2012.07.16

【第6回】名良橋晃&南結衣のスタジアム潜入記

文=池田敏明
写真=市川陽介、ウニベルシダ・デ・チリ

 4月29日、チリサッカー界にとって最大のイベントである“スーペル・クラシコ”、ウニベルシダ・デ・チリ対コロコロの一戦が行われた。今回はウニベルシダ・デ・チリのホームゲームで、会場はエスタディオ・ナシオナル。ここは1938年にオープンし、1962年のチリ・ワールドカップで決勝戦が行われた歴史と伝統を誇るスタジアムだ。現在はウニベルシダ・デ・チリとチリ代表のホームスタジアムとして使用されている。

 
 試合は16時キックオフだったが、12時半に我々取材陣が到着した時には既にスタジアム内外に多くのサポーターの姿があった。チャントを歌いながら入場ゲートを目指すウニベルシダ・デ・チリのファン。彼らとは隔離された通路を歩きながら、向けられたテレビカメラに向かって挑発的な言動を取るコロコロのサポーター集団。早くもテンションが最高潮に達してしまったのか、身柄を拘束されて警察車両に連行される若者の姿もあった。

 スタジアム内に入ると、スタンドでは早くも両チームのサポーターがチャント合戦を展開。澄み渡る青空とバックスタンドの向こうに連なる雪を冠したアンデス山脈、そこに響き渡る歌声。「やっぱこの雰囲気、たまらないですね~」。国内外の様々なスタジアムでプレーし、フランス・ワールドカップの熱気をピッチ上で体感した名良橋晃さんも、南米サッカー特有の盛り上がりを全身に浴び、気持ちを高ぶらせていた。鹿島アントラーズサポーター代表の南結衣ちゃんは、海外で初めて観戦する試合がチリのスーペル・クラシコという幸運な巡り合わせだ。


 
 その後、スタジアムの外に出てサポーターへの突撃取材を試みる。結衣ちゃんは鹿島、そして名良橋さんは現地調達したウニベルシダ・デ・チリのユニフォームに身を包み、“戦闘モード”に入る。しかし、2人は瞬く間にハイテンションのサポーターに囲まれてしまった。ウニベルシダ・デ・チリの関係者から「チリではアルコールを摂取しての、あるいは摂取しながらの観戦は禁止されている」と聞いていたが、誰もが酔っているかと見間違うほど気持ちが高ぶっている。

 この時に驚かされたのだが、サポーターの多くが我々日本人の姿を見かけると「コパ・スルガバンク! コパ・スルガバンク!」と声をかけてきたこと。「コパ・スルガバンク」とは、スルガ銀行チャンピオンシップの南米での呼称。南米での同大会の知名度は、驚くほど高いのだ。


 
 スタンドは両チームのファンでぎっしり埋まり、16時にいよいよキックオフ。誰もが待ち望んだ一戦は、前半終了間際に大きく動く。コロコロが退場者を出し、ホームのウニベルシダ・デ・チリが先制。後半には怒涛の4ゴールを追加し、5-0という一方的なスコアでウニベルシダ・デ・チリが勝利を収めた。スタンドでじっくりと観戦した名良橋さんは、終了のホイッスルが鳴った後もしばしピッチを見つめたまま。そして、次のように感想を語ってくれた。

「自分が試合に出るわけじゃなかったですけど、武者震いしましたね。スタジアムの一体感は素晴らしかった。サポーターはまさに命懸けでチームを応援しているし、ピッチ上ではそれぞれの選手が持ち味を存分に発揮している。本当に楽しかったです」

【動画編】名良橋晃&南結衣のスタジアム潜入記