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徹底マークは成長の証…C大阪・坂元達裕が目指すのは「点が取れるドリブラー」

2020.08.10

FC東京戦に出場した坂元達裕 [写真]=J.LEAGUE

FC東京は中学の頃、お世話になったチーム。そこでユースに上がれなくて、悔しい思いを持って(前橋育英)高校、(東洋)大学とやってきたので、次(9日のFC東京戦)は大きな試合。賭ける気持ちは強いです。自分が成長したところをいい意味で見せつけられるようにしたいです」

 プロ2年目の今季、モンテディオ山形からセレッソ大阪に“個人昇格”し、今や攻撃のキーマンになっている俊英ドリブラー・坂元達裕。彼はJ1における初の古巣対決に燃えていた。首位を独走する川崎フロンターレの背中を着実に追いかけるためにも、この一戦は絶対に負けられなかった。


 背番号17に巡ってきた最初の決定機は前半11分。左ワイドに開いた清武弘嗣のクロスにタイミングよく飛び込み、左足ダイレクトで合わせたシュートシーンだ。しかし、この日、J1デビューを飾ったジュニアユース時代の後輩GK波多野豪に防がれ、惜しくもネットを揺らせない。

「とにかくダフらないように当てるだけだと思ったけど、真ん中にいってしまった。決定機であることは間違いなかったので、決めなきゃいけなかったです」と本人も反省の弁を口にしたように、この一撃が決まっていれば、C大阪は勝ち点3に大きく近づけたはず。それだけに悔やまれる得点機だった。

 それでもめげることなく、坂元は切れ味鋭いドリブルで積極的に局面打開を続けたが、FC東京のマークは想像以上に厳しかった。対面に位置した小川諒也が「坂元選手がキーマンだと試合前から言われていたので、タイトに行くようにしていました」と話すように、彼のみならず、安部柊斗やレアンドロまでもが激しく寄せてくる。かつてユース昇格見送りという屈辱を味わった古巣からそこまでのリスペクトを持って対応されたことは、坂元にとって1つの勲章と言えるかもしれない。

 結果的にはスコアレスドローに終わり、首位・川崎とのポイント差を7に広げられ、自身も今季2得点目を奪うことはできなかったが、「坂元、ここにあり」を示す好機になったのは収穫ではないだろうか。

 後半からピッチに立った都倉賢も、坂元の存在価値に太鼓判を押す。

「坂元は1対1になれば瞬間的にはがせる力があるし、個人戦術で相手をはがすのが彼の大きな役割。ドリブラーの仕事は取られる取られないに直結するけど、チームにとっても大きな武器なので、『取られてもいいからどんどん仕掛けろ』とつねに言ってます。それに相手が警戒して2対1で来れば、ほかの選手が空く。マークされることをネガティブに捉える必要はないですし、今日も2人に囲まれてもはがしていたシーンは何回もあった。これからもどんどん行ってほしいと思います」

 そうやってチームメートやロティーナ監督から絶大な信頼を寄せられる快足レフティだが、今季J1通算得点9と決定力不足に悩むC大阪により大きな貢献をしたいと願うなら、やはりゴールに直結する結果を残すしかない。8月1日の前節・湘南ベルマーレ戦でのPK奪取で「ようやくゴールに絡めた」と安堵していた坂元だが、それだけで満足しているわけにはいかないのだ。

「長所であるドリブルは去年からずっとやり続けてきていて、通用する実感を持っていますし、もっとできると思います。その反面、遠くからのロングシュートだったり、ドリブルの次のスルーパスが出せていないことが多い。ゴールにつながるプレーをもっともっとやっていきたいと考えています。正直、今まではそこまでシュートを打っていなかった。恐れてゴールを狙わなければ意味がないし、ゴールも決まらない。打てる時はどんどん狙っていきたいと思います」と彼自身も強調しているだけに、ここからが本当の勝負と言っていい。

 目下、C大阪の右サイドハーフは坂元に託されている感が強いが、バルセロナからも注目されたルーキー・西川潤が8月5日のYBCルヴァンカップ・浦和レッズ戦で今季公式戦初出場を果たした。そして、実績ある高木俊幸も長かったケガから復帰している。高木はFC東京戦では奥埜博亮と代わってFWに入ったが、尹晶煥体制ではサイドアタッカーで起用されていたため、超過密日程の今後は右の陣容に加わる可能性もある。

 新たな競争を強いられそうな坂元。こうした面々を大きく引き離し、攻撃陣の絶対的エースへと飛躍するためにも、やはり「点の取れるアタッカー」へと変貌する必要がある。ロティーナ監督もそう熱望しているに違いない。

 総得点23という驚異的な数字を残してリーグ8連勝とトップをひた走る川崎にストップをかけること。それが今のC大阪に託された最大の命題だ。伸び盛りの坂元はその火付け役になれる逸材。10代の挫折をバネにここまで這い上がってきた男には、まだまだ伸びしろがある。秘めたポテンシャルを最大限発揮して、ここからのゴール量産を大いに期待したいところだ。

文=元川悦子


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