2013.05.07

[特別対談]長谷川アーリアジャスール×渡邉千真「真の強さを手に入れろ!」

[Jリーグサッカーキング 6月号 掲載]
中盤でマルチな才能を発揮し、チーム戦術の幅を広げる長谷川アーリアジャスールと、開幕から得点を量産し続ける渡邉千真。青赤の攻撃をけん引する二人は、雌伏の時を過ごしたからこそ今があると語る。果たして両選手は、内容に結果が伴わない現状をどう捉えているのか。
[特別対談]長谷川アーリアジャスール×渡邉千真「真の強さを手に入れろ!」
インタビュー・文=馬場康平 写真=兼子愼一郎

中央とサイドでうまく攻撃を使い分けられている(長谷川)

今年のサッカーについて、昨年から変わったところはあるのでしょうか。

渡邉 チームとしてやることはそれほど変わっていないと思います。ただ、新しい選手が入って、その選手の特長をうまく引き出せている。それに、昨シーズンからの継続で、チーム戦術も積み上げることができていますね。

長谷川 昨年はポポさん(ポポヴィッチ監督)のやろうとするサッカーを、みんなが考えながらやってきた。それを一年間やり続けたことで染みついた部分はあるし、それぞれのいいところを引き出すプレーが今年は増えていると思うんですよ。今は思うような結果が出ていないですけど、試合内容としてはすごくいいサッカーができているとは思います。

渡邉 俺も(東)慶悟も足元だけじゃなくてスペースにも飛び込めるタイプだから、ただつなぐだけじゃなくて速い攻撃も出せているよね。それが去年とは一味違った攻撃を見せることにつながっているんじゃないかな。

長谷川 慶悟はどちらかと言うと周りを生かすタイプだからね。「このスペースに出てきてほしい」って思った時に、フッと顔を出してくれるし。その持ち味がうまく前線の流動性につながっている。外に開いたり、裏のスペースに抜けたり、時には後ろに下がって、ボールをはたいて、また前に行く。そういう流動性がよりスムーズになったと思う。

渡邉 ルーコン(ルーカス)やアーリアもサイドのポジションに入るけど、今年はそこでも起点が作れているよね。去年はルーコンと梶山(陽平)選手が中央でタメを作っていたけど、今年はサイドでボールを引き出して時間が作れている。そこも変わったところかな。サイドで攻撃のポイントを作りながら、サイドバックが上がったりもできているし。

長谷川 昨シーズンの序盤は縦への攻撃ばかりで、真ん中から攻めるイメージが強かった。でも、今はサイドからもうまく攻め込むことができている。攻撃のバリエーションが増えれば、相手も嫌だろうしね。「東京は縦を切ったら抑えられる」と思っていたのに、「最近はサイドからクロスも上げてくるのか」って考えさせることができる。そうやって外を警戒させれば、今度は真ん中が空く。うまく中央とサイドからの攻撃が使い分けられていると思う。

渡邉 加えていい守備もできていることも大きいんじゃない?

長谷川 そうだね。ショートカウンターもうまくはまってるし。

渡邉 前からプレスを仕掛けて、高い位置でボールを奪ってゴールを狙う形も増えてきた。たとえ前線に人数が少なくても、2、3人でゴール前で相手に脅威を与える攻撃ができているからね。

長谷川 横浜F・マリノス戦(第4節)で、それこそ千真くんが決めた得点もそうだったよね。ヨネ(米本拓司)がボールをカットして、それをそのまま俺が持って行って。結局、ゴール前は俺と慶悟と千真くんの3人だけだった。それでもしっかり崩せたわけだし。

渡邉 そうそう。相手はその同数以上いたけど、最後まで崩しちゃったよね。あと、前からプレスに行けない時に後ろを固めるところも去年とはちょっと違う。ブラドさん(グルイッチ)がコーチに入って、守備の練習も増えたよね。

長谷川 起こり得るシチュエーションを想定して、いろいろやってるからね。そういう確認作業はやっぱり大事だよ。

渡邉 昨シーズンは攻撃の練習がほとんどだった。本格的に守備に着手したことで、今年は本当に勝ちに行くんだと思った。そういう部分も積み上がっているのかな。

試合に出られない時期の経験が今につながっていると思う(渡邉)

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そろそろエースの話をしましょうか。

渡邉 何? 俺いじり?

