2014.08.25

『U-12ワールドチャレンジ』主催の浜田満氏「選手も指導者も世界を感じてほしい」

サッカーキング編集部

 8月28日(木)から31日(日)にかけて、「U-12 ジュニアサッカー ワールドチャレンジ2014」が東京都のヴェルディグラウンドおよび味の素フィールド西が丘で開催される。

 前年に続き、2回目となる同大会。昨年度はバルセロナの下部組織でプレーする久保建英くんが凱旋帰国となったこともあり、大きな話題を呼んだ。今回も海外からは欧州ビッグクラブのバルセロナとミランに加え、インドネシアのアシオップ・アパチンティが参戦。また、大会規模が拡大し、Jリーグ下部組織とともに、日本の街クラブが初の参加を果たす。

 開催を控えサッカーキングでは、同大会の主催者であり、現在バルセロナの下部組織に所属する久保建英くんの挑戦をサポートするなどしている株式会社Amazing Sports Lab Japan代表取締役の浜田満さんに話をうかがい、大会の意義や育成、今後の展望について聞いた。

この年代でも子供たちが輝ける場所をどんどん作ってあげたい

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昨年の大会で優勝したバルセロナ(左は主催者の浜田氏) [写真]=瀬藤尚美

●インタビュー=小松春生

――「U-12 ジュニアサッカーワールドチャレンジ」は昨年に続いて2回目の開催となります。この大会の意義を改めて教えてください。

浜田満(以下、浜田) 海外クラブの指導者を招いてトレーニングキャンプを主催していく中で、日本のサッカーを強くするにはどうしたらいいのかを考え、最終的に行き着いたのが、「U-12年代のサッカーの質を上げる」ということでした。サッカートレーニングキャンプなどでやっていることは、あくまで練習でしかありません。世界トップの同年代の子供たちのレベルを肌で感じて、実戦で「敵わない」と感じたら、次はどうするかを考えられる。それがU-20、U-15では遅いんです。もう一つは、この年代でも子供たちが輝ける場所をどんどん作ってあげたいと思いました。全少(全日本少年サッカー大会)のような大会もありますが、大きなメディアの注目を浴びる中で、子供たちが世界を舞台に戦う、輝ける場所を作ってあげるのが、我々大人の仕事だなと。この二点が大きな動機ですね。

――多様な経験を幼少期から経験させる場を作るということは国際交流も含め貴重な機会だと思います。

浜田 セレッソ大阪は前回大会でバルセロナと試合をして完敗を喫しました。しかし、今年は全少で優勝しています。そのセレッソ大阪の選手、ほとんどが昨年のバルセロナ戦を経験していて、去年の大会を経て「今年はバルサに勝つぞ」と言ってこの大会を目指してくれる。何もない状況の1年と、バルセロナとやって感じたことがある1年の成長度を比べると、10パーセント、20パーセント、もしかしたらもっと違うのかもしれません。個の成長レベルのスピードを上げることにも役立っていると思います。

――前回大会を振り返り、良かった点、反響があった点は何でしょうか?

浜田 日本のトップレベルでプレーするJリーグの下部組織の子供たちの中には、「自分たちは強い」という感覚の子が多かったのですが、バルセロナやリヴァプールなどと対戦し、もっと上がいることが分かった。それを感じてもらったことは大きいです。もう一つは、基礎コンセプトの重要性が改めて証明できたということですね。

――基礎コンセプトの重要性とは?

浜田 日本はU-12年代くらいまでだと海外のチームとも対等にやれ、年代が上がっていくごとにフィジカルの差がつくから通用しない、とよく言われていますが、私は違うと思っています。U-12年代までに学ばないといけない様々な基礎のコンセプトがサッカーにはあります。海外クラブと試合をする時、U-12レベルではそのコンセプトが相手もしっかりと身に付いていないから、対等にやれる。でも、13歳ぐらいからは個人の技術ではなく、ポジション別の個人戦術になっていきます。ポジション別の個人戦術は12歳までにしっかりとその基礎をやっていないとできません。だから、ベースのある子供たちがきちっと上に積み上げているものと、ベースのない子供たちがなんとなくシステム論でサッカーをしていくことを比較すると、どんどん差が開いていくのは当然です。U-12世代からすでに違いが生まれているということを証明したかったんです。

――日本はまだ、ベースの積み上げの部分で海外との差があると?

