EURO2016特集|UEFA欧州選手権
2014.05.08

日本代表を応援する全ての人に見てほしい“W杯から最も遠い国”アメリカ領サモアのお話

 彼らはとてもサッカーがヘタだ。どれぐらいヘタかというと、プレー中のシーンが映し出されたときに客席から失笑が漏れてしまうぐらい、ヘタだ。ボールはまるで足についていないし、パスは3本とつながらない。技術的には日本人の小学生のほうがよっぽどうまいかもしれない。

 それもそのはず、彼らは“世界最弱”の代表チームなのだ。アメリカ領サモア代表――。公式戦30戦で200ゴール以上の失点&全敗、10年以上に渡りFIFAランキング最下位。極めつけは2001年にFIFAワールドカップ予選でオーストラリア代表に喫した0対31の歴史的大敗だ。国際Aマッチ史上最多点差という不名誉なものだった。

 そんな“最弱軍団”がオランダ人の熱血監督と共にブラジルW杯予選で初勝利を目指す。これはサッカー界の底辺中の底辺の物語だ。8万人の大観衆も、ネイマールやメッシの華麗なフェイントも、高度に組み立てられたゲームプランも、そこにはない。だが、技術や戦術以上に大事なものことを、この映画は教えてくれる。いわば、「サッカーの原点」だ。

 味方同士が心を通わせること、相手よりも勝ちたいという気持ちを出すこと、最後まで諦めないこと――。技術や戦術ばかりがもてはやされるが、サッカーで勝敗を分けるのは、案外そんなところだったりする。

 映画には雨のピッチでひたすらスライディングを繰り返すというシーンが出てくる。ユニフォームはビッショビショのグッチョグチョ。サッカー指導者が見れば鼻で笑うような練習方法かもしれない。だが、みんなで“バカ”になることによって、チームには不思議な一体感が生まれ始める。バラバラだった負け犬軍団が、だんだんと戦う集団になっていく様は、画面越しにもきっと感じられるはずだ。

 個人的には、この映画は日本代表を応援する全てのサポーターに見てほしい。

 今や、日本ではW杯に出ることが当たり前になった。ブラジルW杯を1カ月後に控えた今、サッカーファンの間で交わされるのは「日本はどこまで勝ち進めるのか」「サプライズで選ばれるのは誰か」といった話がほとんどだ。5大会連続出場となれば、それも仕方ないことなのかもしれない。

 だが、いつの間にか僕たちは忘れていないだろうか。自分たちの代表チームがW杯のピッチに立ち、その姿を応援できることが、どれほど素晴らしく、どれほど幸せなことなのかを。“W杯から最も遠い国”アメリカ領サモアの戦いを描いた「ネクスト・ゴール!」は、僕たちに「応援する幸せ」を改めて思い起こさせてくれる。

 願わくば、ブラジルのピッチに立つ前に“サムライブルー”の選手たちにも見てもらいたい。きっと、最高のモチベーションビデオになると思うから。

(文/北健一郎)

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