長谷川 いやいや恐れ多くていじれないですよ(笑)。開幕からすごいからね。このままの調子でいったら何点取るの? 公式戦全部で30点以上狙う?

渡邉 このままいけるかどうかなんて分からないから(苦笑)。点を取っても負けたらめっちゃ悔しいからね。横浜FM戦は特にそうだったし。

長谷川 確かに。崩れ落ちて座り込んでたもんね。

渡邉 ホント、悔しかったよ。負けたからね、せめて引き分けないと。みんなも分かってると思うけど。

渡邉選手は横浜FMでプロ1年目に新人王を獲得しています。アーリア選手から見て、当時の雰囲気と似ていますか?

長谷川 それほど一緒に出ていなかったから偉そうなことは言えないけれど、当時はなんだかんだ言って、ゴールを決めるイメージがあった。新人王を取った時は大学から入ってきたばかりで、まだプロの世界をよく分からなかったと思うんだけど、得点を取り続けたよね。自分で持ち上がることもできるし、シュートもうまい。今は確かに横浜FMの1年目に13点取った時みたいな雰囲気がある。すごく頼もしい存在ですよ。

渡邉 でも、今年はワンタッチシュートが多いんだよ。当時も点を取ってたけれど、今年はちょっと違うんだよね。

長谷川 確かに、あの時は正直、ゴール以外でいいプレーをしていた印象は残っていない。だけど今年はボールが収まるようになったし、スペースに抜けて、相手が当たりに来ても体をぶつけながらゴリゴリ運ぶこともできてるよね。「俺が俺が」って気持ちがすごく伝わるようになった。本当にどうしたの?

渡邉 昔と比べて、いろいろできるようになったでしょ?

長谷川 うん。強いパスを当ててもしっかり収めてくれるし。すごいなって思いながらいつもやってる。たくましくなったと言うか……ちょっと偉そう?

渡邉 いやいや。でも、横浜FMの選手にも言われたよ。すごく変わったって。

長谷川 俺も言われた。「カズマ、めっちゃ収まるね」って。

渡邉 成長してるんだよ、俺も。プロ4年間の積み上げだよ。1年目は結果を残したけど、それ以外は確かにあまりできていなかったから。

長谷川 それが、何でいきなり?

渡邉 いきなりじゃないよ。昨シーズンからポポさんに求められていることもそうだけど、出られなかった時期に自分のプレーを見直したりして、自分に何が足りないのかを考えてきた。そういうことがムダじゃなかったってことだと思う。

長谷川 俺もそうだけど、まだまだって思いも強いでしょ? 監督がいつも言ってるからね。「俺たちはまだ何も成し遂げてない」って。ずっと慢心せずに取り組んできた気持ちが今の成長につながったんだよ、きっと。それはチームのプラスにもなる。もう俺たちはもう若手じゃないから。

渡邉 アーリアも東京に来てからゴールに絡む動きが多くなった印象がある。昔はあんなに点を決めるイメージがなかった。すごく変わったと思った。だって、プロ入りからの得点数を昨シーズンだけで追い抜いたんでしょ?

長谷川 そうそう。でも、どちらかと言うと、自分としてはアシストのほうが好きかな。ゴールは別に誰が決めてもいいって思っているし。やっぱりプレーの質にもっとこだわりたいっていう思いのほうが強い。ガツガツして「絶対に点を取ってやる」というタイプじゃない。だから周りがよく見えるのかもしれない。

渡邉 だから横浜FM戦でスルーできたの?

長谷川 あれは絶対に分かると思った。

渡邉 でも、慶悟はアーリアに出したって言ってたよ。

長谷川 パスを出す瞬間に慶悟がチラっとこっちを見たから、「俺に出すな」と思った。パスも強くなかったし。でも、瞬間的に相手が来るのが見えたから、スルーを選択しただけ。

渡邉 点は取れる時に取っておけば、どんどん怖い選手になれるよ。

長谷川 そう。だからそれは常に考えていますよ。「ここだ!」って時はシュートを打たなきゃいけないし、その意識がまだまだ低い。第6節のベガルタ仙台戦でもそういうシーンがあったし、もっと意識を高めていかないと。ただ、例えば相手 が出てきて一対一のシーンになっても、隣にいる選手が確実に決められるんだったら、俺は絶対にそこへパスを出す。それは可能性の問題だから。

