2014.01.28

金満、無知、放縦…傍若無人な素人オーナーがプレミアリーグを侵食

スールシャール
カーディフのオーナーであるタン氏(左)と現監督のスールシャール氏 [写真]=Arsenal FC via Getty Images
ロンドン在住のサッカーライター。

文=藤井重隆


 今シーズン、プレミアリーグのオーナーによる傍若無人ぶりが史上最悪に達している。これまでにも、チェルシーのロマン・アブラモヴィッチ氏や、ニューカッスルのマイク・アシュリー氏による性急な監督交代や補強をめぐるチーム介入が毎年のように取りざたされてきたが、その傾向は他クラブにも飛び火し、悪化の一途をたどっている。

 ハル・シティのエジプト人オーナー、アッセム・アラム氏に至ってはクラブの歴史や伝統を無視し、「ビジネス的に響きがいいから」と、独断でクラブ名をハル・タイガーズに改名する申請を行い、抗議するファンに対して「死ねばいい」と吐き捨てた。

 今シーズンは前半戦の間に、すでに6名の監督交代が行われているが、最も酷かったのが昨年末にマーキー・マッケイ前監督を不当解任したカーディフだ。同クラブのマレーシア人オーナー、ヴィンセント・タン氏は米紙『USAトゥデイ』が「スポーツ界最低のオーナー」と称するほどで、同氏の放縦ぶりは常軌を逸している。

 タン氏は前監督を解任した直後、1月の移籍市場で、中国圏で縁起が良いとされる「8」の番号が選手の誕生日にあれば、レベルに関係なく誰でも獲得してよいとする考えをクラブ幹部に伝えたという。

 タン氏が縁起を気にしてクラブに変化をもたらしたのは、今に始まったことではない。2部にいた昨シーズン開幕前には、「アジア圏では青は哀惜、赤は繁栄や幸運を意味する」と、チームカラーを伝統の青から赤へと勝手に変更。さらにチームバッジにも中国で「皇帝」の象徴である竜をファンの反対を押し切って無理やり施すなど、ファンからの反感は増す一方だ。

 2部で首位を快走していた昨シーズン終盤戦には、カーディフ・ドラゴンズへの「クラブ改名も考える」と発言したことが波紋を呼び、今シーズン序盤戦には強化担当部長のイアン・ムーディ氏を不当解雇。後任に息子の友人で、就労経験のためスタジアムの塗装を担当していた23歳のカザフスタン人を就任させたが、2カ月後にビザの問題で退任させるという珍事が起こった。

 そして、昨年末に突如として起こったマッケイ監督の不当解任劇。その理由として、クラブは選手補強をめぐる相違点があったと説明したが、プレミアリーグ初昇格に貢献した監督の解任にファンは憤慨した。その怒りは抗議デモに発展し、「タン、出て行け」と書かれた横断幕が毎試合で掲げられるようになった。

 一部イギリスメディアによると、タン氏は昨シーズンのチームスタッツを見るなり、GKデイヴィッド・マーシャルが無得点であることについて激怒し、守備陣の得点が少ない理由を幹部に問いただしたとされる。これほどまでにサッカーに無知なオーナーは、ブックメーカーで後任監督候補にも挙げられるほどだった。

 プレミアリーグが多大な収益をあげる一方、サッカーに無知なオーナーたちの野放図な行動に監督、選手、ファンは頭を悩ませている。オーナーの投資によりクラブが救われている部分は確かに大きいが、その代償として歴史や伝統が傷つけられるのは支離滅裂な話である。

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