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サッカー版『マネーボール』? 快進撃の英2部チーム、秘密はデータ分析

2015.03.18

快進撃を続けるブレントフォード [写真]=Getty Images

文=藤井重隆

 2003年に原作がベストセラーとなり、2011年に映画化された『マネーボール』をご存じだろうか。

 野球における不公平な資金格差のゲームに勝つ術を持った男が、メジャーリーグの貧困球団でゼネラルマネージャーとなり、投資効率を合理的に考えた独自の統計学を用いて奇跡の強豪チームを作り上げるという物語だ。

 そんな『マネーボール』を彷彿とさせる改革を行っているチームが、昨シーズンにイングランド2部リーグへ昇格したロンドンのブレントフォードだ。ブレントフォードは戦後、3部と4部を行き来し続けた、言わば弱小クラブだったが、2012年に同クラブの熱狂的ファンで元プロギャンブラーという異色の経歴を持つ企業家マシュー・ベンハム氏に買収されると、3年足らずで劇的な進化を遂げた。

 ベンハム氏は買収して臨んだ2012-13シーズンに、プレミアリーグや2部などから計12選手(半分がレンタル)を補強すると、いきなりチームを3部プレーオフへと進出させた。惜しくもプレーオフ決勝で敗れ、2部昇格を逃したが、翌シーズンにはチェルシー、アーセナル、リヴァプールなどから若手選手を期限付きで獲得し、計20名(半分がレンタル)の選手補強を行い、シーズン途中に監督交代に踏み切ったことも奏功。2位でフィニッシュし、21年ぶりの2部昇格を果たした。

 そして今シーズン、再びチームは12選手を補強し、アーセナルの若手MFジョン・トラルを含む5選手を期限付きで獲得すると、第38節を終えてプレーオフ進出圏内の6位につけるという快進撃を見せており、プレミアリーグ昇格を狙える位置につけている。

 この成功の背景には何があるのか?

 今年2月、クラブはシーズン終了後に監督交代を行う事がメディアに流出してしまい、電撃発表する事態に発展したが、その理由としてマーク・ウォーバートン監督は「統計学に重点を置くオーナーとの考え方の違い」と『BBC』に説明。ベンハム氏が『マネーリーグ』の手法を実践している事が明らかとなった。

 ベンハム氏の実力は現在のデンマーク1部リーグの順位表にも表れている。ベンハム氏はブレントフォードに続き、デンマーク1部リーグのミトイランド(1999年創設)を2014年に買収し、今シーズンはクラブ史上初のリーグ優勝に王手をかけているのだ。

 ミトイランドで会長に任命されたのは同クラブの元選手でUEFA(欧州サッカー連盟)コーチング免許のAライセンスを持つ31歳のラスムス・アンカーセン氏だ。彼は成功の最大の要因として、スカウト体制の構造改革を挙げており、ベンハム氏は選手補強やチームの改善を図るためにデータや統計学を取り入れたと言う。

「我々は異例のやり方を実践しているが、2つの大きな要素として、統計的分析と選手育成に重きを置いている。データは完璧ではないが、人間の判断能力よりは完成されているだけに、常にデータを取り入れて判断することが重要となっている。人間の判断とデータ処理が担う役割を明確にしなければならない」

「我々は割安の市場で割安の選手を見つけるためにデータを用いており、選手育成にも力を入れている。現に我々の先発メンバーの半数がクラブ生え抜きの選手だ。データは我々に指示を出さないが、どこを見ればいいか教えてくれる。データを利用するには、その特徴をしっかりと把握しておかなければならない」

「サッカーはバスケットボールやハンドボールに比べ、偶然性の多いスポーツだ。少ないゴール数が意味するのは、偶然性が大きな割合を占めるという事。審判が間違いを犯したり、ボールがポストを叩いたりする。統計的に見て、各スポーツにおける最強と呼ばれるチームを見ても、サッカーはバスケットボールやハンドボールに比べ勝率が低い。俗にサッカー界の監督たちはリーグの順位表はウソをつかないと言うが、裏を返せばウソだらけだと言うことだ」

「我々は統計的なデータを突き詰める事で、測定基準を割り出している。詳細は言えないが、例として我々が作った好機の数、我々が防いだ好機の数、ペナルティエリア周辺のデータなどを参考にしている。我々にも実践したいプレースタイルがあるが、利点ばかりを突き詰めている訳ではない。我々は改善のために常に非効率性や問題点を探している」

「過去1年間で私が学んだ大きな事は、サッカー界において頭脳明晰な人たちはブックメーカーでデータ分析をしているという事。彼らは偏見を持たず、合理的な考え方ができる」

 果たしてデータを取り入れたチームの快進撃はどこまで続くのか。移籍市場において『掘り出し物』の選手を安価で買い取り、欧州屈指の強豪クラブが取り入れているようなデータ解析でチーム改善を図る手法は、少なくともベンハム氏が所有する2つのクラブでは大成功を収めていると言える。

 ブレントフォードは現在の本拠地グリフィンパーク(1万2500人収容)から、2016年に完成予定のブレントフォード・コミュニティスタジアム(2万人収容)へと移転するが、ベンハム氏は1947年以来となる1部リーグ昇格を着実に狙っている。ブレントフォードが今後数年間で爆発的躍進を見せれば、『マネーボール』に倣うクラブが続出する時代が訪れるかもしれない。

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