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【インタビュー】CL開幕目前! 戸田和幸氏が語る注目ポイントやグループステージ展望

2019.09.13

 9月17日に開幕を迎える2019-20シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)。王者リヴァプールを始めとするプレミア勢が再び強さを示すのか。バルセロナやレアル・マドリードらリーガ勢が復権を果たすのか。ユヴェントスやバイエルン、パリ・サンジェルマンといった優勝候補はどのような戦いを繰り広げるのか。そして長友佑都、南野拓実、奥川雅也、伊東純也の日本人4選手は、世界最高峰の舞台でどんなプレーを見せるのか――。

 今シーズンも見どころ満載のCLがいよいよ幕を開ける。そこで『サッカーキング』ではDAZNでCLの解説を担当する戸田和幸氏に話を聞き、注目のグループや展望などを語ってもらった。

■グループステージの注目ポイント

――特に注目しているグループはありますか?
すごく込み入ったところまで見たら全部楽しいんでしょうし、人によって違うと思いますが、一般的には「F」が注目でしょうね。でも僕はグループCが気になっています。

――理由を教えて下さい。
マンチェスター・Cvsアタランタが見たいです。2017年にS級ライセンス取得のための海外研修でイングランドに行ったんですけど、僕はその前から(ジャン・ピエロ)ガスペリーニ監督のサッカーが面白いと思っていたので、アタランタの試合を見るためだけにイタリアまで行ったんです。最近になって日本でも「アタランタ、いいね」と言われ始めていますが、正直遅いです(笑)。クラブの規模で考えると、よくここまできたなと思います。選手層を見たら、2つの大会を並行して戦うのは簡単じゃない。マンツーマンをベースにした非常に特徴的な守備、ドゥバン・サパタとアレハンドロ・ゴメスを中心とした速い攻めが得意な“いやらしい”チームですし、こういう色のあるチームがシティとぶつかったときにどうなるのかが楽しみです。おそらくシティがやっつけちゃうんだろうなとは思いますけど、そのやっつけ方を見てみたいですね。

――グループAはいかがでしょう。
A組は名前的にすごくきらびやかなチームが2つあって、ガラタサライには長友佑都選手がいますね。パリ・サンジェルマン(PSG)とレアル・マドリードの試合は単純に面白いでしょうし、そこにガラタサライがどれだけやれるのか、というところが注目でしょう。レアル・マドリードはプレシーズンから見ていて、ちょっと苦労しているなと思いますし、PSGもケガ人が多い。だけど選手たちの質は高いですから、やっぱり楽しみですね。

――長友選手は抽選結果を受けて「ワクワクする」とコメントしていました。
そうですよね。CLに出るということがまず素晴らしいと思いますし、そのなかで戦う相手としたら申し分ないというか。サンティアゴ・ベルナベウ(レアル・マドリードの本拠地)でプレーできるわけですからね。もちろんグループステージを突破するためには(対戦相手は)ほかのクラブのほうがよかったのかも知れないですけど、選手としては燃えると思います。

長友佑都

[写真]=Anadolu Agency via Getty Images

――グループDはなかなか厳しい組だなという印象なのですが。
(ピーター)ボス監督になってすごく攻撃的になったレヴァークーゼンが、ユリアン・ブラントが抜けたチームでどれぐらいやれるかがポイントですよね。ユヴェントスとアトレティコ・マドリードは、簡単に言えば曲者じゃないですか。ユーヴェは(マウリツィオ)サッリ監督が就任して、(マッシミリアーノ)アッレグリのときとは変わると思いますけど、すごく哲学的な人でスタイルをもってチーム作りをします。アトレティコはベースは変わらないけど若くて素晴らしい選手が入ってきた。基本的には守備から速く攻める形になるんでしょうけど、そこにスーパータレントが加わったので楽しみです。順当ならユーヴェとアトレティコになりますけど、そこにレヴァークーゼンがどれだけ割って入れるか。あとはロコモティフ・モスクワとのアウェイゲームは移動が大変なので、そこをどう乗り切るかも鍵を握りそうです。

――アトレティコの若きスーパータレントのお話が出ましたが、印象はいかがですか?
ジョアン・フェリックスですよね。新しい世代の選手だなっていう感じがします。インテリジェンスが高いですし、いろいろなポジションをこなすことができるし、テクニックレベルも非常に高い。(ケヴィン)デ・ブライネとかもそうなんですけど、ボールを持たないときのポジショニングで味方を助けたり、ランニングで先手を取ったり、いろんなことができる。もちろんオン・ザ・ボールの質も高いです。(J・フェリックスの加入により)それだけチームの幅が増えると思うので楽しみですね。

