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【コラム】最終予選での紆余曲折を力に…山口蛍、豪州戦勝利への覚悟「相当な責任感がある」

2017.08.28

山口蛍は「ホームで決めるのが一番いい」と豪州戦勝利を誓った

 2018年のロシア・ワールドカップ出場に王手をかけている日本代表。しかし8月31日のオーストラリア(埼玉)、9月5日のサウジアラビア戦(ジッダ)のいずれか1試合に勝たなければB組2位以内は確保できない。「プレッシャーというか、相当な責任感があります」と日頃はあまり感情を表に出さない山口蛍セレッソ大阪)からも普段以上の緊張感が伺えた。

 その山口にとって、今回の最終予選は紆余曲折の連続だった。1年前の9月1日に行われた初戦・UAE(アラブ首長国連邦)戦(埼玉)。彼はベンチスタートを強いられた。ドイツ・ハノーファーに赴いてわずか半年でJ2を戦っていた古巣復帰を決断したため、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督から「今の状況ではA代表の先発になるのは難しい」と苦言を呈された直後だったからだ。「代表には(J1復帰するまでの)半年間は呼ばれない覚悟をして日本に戻った」と本人も話しており、当時は自信喪失気味だった。

 だが、代役ボランチと位置付けられた大島僚太(川崎フロンターレ)が2失点に直結するミスを犯し、日本はUAEに初戦黒星を喫してしまう。窮地を脱するべく、ハリルホジッチ監督は次戦・タイ戦(バンコク)で山口の再抜擢を決断。その重要なゲームで彼は目覚ましいパフォーマンスを披露し、信頼回復への大きな一歩を踏み出した。

 信頼を絶対的なものにしたのが、自身の26歳の誕生日だった10月6日の第3戦・イラク戦(埼玉)での劇的決勝弾だ。あのゴールが生まれていなければ、ハリルホジッチ監督続投も、日本のロシア行きの可能性もいち早く消えていたかもしれなかった。それだけ非常に価値の大きな仕事に他ならなかった。

 ここから10月のオーストラリア戦(メルボルン)、11月のサウアジアラビア戦(埼玉)、3月のUAE(アルアイン)・タイ(埼玉)2連戦と最終予選で4試合連続フル出場。3月のタイ戦では長谷部誠(フランクフルト)に加え、今野泰幸(ガンバ大阪)の負傷離脱もあり、山口は絶対的ボランチと位置付けられた。にもかかわらず、「『本職のボランチは俺しかいない』という周りの声で気負ってた部分があった」と本音を吐露したように、まさかのミスを連発。酒井高徳(ハンブルガーSV)との不慣れなコンビもあって中盤をコントロールしきれなかった。

 汚名返上に燃えた6月のイラク戦(テヘラン)も、直前のシリア戦(東京)での右すね打撲で欠場。チームも1-1のドローという不完全燃焼の結果に終わった。代役の井手口陽介(G大阪)も頭を強打し途中交代を強いられたが、「陽介はケガをするまで非常にいい仕事をしたと思う」と川島永嗣(メス)も太鼓判を押したように、21歳の若きボランチが一気に評価を上げた。「陽介は若いし、全然ガンガン行ける。自分の若い頃もあんな感じだったのかな…」と山口自身も後輩の追い上げに大きな刺激を受けた様子だった。

 浮き沈みの激しい1年間を経て、今回の最終予選天王山を迎えることになるが、山口は「どのポジションも競争は厳しいし、結局は監督が決めること。メンバーに入ったら入ったで頑張ればいいだけ」とスタメンへの危機感を抱きながら、努めて平常心でオーストラリア戦に挑もうとしている。

 アウェイ戦経験者として宿敵の強さは肌で体感しているが、相手は前回対戦時の4バックとは異なる3バックを6~7月のFIFA コンフェデレーションズカップ ロシア 2017でテスト。「それがすごくうまく機能していた」と彼自身もその変化に脅威に感じているという。

「前回の対戦は1回忘れた方がいいと思うし、相手は次も3枚で来るかもしれない。それに合わせて臨機応変にやらなくちゃいけない。相手は負けてる状況、引き分けの状況で高い選手を入れて前に放り込んでくるかもしれないんで、それを後ろの選手が跳ね返したり、うまく五分で競り合ってるところのセカンドボールを拾って自分たちのボールにできれば、流れもこっちに傾いてくる」と山口は山口なりに勝負のポイントを見極めつつ、冷静に対処していくつもりだ。

 ハリルホジッチ監督からは、24日のメンバー発表会見で「蛍にはより攻撃的なプレーを見せてほしい。もっとできる」と強く要求されたが、本人は「攻めよりバランス」という堅実な姿勢を崩そうとはしていない。

「自分がバランスを取らないと中盤がメチャクチャになってしまうんで。ホントはもっと攻撃に行きたいけど、チームが勝つためには仕方ないんで、やってほしいって言われても、まあ、難しいですけど…(苦笑)、チームが勝つには自分が自重して、犠牲にならなくちゃいけないとは思うんで」と黒子に徹する職人らしい言い回しで、日本の6大会連続ワールドカップ出場のために身を粉にして働く覚悟だ。

 前回の2014年ブラジル大会は長谷部や本田圭佑(パチューカ)ら上の世代に連れて行ってもらう形だったが、今回は自分たちの世代で出場権を手にして世界舞台に立たなければならない。そんな思いは少なからずある。「オーストラリアには勝てていないってのはあるかもしれないけど、やっぱり勝って決めるのが一番いい」と本人も言うように、31日の大一番は勝ち点3だけを見据えて、そこに集中してもらいたい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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