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リオ五輪崖っぷち…窮地のなでしこに必要なのは“平常心”、這い上がってきた経験を信じて

2016.03.03

韓国戦がドローに終わり、うなだれるなでしこジャパンの面々 [写真]=Getty Images

 リオデジャネイロ・オリンピック、女子サッカーアジア最終予選・第2戦の韓国女子代表戦で1-1と引き分けたなでしこジャパンが、崖っぷちに立たされた。なでしこジャパンは第2節を終えて勝ち点1に留まり、順位は6チーム中5位。残り3試合をすべて勝ったとしても本大会出場が自力で突破は不可能となった。

 なでしこジャパンは初戦のオーストラリア女子代表戦から、先発6人を入れ替えて宮間あやがトップ下に入る[4-2-3-1]を採用。GK福元美穂や近賀ゆかりといったベテラン勢が起用された。それに対して韓国は、INAC神戸レオネッサでプレーする汗かき役のチョ・ソヒョンや、チェルシーレディースでプレーする司令塔チ・ソヨンなど、初戦と同じメンバーだった。

 なでしこジャパンは初戦と比べると選手間の距離がよく、韓国が前線からプレスをかけて来なかったために、比較的余裕を持ってボールを運ぶことができた。しかし90分で合計15本のシュートを放ったものの、奪った得点は1点のみだった。70分に韓国にPKを与えてしまい、それを福元がセーブした時には会場全体が大きく沸き、流れはなでしこジャパンの方に傾いた。そして84分に岩渕真奈が先制点を決めた時には、盛り上がりは頂点に。しかし、その3分後にGK福元と熊谷紗希が交錯して失点し、勝ち点1を獲得するに留まった。

 格下の韓国を相手に、ゴール前での落ち着いたプレーが少なかったことが勝ち切れなかった要因だろう。ポストプレーの精度が低く、この日のなでしこジャパンの前線には起点がなかった。

 今予選に向けた2回の沖縄合宿では攻撃の形を何度も確認し、より得点の可能性が高いプレーを選択するように練習してきたが、多くの選手が可能性の低いプレーを選択していた。これは味方のポジショニング、そして相手のポジショニングをしっかり把握しながらプレーできなかったからだ。韓国戦はいい状況判断に欠けたプレーの連続だった。今回の韓国戦のようなサッカーを続けていては、仮になでしこジャパンが五輪本大会出場を決めたとしても、その舞台で大きな結果を残すことは非常に難しい。

「ゴールにならない少しのズレが何なのか。考えている時間はない」と宮間が話せば、大儀見優季も「守りが堅く、決定的な形を作るのは簡単じゃなかった」と話し、必勝で臨んだ韓国戦だっただけに、そのショックは大きかった様子。試合後に選手たちが通るミックスゾーンでは、「あと3試合ある」、「勝ち点1は取れた」といった明るい話題を記者が始めなければ、選手たちは一様に暗い顔のままだったことが気がかりだった。

 しかし他チームの勝敗を見ると、2連勝で頭ひとつ抜け出したオーストラリアと、2連敗のベトナム女子代表を除いては混戦状態となっている。これは、今のなでしこジャパンにとって不幸中の幸いである。

 川村優理のハードマークは、この日の韓国の攻撃をストップさせるひとつの大きな要因だった。福元のプレーも、失点シーンを除いては安心して見ることができた。岩清水梓、鮫島彩、阪口夢穂ら、韓国戦に出場しなかった選手たちはフレッシュな状態で次の中国女子代表戦に臨めるはずだ。この日の韓国戦で得た勝ち点1を生かすためには、次の中国戦で確実に勝ち点3を奪うことが不可欠だ。

 なでしこジャパンには瀕死の状態から何度も這い上がってきた経験がある。2011年のドイツ・ワールドカップでは、グループリーグ最終節のイングランド女子代表戦に敗れたため、決勝トーナメントで優勝候補のドイツ女子代表との対戦が決まっても競り勝った。2012年のロンドン五輪ではグループリーグ3試合のうち2試合で引き分けたが、その後にはフランス女子代表など強豪を抑えて準優勝まで登り詰めた。

 窮地に陥ったチームを立て直し、大きな結果を残してきたという、この何物に代え難い貴重な経験は、今回の予選に参加している6チームの中でも、なでしこジャパンが随一と言っていいだろう。今は自らの経験を信じて、前向きに、そして平常心でプレーしていくべきだ。

文=馬見新拓郎

By 馬見新拓郎

10年以上にわたり女子サッカーを追いかける気鋭のライター

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