J・フェリックス

[写真]=Icon Sport

――グループEは王者リヴァプール、そして日本人選手所属クラブが2つ入りましたね。
リヴァプールとナポリは昨シーズンも同じグループで、1勝1敗でしたね。基本的にはこの2チームが突破するとは思います。ただザルツブルクには南野拓実選手と奥川雅也選手、ヘンクには伊東純也選手がいるので、日本人としては注目が集まるグループではないでしょうか。

――第1節では早くもザルツブルクとヘンクの対戦が組まれています。
直接マッチアップするかと言ったらそうではないですけど、CLの舞台に日本人がいて、日本国内でCLを見る人が増えるのは非常にいいことだと思います。ヘンクの試合は少しチェックしていて、伊東選手はベルギーでも速いんだなと感じます。チームとしてどこまで戦えるかはわからないですけど、最高のステージでどれぐらいできるか期待したいですね。

――注目度の高いグループFについてもお聞かせください。
(アントニオ)コンテが監督に就任したインテルが追いかける感じになりそうですけど、ドルトムントもリーグ戦で黒星を喫していましたよね(第3節でウニオン・ベルリンに敗戦)。いいチームだとは思うんですが、ネガティブトランジションにやや不安があります。

――バルセロナも(リオネル)メッシ不在の影響からか、本調子ではないように見えます。
メッシがいるとメッシのチームになりますし、いなければいないなりのチームになります。逆に(アントワーヌ)グリーズマンとメッシ、(ルイス)スアレスが揃っちゃったらどうやって使うんだろう、と思いますね。今は全員が揃わない難しさがあるのかも知れないですけど、揃ったら揃ったで難しさが出そうですよ。

メッシ

[写真]=Getty Images

――そこでうまくハマらなければ、下手をするとグループステージ敗退ということも……?
下手はしないと思いますよ(笑)。しないと思うんですけど、中盤をどうするかという問題もある。(セルヒオ)ブスケツは素晴らしい選手ですけどアスリートではないので、グリーズマン、メッシ、スアレスが揃って出たときには走り回ってボールを取るタイプの選手がいいのかも知れないですし、メインを生かすための選手が必要になるわけです。そういう意味では(イヴァン)ラキティッチはすごく重宝されていたけど、今シーズンはそうではない。ただ、リヴァプールのようなレベルのチームが相手だとそういうアンバランスな部分が露呈することもあるでしょうけど、グループステージではそこまで困ってしまう試合はないと思います。イタリアのチームはそういう相手を困らせるのが得意だったりするので、コンテがどのような戦い方を選ぶのか注目はしています。

――そのほかにグループステージの注目ポイントはありますか?
やっぱりどこのグループにも、明らかにこのチームが一番苦しそうだな、っていうところがあるじゃないですか。そういうチームはチェックしておこうと思います。CLに出てくるということは自国リーグでは強いんだけど、この舞台にきたら必ずしもそうではなくなる。となるとリーグ戦と同じことをやっていたら絶対に勝てないわけです。ですから戦い方にどれぐらい幅があるのか、ビッグクラブをやっつけるために特殊な、その試合だけのプランがあるのかとか、そういうところを見ると面白いかも知れないですね。

――例えばJリーグとCLでは、視聴するファン層が違うと思います。解説者としてその違いを意識した言葉選び、使い分けなどはしていますか?
使い分けています。どちらもサッカーは好きだと思うんですけど、僕の感覚ではJリーグを見る人はJリーグ、ヨーロッパを見る人はヨーロッパという感じがしている。もちろん両方見る人もいるとは思いますが、深い時間にわざわざサッカーを見る人は、それだけサッカーにのめり込んでいる人が多いと思います。このレベル(CL)になると僕もわからないことはいっぱいあって、いわゆる戦術の要素がすごく色濃くなる。そのうえで個のレベルも高いから驚くようなプレーもたくさん出てくる。そういうのはなるべく一つ残らず把握して、うまくまとめて伝えたいです。だから当然、言葉が多くなるんだけど、僕は(解説を)始めたときから多いので、それでいいと思ってやっています。ダメだったら苦情がくるはずなので(笑)。

