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ネイマール封じで奮闘 日本守備陣の大黒柱に急浮上した板倉滉、W杯への期待高まる

2022.06.07

ネイマールと対峙する機会も多かった板倉 [写真]=Getty Images

 新しい姿となった国立競技場で行われた初のA代表戦、21年ぶりの“王国”凱旋、2002年日韓ワールドカップから丸20年とさまざまな注目要素が重なった6日のブラジル代表戦。日本代表としては0勝2分10敗という負の歴史に終止符を打つべく、貪欲に勝利を狙いに行った。

「自分は過去3回やって全部3点以上取られていますし、早い段階で点を取られるケースが多かったので、大事なのはどれだけ0-0の時間を長くするかだと思います」と2012、2013、2017年にブラジルと対戦している吉田麻也も話したように、失点しないことが最重要テーマなのは間違いなかった。

 開始早々の2分にネイマールのヒールパスが2トップの相棒、ルーカス・パケタに渡り、強烈なシュートが左ポストを直撃した際は、最終ラインの面々もヒヤリとしただろう。それが入らず、冷静さを取り戻した日本は積極果敢にセレソンに食らいついていく。

 その筆頭が吉田とセンターバックでコンビを組んだ板倉滉。直後の4分、ネイマールに激しくボールを奪いに行って倒したシーンを手始めに、遠慮なくぶつかっていったのだ。

「ブラジルは個々に頼ってくる。もちろんチームとしてもすごいものはあるけど、局面で勝てればチャンスは何個かある。僕はDFなので、どれだけ強烈な攻撃陣を抑えられるかがカギになってくる」と試合前から闘志を燃やしていた背番号4は、並々ならぬ気迫を前面に押し出したのだ。

 そして最初の攻撃チャンスにも絡む。中山雄太の左FKに対して鋭く反応。ブラジル守備陣の背後に飛び出し、打点の高いヘッドをお見舞いした9分のチャンスはゴールの匂いを感じさせた。枠に飛ばず、シュートにはカウントされなかったが、本大会になればリスタートの重要性はより一層、増してくる。

 今の日本には、南アフリカW杯の遠藤保仁、本田圭佑のように直接FK弾を沈められるキッカーはいない。だからこそ、186センチの高さを誇る彼のヘディング力がモノを言う。その一端を示せたのも大きかった。

 その後も板倉は最終ラインで体を張り続け、ネイマールの侵入を再三、止め続ける。前半をスコアレスで折り返し、後半に入ってからボール保持やビルドアップの時間を増やしてきた日本に対し、セレソンを率いるチッチ監督も焦燥感をのぞかせる。そしてベンチに置いていたガブリエル・ジェズス、リチャーリソンといった面々を次々と投入。強引に1点を奪いに来た。

板倉滉

フル出場を果たした板倉 [写真]=兼子愼一郎

 厳しい状況下でも、板倉は冷静さを失わず、的確なポジショニングとカバーリングでピンチを防ぐ。ネイマールの巧みな仕掛けで、リスタートの回数が多くなればなるほど、最終ラインにとっては苦しかったが、GK権田修一の好セーブもあって無失点が続く。吉田が描いていた「0-0のまま長い時間戦う」というシナリオ通りの展開になった。

 だからこそ、残り13分でのネイマールのPK決勝弾は痛かった。ネイマールの左からの仕掛けに対応が遅れ、リチャーリソンの侵入を許し、遠藤航が足を引っかける形になった。

「本当にあのクラスの選手は実際に対峙してみないとわからない部分がたくさんあるんでしょうけど、常に先手を取って、相手より先にというのを意識しないと止められないんじゃないかと思います」と板倉は試合前に語っていたが、PK献上のシーンはまさに「先手を取れない劣勢」が積み重なって生まれた。

 針の糸を通すほどの小さな綻びが積み重なり、敗戦という結果に表れる。それがサッカーの厳しさだ。フローニンゲンとシャルケで修羅場をくぐってきた板倉も、ハイレベルの怖さと難しさを痛感したのではないか。

 ただ、それ以外はほとんどブラジル攻撃陣と堂々と対峙し、90分間奮闘。「日本代表のマン・オブ・ザ・マッチ」という声も聞こえてくるほどの高いパフォーマンスを見せつけた。来シーズンの身の振り方が決まっていないため、今後の動向は不確定要素もあるが、吉田と冨安健洋の両CBの間に割って入るだけの存在感は確実に示したと言っていい。

 本大会でドイツ、スペインという強豪と立て続けに対峙することを考えると、高い能力を誇るCBが何枚もいることは日本にとって大きなプラス。試合によって組み合わせを変えたり、3バックにしたりとバリエーションを広げられるのもメリットだ。

 板倉はその仕事を確実に遂行できるし、ボランチやアンカーもこなせる。2日のパラグアイ代表戦でも途中から遠藤に代わってアンカー役を務めていた。ブラジル戦を見ても、遠藤が攻守の要なのは紛れもない事実だが、タフさと激しさがファウルに直結する。この試合でもイエローカードをもらっていて、本番でも出場停止を視野に入れる必要がありそうだ。そこで板倉がしっかりと中盤の底を引き締めてくれれば、森保一監督もチーム全体も安心して戦える。

 3年前の2019年6月。コパ・アメリカでのウルグアイ代表戦で国際Aマッチデビューを飾った頃とは比較にならないほど、たくましさと安定感を高めた板倉。今や森保ジャパンに不可欠な戦力になった。最終ラインの大黒柱の1人としてカタールW杯に挑むべく、6月シリーズの残り2戦でもワールドクラスの守備力を遺憾なく発揮してほしいものである。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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