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盟友・内田篤人の引退、ノイアーの活躍…節目の日に新たな決意を固めた川島永嗣

2020.08.25

ロリアン戦に出場したストラスブールのGK川島永嗣 [写真]=Getty Images

 鹿島アントラーズの内田篤人が現役ラストマッチを終え、涙ながらに引退セレモニーで挨拶した直後の8月23日22時。ストラスブール川島永嗣は2020−21シーズンのリーグ・アン開幕節、ロリアン戦に挑んでいた。

 2018年ロシアワールドカップ直後に新天地へ赴き、3番手GKからのスタートを余儀なくされた彼にとって、開幕スタメンは長く苦しかった努力の賜物。2019年5月25日のナント戦以来、1年3カ月ぶりのピッチで、今季昇格組の相手に存在感を示したかった。

 ストラスブールは30分に先制。前半を1-0で折り返すなど、敵地でまずまずの滑り出しを見せていた。だが、後半から攻めのスイッチを入れてきた相手にいち早く同点弾を許し、さらにPKを献上。開始15分間で1−2と逆転を許す形になった。

 それでも川島は集中力を切らすことなく、決定機を立て続けにセーブ。鬼の形相でチームメートを鼓舞する。この気迫に味方攻撃陣がゴールという形で応えてくれればよかったが、逆に終了間際に3点目を奪われてしまう。このシーンでも守護神は最初のシュートを鋭い反応で弾いたが、ゴール前に詰めていた別の選手に押し込まれて、万事休す。「あれはノーチャンスでしたね」と本人も苦笑するしかなかった。

 スコアは1-3の黒星。新シーズンの幕開けはほろ苦い結果に終わった。

「昨年出ていたGKのマッツ・セルスがケガ、もう1人のバングル・カマラが新型コロナウイルス感染症にかかった影響もあって、プレシーズンから僕がずっと出ていました。そのまま開幕を迎えたので、久しぶりに公式戦に出た感覚はなかった。

 今季、マルセイユから新たなGKコーチが来たんですけど、彼の実践的かつダイナミックなメニューがプラスに働き、練習をやればやるほどコンディションが上がっていったので、不安なくピッチに立てました。

 試合に出たことは嬉しかったし、充実感はありましたけど、やっぱり勝ちたかった。(昨季10位の)僕らの方が格上ですからね、ホントに大事なのは開幕戦に出ることじゃなくて、チームとともに結果を出すこと。これに満足することなく、高みを目指してやっていきます」

 試合後、電話インタビューに答えてくれた川島は毅然と前を向いた。

 同じ日に内田が引退することはもちろん知っていた。本人とはつい最近も電話で話し、決断も聞かされていた。公式インスタグラムで「寂しいけど。。本当に寂しいけどな」と長文メッセージを送るほど、ともに日本代表で戦った5つ年下の仲間への思いが募った。

「ケガをしてからの篤人は本当に大変だった。彼の性格を考えたら、ピーク時を思い浮かべてもっと早く辞めていてもおかしくなかった。自分が追い求める姿を追えないのは選手として辛いことですから。最近もコンディションがそこまで悪くないのに試合に出られない葛藤を抱えていたのかなと思います。でもここまで必死に頑張って向き合ってきた。それはなかなかできることじゃない。篤人が素晴らしかった時期に一緒にプレーさせてもらえたこと、最高の時間を共有させてもらえたことに改めて感謝したいです。

 僕が印象に残っているのは、篤人が2008年に代表デビューした頃。守備うんぬんを考えず、つねに高い位置で攻撃ばっかりしてた。後ろから指示する立場としては大変だったけど(苦笑)、若さでガムシャラにタテへタテへ突き進んでいる姿は脳裏に焼き付いて離れません。代表にはずっとこだわりを持っていたし、ロシアも最後まで諦めてなかった。一緒にロシアで戦いたかったですね」

 内田の方も、遠藤渓太のウニオン・ベルリン移籍に関する質問に対して「長谷部(誠)さん、永嗣さん、麻也みたいに、欧州で自分の地位を確立できるくらい活躍してほしい」と名指しで川島へのリスペクトを口にしていた。去りゆく後輩の思いを背負いながら、37歳のベテラン守護神はさらなる高みを目指すことになる。

川島永嗣

[写真]=Getty Images

 そんな川島に改めて大きな刺激を与えてくれたのが、こちらも同日に行われたチャンピオンズリーグ決勝で頂点に立ったバイエルンのマヌエル・ノイアーだ。パリ・サンジェルマンのネイマール、キリアン・エンバペらが放つシュートの雨嵐を巧みに防いで零封。2014年ブラジルワールドカップMVPに輝いた頃よりもスケールアップした印象を残した。

「ノイアーは確実性が上がっているように感じました。彼がやろうとしていることは変わっていないし、技術や戦術眼も依然として世界最高レベルですけど、プレーの確立を上げるポジショニングやボールの止め方が以前にも増してよくなっている。そう感じます。

 GKは年齢を重ねて出せるよさがありますね。ベテランになると体力的な部分を指摘されがちですけど、今は本人の努力次第でいくらでも維持できる。僕もノイアー同様、既成概念を打ち破っていきたい。自分が求める最高の形を求め続けるのは僕の道。それをやることに集中していきます」

 内田引退、CL決勝という節目の日に新たな決意を固めた川島。今季は過去2年の悔しさを晴らし、自身が納得いく成果を残してくれることを心から祈りたい。

文=元川悦子

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