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【開幕特集】岩尾憲×名良橋晃「自分たちと向き合って残留を掴み取りたい」「おじさんは応援しています!」

2021.02.23

 DAZNとパートナーメディアで構成する『DAZN Jリーグ推進委員会』が、2021シーズンの明治安田生命Jリーグを盛り上げるための特別企画を始動する。

 毎週火曜日21時からサッカーキング公式YouTubeで配信している『週刊J2』、隔週レギュラーとしてJ2愛を語りまくっている元日本代表DF名良橋晃が“ヒーロー”と崇める人物……。それは徳島ヴォルティス岩尾憲だ。J2優勝を果たしてJ1に臨む2021シーズン開幕直前、ついに“ケンさん×ナラさん”対談が実現した。


取材=名良橋晃
構成=三島大輔

一つひとつ紐解いていくと少なからず変化はある

[写真]=J.LEAGUE

名良橋
「さて、憲さん。徳島としては7シーズンぶりにJ1で戦うことになりますが、現在のチームの状況はいかがでしょう?」

岩尾
「リカルド体制からのスタイルを継続しつつ、プラスアルファでチームを強化するというニュアンスで今シーズンはスタートしました。ボールを握る、ボールを奪われたらすぐに奪い返す。言葉としては同じに聞こえるかもしれませんが、プレーとして一つひとつ紐解いていくと少なからず変化はありますね」

名良橋
「やはり今シーズンはダニエル・ポヤトス監督が新たに就任したことが徳島にとっての大きなトピックスだと思います。ポヤトス監督はどんな方ですか? 憲さんの印象を聞きたいです!」

岩尾
「選手やスタッフの意見をよく聞きますし考え方もかなり柔軟で、みんなで一緒に意見を出し合ってすり合わせていく作業を日々繰り返しています。実際にミーティングで話してみてもすごくいい方ですし、人間力が高そうだなというイメージは持っていますね。戦術に関しては“サッカーマニア”というか、スペイン人監督あるあるなのかどうか分からないですけど、戦術盤での説明は上手です!」

名良橋
「リカルド・ロドリゲス監督(現浦和レッズ)も同じスペイン人ですけど、どのあたりに違いを感じますか?」

岩尾
「就任初年度という意味で考えると、リカルド監督の方が頑固だった気がします」

名良橋
「なるほど、そうなんですね!」

岩尾
「ポヤトス監督はもう少し柔らかいイメージです。リカルド監督とはまた違う個性を持っていると思います」

名良橋
「それから今シーズンの新加入選手の印象についても聞きたいのですがどうでしょう?」

岩尾
「宮代(大聖)の狭いエリアでもドリブルで相手を剥がす、ターンしてゴール前まで持っていくみたいな能力は、やっぱり『フロンターレで揉まれているな』という印象です。なので、僕たちが彼のところまでどれだけボールを運べるかが大事だと思っています。ジョエル(藤田譲瑠チマ)に関してですけど、いろいろな役割が求められるボランチというポジションで、あれだけの技術を遜色なく発揮できるというのは、本当に逸材だなと感じる部分はありますね。しかも、まだ19歳という年齢で。そこは一緒にやってみて感じる部分です」

名良橋
「開幕戦はアウェイで大分トリニータと対戦しますが、憲さんから見た大分の印象を聞かせてください」

岩尾
「J2時代からボールを握るチームですし、後ろからビルドアップしていってシャドーの選手が決定機を作るイメージです。あとウイングの選手はかなりスピードがあって、クロスのタイミングも少し早く上げてくる印象を持っています。攻撃は本当に多彩ですね」

名良橋
「過去の対戦での何か思い出はありますか? その記憶はポジティブorネガティヴどちらでしょう?」

岩尾
「2017年の対戦(17年11月11日 第41節)は覚えていますね。最後の最後に渡(大生)が決めて勝って、プレーオフ圏に留まりました。ただ、お互いにボールつなごうとしている中、内容的にはだいぶ握られていた印象はありますね。相手としてやりやすいイメージはないです。18年に対戦した時は完全に僕たちがリトリートしたサッカーを展開したので、お互いのスタイルでぶつかり合ったのはその一度だけですね。大分に動かされた、相手を動かす力があるチームだと思っています」

名良橋
「誰か一人というのは難しいと思いますが、警戒すべき選手は誰でしょうか?」

岩尾
「ポイントとしてはGKの選手でしょうね」

名良橋
「たしかに後ろからつなぐという意味ではキーマンですね。大分の10番・野村直輝選手はかつての仲間ですが、意識する部分はありますか?」

岩尾
「もちろんです。結局あのシャドーでプレーする選手が最後の決定機で絡んでくるので、GKとシャドーの選手の2点は頭に入れておかないとですね」

名良橋
「おじさん的には憲さんが徳島のキープレーヤーだと思っているんですけど、憲さん的視点での徳島のキーマンを聞きたいです!」

岩尾
「誰か一人というのは難しいですけど、ポジション的にはセンターバックの選手かなと思います」

名良橋
「内田(航平)選手、福岡(将太)選手らセンターバックの選手は、攻守で鍵を握るでしょうね。マイナーチェンジもあるという話もしてくれたので、開幕戦はしっかりと注目するようにします!」