渡邉 より高い可能性を選ぶプレーはFWにも求められている。監督はそういうことにもこだわるからね。

それは東京へ来る前に不遇の時期があったからこそ、もっと評価されたいというハングリーな気持ちが強く出ているのかなと思うんですが。

渡邉 その気持ちは去年のほうが強かったな。

長谷川 俺もそう。

渡邉 もちろん個人的に結果を残したい気持ちはあるけど、まずはチームが勝つためにプレーするという思いのほうが大きい。自分が点を取ればチームの勝利に近づくだろうけど、まずはやることをしっかりやって全力を尽くす。ポポさんも「常に全力を尽くせ」と日頃から言い続けているしね。

長谷川 そうだね。昨シーズンは初めての移籍だったから、周りに認めてもらうためにも自分のプレーを出さなきゃって考えは確かにあった。ガツガツする気持ちもそう。だけど、一年を通じて周りも俺たちがどういうプレーをするかを分かってくれたし、そこで余裕が生まれたよね。チームのためにプレーすることで個人も生かされるだろうし、個人の能力を出せばそれはチームにとってプラスになるという考えがベースになった。それもポポさんが一年間ずっと言ってきたこと。今年はそういうことがうまく出ているんじゃないかな。

渡邉選手は昨シーズン、なかなか出場機会に恵まれない時期がありました。気持ちが折れることはなかったですか?

渡邉 確かにいろいろな状況はありましたけど、まだ東京で何にもしていないと思ったんです。逃げ出すのは簡単だけど、もう一度しっかり頑張ろうという気持ちが強かったですね。

長谷川 すごいよ、マジで。FWはポジション争いが激しいでしょ。

渡邉 競争は常にあるものだし、「俺じゃだめなのか」って気持ちになったこともあるけど、ずっと考えていても仕方がない。まずは自分がしっかりやることが大切だって頭を切り替えたよ。

今シーズンは2チーム以上組めるだけの戦力が整っていますよね。

長谷川 本当にいい選手がそろっていますよ。監督もメンバー選びに悩むでしょうね。

渡邉 そういう状況が選手たちのいいモチベーションにつながっているかも。

長谷川 俺たちも試合に出られない時期を経験してきたからね。

渡邉 そういう経験も含めて、今につながってるんでしょ。

長谷川 むしろそれがなかったら、たぶん今もない。全部が全部いい時なんてないから。

二人に共通していることですが、もっと上を見ているように思います。渡邉選手も日本代表入りについて口にするようになりましたよね。

渡邉 周りから言われますからね。

長谷川 いや、そこはやっぱりサッカーをやっている限りは……。

渡邉 目指さなきゃダメだよね。そうでないとおかしいよ。俺も代表キャップが一つあるけど、アジアカップ予選のイエメン戦( 10年1月6日)に出場した選手は東京にもたくさんいる。権田(修一)、ヨネ(米本拓司)、(平山)相太さん、(太田)宏介もいた。ただ、そこで一緒に出ていた(吉田)麻也や乾(貴士)は、代表に定着してるからね。

長谷川 俺も去年、代表合宿に呼ばれて一気に意識するようになった。

渡邉 一回行くと、全然違うでしょ?

長谷川 間違いない。そのためにはチームで結果を出さないと。いつも言ってることだけど、上ばかり目指していてもいけない。足元をしっかり固めなければ、高くは飛べないから。頭の中だけが先に行って現実が見えていないようではダメ。やっぱり東京で試合に出て、活躍しているから注目されるわけで。

渡邉 試合で活躍していれば、見ている人は見てるからね。それに呼ばれた後も大事。一回呼ばれて終わりじゃないし、それだけの意識を持って、毎日の練習に取り組まないと。

一年後、ブラジルのピッチに立っていたらちょっとしびれますよね?

