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市船はルーキーコンビの高宇洋&杉岡大暉の活躍で、インハイ出場決める

2014.06.22

高宇洋(左)と杉岡大暉(右)【写真】=川端暁彦

 6月21日、“夏の王者”市立船橋が全国屈指の激戦区である高校総体千葉県予選を突破。連覇に向けた一歩を踏み出した。

 千葉県北東部の旭市・東総運動場で行われた千葉県予選準決勝。千葉から夏の総体への出場枠は『2』であるため、準決勝はいわば“出場決定戦”。必然的に最もテンションの高いゲームとなる。その第1試合では名門・市立船橋と、新鋭・暁星国際が激突した。

 市立船橋・朝岡隆蔵監督が開口一番「疲れました」と漏らしたように、昨年度の総体王者にとっても難しいゲームとなった。かつてキング・オブ・トーキョーと謳われたアマラオコーチの薫陶を受けた暁星国際は士気高く王者に立ち向かい、粘り強いディフェンスで対抗し続けた。結局、試合は延長戦で決着。それもFW矢村健のクロスボールが風に乗って入るという、少々幸運な形だった。

「まだまだ、これからのチームですよ」という朝岡監督の言葉は、ありがちな謙遜ではなく率直な実感かもしれない。例年であればチームの形がある程度見えてくる時期なのだが、今年はまだまだ選手をシャッフルしている段階だ。この日、先発に名を連ねた3年生はわずかに3人。「(他の3年は)殻を破るのを待っている」状態であり、現在は下級生にチャンスを与えながら奮起を促している段階というわけだ。

 その中で、この総体予選では二人のルーキーを先発に抜擢した。一人はMF高宇洋(たか ひろ)。川崎Fのアカデミー出身でU-14日本選抜などにも名を連ねていた期待株だが、U-18チームへの昇格を断り、「自分の環境を変えたかった。人として強くなれる場所へ行きたかった」と4月から市立船橋へ加入してきた。父親であり、元中国代表選手にして、かつては富士通(現・川崎F)でプレーした高升氏(現・遼寧監督)からも「自分が強くなれると思うなら、自分で決めなさい」とアドバイスを受けて決断したという。

 川崎Fでは主にFWとしてプレーしていたが、市立船橋では左のインサイドハーフで起用されている。「スペースを取りに行く回数はまだまだ少ない。もう少しできると思う。ただ、止める・蹴るの部分はしっかりしているし、意外に守備もできる」と朝岡監督。本人も「先輩たちの意識が本当に高い。大事なところで絶対に負けないという勝負強さも群を抜いている」と新たな環境で、自分になかったものを吸収しようと意欲的だ。

 さらにもう一人、この大会では3バックの左DFとして杉岡大暉も1年生とは思えぬ安定したプレーを見せ付けた。「みんなでまとまって、我慢強くできた」と本人にとっても一定の手応えがある大会だったようだ。杉岡はFC東京U-15深川の出身だが、高とは違ってU-18チームへの昇格はできなかった選手。高が最初から即戦力として期待を受けてきたルーキーなのに対し、杉岡は入学後から着実に評価を上げてきた選手である。朝岡監督に言わせれば、「キッチリできる子」ということで、今大会を前に大抜擢となった。

「名門で強くて、成長できるところだと思った」と市立船橋を選んだ理由を語る杉岡は、「中学では武器とは思っていなかった」という左足のキックについて「そこを褒めてもらえるので、いま練習している」と言う。実際、この試合でも何度か左足の好フィードを見せており、磨いていけば3バックを採用するこのチームにとって、貴重な武器となりそうだ。

 ルーキーの台頭も目立った夏の王者・市立船橋。彼らに刺激を受けた上級生の逆襲も含めて、大きなポテンシャルを持つチームと言えるだろう。

文=川端暁彦

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