何を持って残留できたのかを明確にしたい

[写真]=TOKUSHIMA VORTIS

名良橋
「さて、話題を少し変えようと思います。昨年おじさん宛で憲さんのサイン入り背番号8のユニフォームをいただけて……。おじさんにとっては“ヒーロー”なんですよ! それくらい憲さんは雲の上の存在というか、プレーヤーとしても人間性という部分でもすごく尊敬しています。では、岩尾憲にとってのヒーローはどなたでしょう?」

岩尾
「プレーヤーでいうとヤットさん(遠藤保仁選手)ですかね。擦り切れるほどビデオを見ましたよ」

名良橋
「プレーヤーとしての特徴としてはすごく似ていますよね。どんなところに影響を受けましたか?」

岩尾
「パスの“質”ですね。強さであったり、相手が来ていない方向に出すとか。結構当たり前のことですけど、そのパスをどのスピードで出すのか。そういったところはすごく勉強しました」

名良橋
「ヤットさんとの対戦経験は?」

岩尾
「それこそ公式戦での対戦は昨シーズンが初めてでした。あまり意識しないようにはしましたけど、夢が一つ叶った瞬間ではありましたね」

名良橋
「今シーズンの徳島で『ヒーローになってくれなきゃ困るぞ!』と期待している選手はいますか?」

岩尾
「垣田(裕暉)ですね」

名良橋
「具体的にはどんなところを?」

岩尾
「彼自身のポテンシャルに期待している部分も当然あります。やっぱりJ1だとどうしても外国籍選手が点を取っているんですよね。今後も日本サッカーが発展していくためには、外国籍選手の力で結果を出すということが、個人的には必ずしも良いことだとは限らないと思っています。そういった選手を止められる日本人選手がいたら良いわけですけど、近年の得点ランキングを見てもまだ外国籍選手が多いので。今では日本人選手もたくさん海外に行くようになりました。やっぱり今、Jリーグでプレーしている日本人選手としての意地というか、そこを塗り替えられるような若い選手が出てくると、また何かが変わると思っています。そういった選手が台頭するために何が必要なのかを考えていくと、その選手を生かす戦術、チームメイトの協力、信頼関係、クラブの体質……。本当にいろいろな要素が関係していると思うんです。もちろん個人個人の能力に差があるわけですが、そういった部分を組織で覆すことができるのであれば、また新しい可能性が見えてくると思っています。垣田に関してですけど決定力や判断力、まだまだ向上の余地があります。いきなりシュートを10本放って10本決めるというのは難しいですけど、判断の部分は価値観のすり合わせで今すぐにでも変えていくことができますからね」

名良橋
「なるほど、素晴らしい回答をありがとうございます! 昨年の天皇杯の話も少しだけ。ガンバ大阪との準決勝、残念ながら敗れてしまいましたが、J1クラブとの対戦はいかがでしたか?」

岩尾
「通用した部分に関してですけど、チャンス自体は作ることができたので、100回やって100回勝てないという感覚ではなかったです。ただ、攻守両面でボックス内のクオリティの差を感じました。経験値や攻守でできることの範囲が少し違いますね。何でもないところで待たれているというか、見られているというか。こっちが先手でやれている感じがないんですよね」

名良橋
「そこは今シーズンを戦っていく上でのポイントになりそうですね」

岩尾
「J2でボールを動かすと相手の守備に歪みが生じて空いてくる場所があるので、横に揺さぶって縦パスを入れるいわゆる“餌パス”みたいなことができました。守備での崩れが見えなかったので、ピッチに立ちながら『得点を取るのは大変だな』と思いながらやっていました」

名良橋
「今シーズンも引き続きキャプテンということで、キャプテンから最後に力強い意気込みをお願いします!」

岩尾
「今シーズンのレギュレーションは降格が4枠なので、まずはそこに入らないようにすること。とにかく大変なシーズンになるということは感じているというか、確信に近いものを持っています。ただ残留するのではなく、何を持って残留できたのかを明確にすると、その後のシーズンにも生きてくると思います。そういった確固たるものを見せたい。『なんで僕たちは残留することができたのか』『残留するってこういうことなのか』というプロセスを歩みたいと思っています。本当に何がなんでも残留しないといけないと思っているんですけど、くじ引き感覚で『残留できました』だと、そのハズレくじをいずれ必ず引くことになりますから。そうではない形で全員が協力し合い、助け合いながらやっていきたいと思います。難しいシーズンになることが分かっているからこそ、しっかりと自分たちと向き合って残留を掴み取りたいです」

名良橋
「J1の舞台で背番号8が輝くようにおじさんは応援しています! 徳島でお会いできることを楽しみにしてます。今日はありがとうございました!」

岩尾
「ありがとうございました!」

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