浜田 例えば、同じ内容の練習をしても、何を教えるか、どこにフォーカスするかが違うんです。日本のサッカーは、しっかりと造っていない土台に積み上げていくからグラグラする。少しの負荷で崩壊してしまいます。一方、スペインなどはしっかりとした土台に積み上げていくので、色々な方向に枝葉は変わっていきますが、基礎はブレません。

バルセロナには「すごく良い大会だから来年も来たい」と言われていた

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昨年の大会で大きな注目を集めた久保建英くん [写真]=瀬藤尚美

――今大会は出場チーム数が12から16に増え、海外クラブとJクラブの参加だけだったものが、3つの街クラブが新たにに参加します。その意味合いを教えてください。

浜田 なぜ街クラブを入れたかというと、Jリーグのクラブだけが招待されるとなれば、「結局、Jの大会」という見え方しかしません。我々の狙いは、日本の子供たちが海外のチームとやること、見ることで、立ち位置を知ってもらうことです。例えば、自分たちが負けた相手が、この大会でバルセロナと対戦しただけでも、実感として世界のトップランクと自分たちとの差が分かる。Jクラブだけでやっている大会よりも、街クラブが出ることで、自分たちがそこに出られるかもしれないという主体的な話になります。そうなると見方が変わりますよね。

――U-12年代の多くの子供たちが、より世界を近くに感じられるわけですね。

浜田 例えば、今回出場する「Arancio Giocare 香我美」(高知県)も、県の街クラブの中では上のレベルのチームではないのですが、そのチームがミランとやることになり、県内も盛り上がります。そういうことをすることで、その街の地域サッカーも活性化するし、様々な良い影響を与えられると思います。だから今回、抽選で出場チームを決めました。

――街クラブが欧州のビッグクラブと対戦するとなると当然、地元メディアも注目しますよね。

浜田 今回、長野の「諏訪FC」が参加しますが、地元メディアが取材に来ます。そうすると長野県内に大会の認知度が広がります。他の都道府県もそうです。この大会の認知度が上がり、「みんなが参加したい大会にしていくこと」で、できる限り大きくしていくことが意義の1つです。

――街クラブのレベルも気になるところです。

浜田 正直、ミラン、バルセロナには大量失点してしまう可能性はあると思います。でも、「あのチームがミランと試合したの? 応募しておけばよかった」と誰もが思うはずです。諏訪FCはバルセロナと対戦しますが、彼らがスペインへ遠征に行ったとしてもバルセロナと対戦することはできないでしょう。そういう夢のある大会にしたいですね。

――夢が、より具体的なものになるわけですね。

浜田 はっきりとですね。一方で、大会の質は保たないといけないので、Jのチームも多く呼び、コントロールしています。

――今回、海外の3クラブが出場します。昨年に続く参加のバルセロナと、初参加となるミランとインドネシアのアシオップ・アパチンティには、こちらから参加を打診したのでしょうか?

浜田 バルセロナには昨年から、「すごく良い大会だから来年も来たい」と言われていました。ミランは元々繋がりが強いこともあり、オファーしました。昨年参加したリヴァプールの担当者のロドルフォが、マンチェスター・Cに異動したため、マンチェスター・Cからは逆オファーをもらったのですが、予算の関係上お断りしました。今回、予選4グループの各グループに欧州クラブが1つずつ入ってもらいたかったのですが、難しい部分もあり、2チームの参加となりました。

――日本サッカーの育成についてお聞きします。育成の現状をどのように捉えられていますか?

浜田 コーチの方たちは本当に一生懸命取り組まれていますし、選手のレベルは昔と比べて格段に上がっていると思います。ただ、根本となるプログラム、指標が、日本サッカー界にはまだ存在していないのと、学んだことを実際にグラウンドでアウトプットすることの難易度が高いのかな、という印象です。「12歳くらいまでに、こういうことはできないといけない」ということを知っている指導者が少ないため、そこの部分を教えられないという現実がありますね。ですから、実際に見てほしいわけです。違いを見て、それぞれに感じてもらうしかありません。

――U-12年代への指導のアプローチは、日本はこれからということですか?

浜田 この年代だと、しっかりトレーニングされたチームであれば、日本の中では試合に勝てる確率は非常に高くなります。しかしバルセロナを相手にした時のように、どうやっても歯が立たないチームがいると分かれば、どういうトレーニングをすれば勝てる可能性が高まるのかを考えなければなりません。意識の高い指導者がいるチームが肌を合わせることで、感じてもらうしかないと思います。去年も「バルセロナ・インパクト」という記事が出たくらい、相当インパクトがあったと言われていて、それを1回で終わらせずに、少しずつみんなに感じてもらえるような機会を作ることが大切です。そこから日本の指導に生かしてもらえるなら、私にとってもすごく嬉しい話です。

自分の位置を知ること、それが一番大事

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[写真]=瀬藤尚美

――子供たちが早い時期から海外のサッカー、人間と交流を持つ機会を得るということはどんな意味があると思いますか?

