラブの会長、役員への風当たりは日増し強くなっている。セビージャ戦後にメッシの記録更新を称えるビデオがカンプ・ノウに流された。そのビデオにはシャビ、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケツ、ルイス・エンリケらと共にジョゼップ・マリア・バルトメウ会長、スポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタのインタビューがおさめられていた。会長とスポーツディレクターが画面に登場するとカンプ・ノウに大きなブーイングが起こった。多くのソシオがクラブの現フロントに抱えている不満を示した。

FC Barcelona Training Session
[写真]=Getty Images

 バルトメウはサンドロ・ロセイが辞任した後に、会長選を行っていないことがソシオの反感を買っている。ソシオは4年前にサンドロ・ロセイを会長に選んだのであって、副会長のバルトメウを選んだわけではない。またネイマールの移籍が裁判になるなど現フロントの仕事ぶりに辟易している。

 サンドロ・ロセイがスポーツディクレターとして連れて来たスビサレッタへの批評は特に大きい。移籍市場での動きがあまりにもお粗末だからだ。今シーズンの獲得した選手を見れば、一目瞭然だ。

 アーセナルから1900万ユーロ(約28億円)で獲得したヴェルマーレンは負傷のため、まだ公式戦には1度も出場していない。それどころか、ベンチ入りもしていない。最近は手術の可能性もあると報じられ、手術すれば復帰までにさらに5ヵ月かかるという。つまりバルセロナは大枚を叩いて、今シーズン1試合も出場できない選手を買ったことになる。

 もうひとりのセンターバックも高い買い物だった。10月で31歳になったマテューを2000万ユーロ(約29億円)で補強。1年前の夏に買っていれば、900万ユーロ(約13億円)で済んだが、みすみすそのチャンスを逃し、今シーズンになってから購入した。バレンシアはフランス人の移籍で手にした2000万ユーロで26歳のアルゼンチン代表ニコラス・オタメンディ(1200万ユーロ)と22歳のドイツ代表のシュコドラン・ムスタフィ(800万ユーロ)を補強。今シーズンはリーガ屈指のディフェンス陣を築き上げている。バレンシアの地元紙は「私たちは賢い買い物をした」とバルセロナを笑った。

 ブラジル人サイドバックのドウグラスは今シーズン公式戦1試合にしか出場していない。すでに冬の移籍市場で放出されるのではないかと言われている。彼の移籍金は400万ユーロだったが、クラブは実際に獲得するために1200万ユーロを払ったと言われており、スビサレッタの右腕と称されるスタッフが横領した疑いがあると報道された。

FC Barcelona Unveil New Signing Jeremy Mathieu
[写真]=Getty Images

 スビサレッタへの批評は続く。

 元バルセロナのスカウトだったボージャン・クルキッチ(現ストーク)の父親の告白だ。2011年にティボー・クルトワ(現チェルシー)、ラファエル・ヴァラン(現レアル・マドリード)を獲得できるチャンスがあったにも関わらず、スビサレッタがその情報を重要視せずに実現しなかったという。

 今週、スペイン紙『マルカ』でレアル・マドリードがマジョルカの18歳有望株マルコ・アセンシオと契約を結んだと報じた。移籍金は350万ユーロ(約5億円)だった。バルセロナはシーズン前にこの選手についてマジョルカと交渉していたが、あいまいな対応で契約には至らなかった。そして、その間にレアル・マドリードにさらわれてしまった。

 2010年の夏にバルセロナにやって来たスビサレッタの失態はそれ以外にも挙げればきりがない。今シーズン、レアル・マドリードで活躍するドイツ代表MFトニ・クロースも最初にバルセロナに接触があったようだが、契約しなかった。クラブ史上最高のゴールキーパー、ビクトル・バルデスを引き留められなかった。2012年にアレクサンドル・ソングと契約したが、明らかな失敗だった。レアル・マドリードに所属する前にドイツ代表のメスト・エジルを獲得できるチャンスがあったが、その機会もふいにしていた。

 僕の周りにいるクレは事あるごとに「スビサレッタ、あいつは天才だ」と皮肉を言っていたが、そんなバルセロニスタの不満がついにカンプ・ノウやメディア上でも表面化し始めている。

 ただでさえ、立場が苦しいバルトメウ会長。ソシオの投票で選ばれるがゆえに、バルセロナの会長の振る舞いは政治家のそれと酷似している。それゆえにバルトメウは来シーズンを前にトカゲのしっぽ切りだとはわかっていながらも、スビサレッタをスポーツディレクターから外し、ソシオの鎮静化を少しでも図る可能性は大いにあるだろう。

座間健司(ざま・けんじ)。1980年生まれ。東京都出身。2002年、大学在学中からアルバイトとして『フットサルマガジン ピヴォ!』編集部に入社。2004年夏に渡西し、スペインを中心に世界のフットサルを追っている。フットボールは2008-09シーズンからビジャレアルのソシオとなり、定期的に試合観戦をしている。2012年よりフットサル、フットボールを中心にフリーライター&フォトグラファーとして活動を始める。
ブログはこちら(http://blog.zamakenji.com)。twitterアカウントは『@KenjiZama

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