――戸田さんの解説を聞いてサッカーを学んでいるファンもたくさんいると思いますが、試合を見て勉強するために抑えるべきポイントはありますか?
サッカーとはどんなスポーツなのかという解釈をできるだけ正しく持ったほうがいいと思います。要は局面、局面とか個人技とかっていう以前に、スポーツとしてどういうものが必要なのか。11人でチームが構成されていて、相手も11人。1個のボールを奪い合って、できるだけ相手ゴールに入れるっていうことじゃないですか。ボールは1個しかないわけだから、もちろん全員でこのボールを扱うわけじゃないけど、意識としては11人でこのボールを保持したり奪いにいくためのアクションを起こさなきゃいけない。ということはなにか共通なものがなきゃいけないですよね。それが配置にも表れますし、いわゆる戦術になる。そういったベースがあってこのスポーツが成り立っているということを頭に入れて見たほうがいいと思います。

――まずは根本的な部分を理解する必要があるということですね。
そうです。絶対に1人ではプレーできないスポーツのはずなので、いくらメッシやクリスティアーノ・ロナウドがドリブルで相手を抜いてゴールを決めたとしても、必ずほかの選手がどこかでコースを作ってくれたり、走って相手を引っ張ってくれたりっていうのがあるわけです。それがサッカーなので。つねにグループが存在し、そしてそのグループ、チームを作っている監督がいる。もっと言えば、監督を選んでいるのは誰かっていう話になると、クラブという組織がそこにはある。ピッチ上で行われていることは組織で決められたことがベースに来るので、クラブにビジョンがあればそれに合致した監督と選手が揃えられて、目指すところに到達しやすくなります。そういうのが全部、ピッチの上にはありますから。だから実際に試合が始まったら、僕はまず配置を見ます。そしてそれぞれのチームの強み、ボールを持つことからゲームを進めるチームもあれば、守備からゲームを作るチームもある。まずはそこを把握して、このスポーツは必ず相手がいるので、その相手に対してなにをしようとしているのかをいつも見るようにしています。

サッカーは非常に複雑なスポーツで不確定要素が多い。だからサッカーはミスのスポーツと呼ばれている。だからこそサッカーに存在する多くの不確定要素をできるだけ少なくし、自分たちが意図したプレーをより多く作るためにゲームモデルと呼ばれるものが存在し、戦術が必要となっています。だからそんな簡単にはわからないし言語化もできないですけど、そこを目指さないと永遠にわからないので。僕もわかっている自覚はないけど、わかっているフリをせずに正直に言葉にしていくことを考えています。ただ一方で、すごいプレーはすごいし、全部を噛み砕いて説明する必要もないと思っています。「わー、すげー」だったらそれでもいいし、基本的にサッカーはパッションだし娯楽。そんな細々見るんじゃなくて、単純に楽しみたいという部分もあるので、そのバランスはつねに考えないといけないと思いますね。授業をしているわけではないので。だけどなにかアクションを見つけたら「話さなきゃ」と思ってしまうので、我慢というか、どれぐらい情報を捨てればいいのかっていうせめぎ合いもあります。言いたいけど、やめとこうか。ここまで言ったらしつこいな……とか。「ほら、今もそうだよ! 見ました?」とか本当は言いたいんですけどね(笑)。「今のデ・ブライネ、見ました?」みたいな感じで話してみたいなと思うときもあるんですけど、僕はまだ、それはできないな(笑)。

――これまでテレビで見るのが当たり前だったサッカーが近年、スマホやタブレットで観戦できる時代になりました。この環境の変化をどう感じていますか?
いろんな見方があっていいと思います。つねに時間と場所を確保してテレビの前に座って見るっていうのは大変ですしね。ハイライトだけ見たい人もいれば大きな画面でゆっくり見たい人もいる。通勤・通学中にスマホで試合を見て、その人がそれで楽しむことができるならいいと思います。いろんなニーズに合わせてサッカーが見られる環境っていうのはあって然るべきだし、その体制が整ったということは、よりサッカーに触れる人が増えるはずなので、いいんじゃないですかね。ただ、サッカーはすごく複雑なものが絡み合っていて、なおかつ集団で意思決定をしないといけない、すごく難しいスポーツなので、僕自身はあまり簡単に伝えすぎないようにしています。でないと、サッカー選手のステータスも上がらないので。「すごい難しいんですよ」、「監督ってめちゃくちゃ大変なんですよ」っていうところから話ができるようにしています。

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