浜田 どの子供にとっても大きなメリットになると思います。本気でトップを狙っている子供たちにとっては日本でのプレーだけだと、どこまで自分がこの年代で伸ばせばいいか、つまり自分の現在地が見えない。大人はそれを見せてあげる必要がある。到達点が見えることで、そこから逆算して自分がどこにいて、目標とのギャップを埋める作業をしていく、ということになりますが、その到達点が分からないと、やりようがない。でもトップ・オブ・トップを見せてあげれば、具体的な到達点に気付くことができます。目標地点を設定してあげる、現在地を分からせてあげることが、トップを目指している選手にとっては重要です。

――そういう子供たち以外の子供にとってのメリットとは?

浜田 当然、全員がプロ選手になれるわけではありません。でも、世界の一流チームや、アジアのチームと対戦し、「もっと世界を知りたい。今後の人生で自分もいろんなことにチャレンジしたい」と感じてもらえればいいと思います。自分で、自分の人生にプラスになることを発見しているプロセスが重要だと思いますね。もちろんサッカー界のことを考えると、この大会は将来トップで活躍したいという選手へ対しての要素が強いかもしれません。昨年も東京ヴェルディの選手たちでバルサに負けた時に悔し泣きをしている子がいましたが、「これではダメだ」ということに気付いてもらうことが一番重要なことだと思います。

――幼い頃から様々な経験をすることが大事ですね。

浜田 自分の位置を知ること、それが一番大事です。私も含めてですが、サッカーをしっかりと理解できるような大人になった時には、年齢的にもうプロにはなれない状況になってしまっています。でも、「そうか」と分かるのが早ければ、取り組み方を変えることでプロになる可能性が増えますし、他の分野で活躍できる可能性もたくさんあります。気付きの早さが一番重要です。なんとなく練習していた1つの練習でも「これは何の意味があって、何のためにやって、トップの選手を目指すならこれではダメだ」と考えてプレーしたことが私自身、全くなかった。今は理解していますが、もう遅いですしね。当時、1年でも早くそのことに気付いていればと思います。

――サッカーだけでなく、海外の人と積極的に交流を図る機会をもっと作れていればと?

浜田 「この大会でバルセロナの選手と話してみたかったけど、スペイン語がわからくて話せなかった。だから、将来、海外で語学を勉強したい」という人がいるかもしれません。今大会は国内13のチームが出場し、各チーム20人いるので、全選手の約300人がいろんなことを自分なりに感じてもらえれば、それは良い話だと思います。

――小学校年代の育成で、サッカーに限らず成長に必要なことは何でしょうか?

浜田 繰り返しになりますが、目標を設定することではないでしょうか。現状と目標の差を埋めようと頑張るかどうかが成長を促すと思います。頑張れる子もいれば、やり方が分からないから頑張れない子もいます。まず、本物を見せ、そのうえで、自分の立ち位置に本人が自分で気付けるようにしてあげる。その上で今の自分と目標とのギャップをどう埋めるかです。ただ、重要なことは、絶対に子供を否定しないことと、高すぎる目標を設定しないことだと思います。

――本田圭佑選手も夢を持つことが大事と常々言っています。

浜田 本田選手や中田英寿選手のように、自分でそれを発見できた選手は稀で、彼らは賢かったから自分で見つけることができたかもしれない。しかし、本来それをサポートするのは、大人の仕事だと思います。子供は自力で見つけることはできない。そこをサポートしてあげられれば、もっともっと輝く子が増えると思います。ずっと育成に関わってきた中で、やっぱり子供は自分で感じたら成長するものだと思います。その感じられる舞台を人為的に作って、用意してあげることは必要ですね。

――そこで出来なかった子供にもまた別の選択肢があると?

浜田 もちろん選択肢は様々です。最初はダメでもそこから出来るようになる子もいます。いつ気付けるかということが大切です。

――最後に大会について、今後のビジョンをお聞かせください。

浜田 最終的には、U-12のクラブ・ワールドカップを開催したいですね。全世界の予選から上がってきたチームが、日本での大会に出場することを目指したいです。Jリーグとともに、来年はアジアラウンドをやろうという話があります。アジアのレベルを上げないことには、日本のレベルは上がらないと思っています。Jリーグのアジア戦略構想とも合致していて、力を借りながらアジアと日本との切磋琢磨する形を作ることが必要だと考えています。東京以外の場所、例えば大阪などで大会の一部分を開催することも理想ですね。

――大会に参加できない子供たちも実際に見ることで学べるということですね。

浜田 東京に行かないと見られないのは、もったいないです。

――この年代でのチャンピオンズリーグのような大規模の大会はないですね。

浜田 欧州では2、3日間で開催するミニ大会がほとんどです。街クラブが主催するお祭りのようなものです。僕はもっとオフィシャル化したいと考えていて、U-12世代では、世界の中ではダノン・ネーションズカップなどが大きな大会と言えますが、トップ選手ばかりが出るわけではありません。もっと格のある大会にして、日本のチームも予選から出て、世界のトップを目指せる仕組みを作ってあげたいと思っています。

『U-12 ジュニアサッカー ワールドチャレンジ2014』サッカーキング特設ページ
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