渡邉 しびれる。もちろん行きたいですよ。もう一年後なんだね。早いね。

今は“うまいチーム”で止まっていると思う(長谷川)

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開幕前から選手もスタッフも、タイトル獲得を意識した発言が目立ちます。これだけ明確にするシーズンは珍しいです。

渡邉 確かにみんなの口から「優勝」とか「タイトル」という言葉が出てきていますけど、しっかりと勝つ集団になりたいと思うなら、もっと結果にこだわらなきゃいけない。実際、内容が良くても結果的に負けてる試合が多い。どこかが足りないんです。細かいところだけど、小さなミスの積み重ねが失点になっている。

長谷川 いかにそれを試合中に修正できるかがカギになる。

渡邉 試合が終わった後だったら、ビデオを見て何とでも言えるからね。

長谷川 ゲーム中に修正できなければ、試合後に「もったいない」と後悔しても遅い。

渡邉 横浜FM戦がいい例だよね。チームとして同点に追いついた時、3点目を狙えるってイケイケになっちゃった。結果論だけど、そういう気持ちになったから前掛かりになりすぎて決勝点を奪われてしまったんだと思う。あそこでみんなが「最低でも勝ち点1を」という意識を持てていれば、違った結果になっていたかもしれない。

長谷川 そこをやらなくちゃいけないよね。普段なら冷静になって「しっかりつなごう」と言ってたはずなんだけど、俺も正直、いけるって思ってしまった。試合前に「今日は焦れずに、プレーや声で落ち着かせよう」と話すんだけど、それができなかった。今は結果が出ていないけど、早い段階で分かって良かったと思わないと。

渡邉 これからまたそういう試合展開があるかもしれないからね。

長谷川 そう。だからそれを繰り返しちゃいけない。やっぱり負けないことも強さの一つだと思うから。内容が悪くても0 │ 0で終わらせることが必要。点を取れなければ、取られないことも大切になる。でも、自分たちのサッカーは絶対に変えない。今日は調子が悪いから縦に大きく蹴ろうって考えるんじゃなくて、悪くても、やることはやって試合をしっかり締める。東京にはそういう強さがまだまだ足りない。

渡邉 確かにそこは足りないところ。一試合を通じて内容が良くて、いい攻撃、いいサッカーをしてる試合が多いと思うけど、その一方で結果が出ていない。強いチームになるためには、そういうところも必要になってくるよね。

長谷川 今は“うまいチーム”で止まっていると思う。

渡邉 そう。本当に強いチームになりたいよね。「タイトル」って言葉を口にしているならなおさら。俺たちが求めるのは、もっと高いところだから。昨シーズンの前半もAFCチャンピオンズリーグ(ACL)でいいサッカーをしていると言われたけど、勢いがあっただけのような気もするし。

長谷川 去年のACLで好調だって言われた時期と今年のサッカーって、実は全然違うと思うんだよね。

渡邉 内容を見れば、抜群に今のほうが上だよね。細かいところで言えば全然違う。今はつなぐだけじゃないから。

長谷川 攻撃のバリエーションは本当に豊富になったと思う。真ん中からもサイドからもいけるようになったし。そこにプラスして勝負強さを身につけないと。

渡邉 でも、東京だったらもっと上を目指したいよね。内容はもちろん常に良くて、それでいて、しっかり勝ち切るようなチームにならないと。見ている人がつまらないようなサッカーじゃ、やっている俺たちもきっと面白くないし、結果が出なければ、ただの自己満足になってしまう。

長谷川 「もうちょっとだ」と思う一方で、まだまだ道のりは遠いのかもしれない。小さな綻びを埋めて、細かい部分にもこだわっていく。そうすれば最終的に運も含めて“勝利の女神”が微笑んでくれるんだと思う。でも、そのためには毎日の練習でやらなきゃいけないことがたくさんある。内容に満足せず、現実をしっかり受け止めることが大切。負けているんだから、修正すべきことは絶対にあるし、日々成長していかないと。

渡邉 そういう小さなことを積み重ねていって、味スタにシャーレを運んでくることができれば、きっと最高だろうな。

長谷川 今のサッカーを続けていけば、絶対にたくさんの人が自然とスタジアムに足を運んでくれるはず。それは東京がクラブとして目指すべきところでもある。満員のファン・サポーターの前で、魅力的なサッカーをして勝つことを目指していきたいね。

最後に二人の目標を。

渡邉 「得点王」なんて口にするのは、まだ早いよ。

長谷川 先は長いからね。何より強い東京になる。そこにすべてが凝縮されていると思う。

渡邉 そうだね。チームとして“真の強さ”を手に入れたいね。

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