2018.03.09

北澤豪氏が伝授!育成年代に知ってほしい“リーガ観戦術”

元日本代表の北澤豪さんが解説者ならではの視点でリーガ観戦術を語る[写真]=鷹羽康博
サッカー総合情報サイト

 リオネル・メッシの超絶テクニックに沸き、クリスティアーノ・ロナウドのパワフルなシュートに舌を巻く。世界最高峰のスーパースターの競演は、それだけでリーガ観戦の大きな魅力の一つだ。だが、少し見方を変えるだけでリーガ観戦はさらに面白くなる。特にクラブチームやサッカー部で汗を流す中高生のファンにとっては、その視点を少し変えるだけでリーガはまたとない教材になり得る。WOWOWのリーガ解説でおなじみの元日本代表MF北澤豪さんに育成年代に知ってほしい“リーガ観戦術”を聞いた。


取材・文=国井洋之

■重要なのは「そのチームがどんな狙いを持っているか」

 育成年代の選手がプロの試合を観戦する時、自然と目がいきがちなのが自身と同じポジションでプレーする選手たちだ。FWがルイス・スアレスの狡猾さを、GKがヤン・オブラクのセービング技術を学びたいと思うのは当然のこと。現役時代にMFとして活躍した北澤さんも、解説時にはやはり中盤の選手に注目することが多いという。しかし、個人に注目しているだけではその選手の本当の良し悪しは見えてこない。

「例えば同じサイドアタッカーでも、ワイドに張っている選手、中央にも絡んでくる選手と、チームによってその役割は違いますよね。つまり、個人とチーム戦術の兼ね合いがあるんです。そのチームがどんな狙いを持っているかをセットで見ておかないと、選手の本当の良さを伝えることはできない。そういう部分まで解説できるよう、各チームの戦術や狙いというのはしっかり頭に入れるようにしています」

 チームの中で選手がどう個性を発揮するのか。そこを意識し始めると、中盤の選手を見る時も、「MF同士がどう絡むのか、FWとの関係性はどうか、サイドバックとの関係は?」という視点が生まれてくる。そして、北澤さんのこうした視点は自身が現役時代に抱いていた“プレーヤーとしての理想像”が大きく関係している。

 中学時代に読売クラブ(現東京ヴェルディ)のジュニアユースに所属し、修徳高校、本田技研を経て再び読売クラブに戻った北澤さんは、常にうまい選手に囲まれてプレーする中でMFとしての理想像を確立していった。

「波がない選手、平均点が高い選手というのを意識していましたね。どの試合でも“6.5”ぐらいの評価がもらえるような選手です。技術、スピード、運動量……選手としての能力を六角形や八角形のパラメータで表した時に、すべての数値を万遍なく上げていくイメージ。周りにはうまい選手がたくさんいましたから、自分が生き残るために必要でした」

 プロ予備軍と言える育成年代の選手たちにとって大切なのは「自分がどうなりたいか、どんなプレーをしたいか」ということ。それを明確に持ち、チームの中でどう表現していくかが重要だと北澤さんは力説する。「それがなかったら、プレーしていても面白くない」

 現役時代の北澤さんは、豊富な運動量でピッチをところ狭しと駆け回る姿から“中盤のダイナモ”と呼ばれていた。しかし、それはチームの役割をこなす中で周囲が作り出したイメージにすぎないという。では、自身が「どうなりたいか」というイメージは明確だったのだろうか? 選手としての平均点を高く保ちつつ、ピッチで違いを生み出すために意識していたのは「ゴール」だった。

「やっぱりゴールでしょう。うまい選手がいる中で違いを生み出さなきゃいけないとなると、やっぱりゴールしかない。そこは常に意識していました。(周囲にクローズアップされていた)運動量はあって当たり前という基準でやっていましたから」

 なるほど、確かに北澤さんは「点が取れるMF」だった。Jリーグ通算成績は265試合出場で41得点。日本リーグ時代の1990-91シーズンには得点王にも輝いている。選手が生き残るためにチームの中でどんな役割をこなしているか、その中で自分をどう表現しているか。そんな視点でリーガを観戦すれば、新たな発見や学びがあるに違いない。

■目で見て頭でイメージすること

 では、常日頃からプロの視点でリーガを観戦している北澤さんが、観戦を通じて驚かされることはあるのだろうか? ここでも普段から細部まで注視している北澤さんらしい答えが返ってきた。

「例えばフアンフラン(アトレティコ・マドリード)はとてもスローインがうまいんですよ。僕の体感ですが、98パーセントぐらいの確率で成功している。あれだけ成功率が高いのは、おそらくスローインを重要なセットプレーの一つと捉えて、普段からチームメート同士でしっかりと意思疎通ができているからだと思うんです。このシチュエーションではこう投げようというのが決まっているんじゃないかな」

 フリーキックやコーナーキックと比べると軽視されがちなスローインも、戦略一つでチームの武器となる得ること、そして実際にそれを実践しているチームが存在すること。こうした細部まで行き届いたリーガの素晴らしさを北澤さんは強調する。

 一方で、北澤さんはスター選手のプレーを純粋に楽しむことも否定しない。メッシやC・ロナウドの名前を引き合いに出すまでもなく、リーガを見ていれば一流のテクニックに感嘆する機会は多いという。

「今、エイバルで乾(貴士)選手と一緒にやっているペドロ・レオンのプレーには感心させられましたね。彼がまだヘタフェにいた頃、WOWOWの現地取材で彼のウォーミングアップ中のプレーを生で見たことがあるんですが、彼は全く同じモーションで何種類もの球種を蹴り分けていた。スペインでは代表選手でさえない彼があれだけの技術を持っていることに、改めてリーガのレベルの高さを感じました」

 そういうプレーを目の当たりにした時は、今でも現役時代の血が騒いでウズウズするという。北澤さん自身にも読売クラブ時代の先輩だった川勝良一さん(現サッカー解説者)の“あるプレー”をひたすら真似して研究した過去がある。

「川勝さんは常にアウトサイドキックを使うんです。そのパスがバンバン通るから、90分間、川勝さんだけを見て研究したりもしました。そうやって研究していくうちに、アウトサイドキックは軸足の位置がポイントだということに気づいたり、しっかり踏み込むとそれ自体がフェイントになるということに気づいたり…」

「昔はサッカーボールを持って国立競技場にトヨタカップを見に行くのが定番でした。世界最高の選手たちのプレーを生で見てイメージを膨らませ、試合が終わったらドリブルしながら家に帰る。そんなことをやっていましたね(笑)」。最初は模倣から入るのも悪くない。“百聞は一見にしかず”。実際に目で見て頭でイメージすることも、サッカー観戦の原点なのかもしれない。

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