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浦和のために全力で走った鈴木啓太「下手だけどそれだけは負けない」

2015.11.22

現役引退を表明した浦和MF鈴木啓太 [写真]=大木雄介

 今季限りで浦和レッズを退団することが決まっていた元日本代表MF鈴木啓太は、22日に行われた2015明治安田生命J1リーグ・セカンドステージ第17節、ヴィッセル神戸戦後のセレモニーで現役引退の意思を表明した。セレモニーを終え、記者団の取材に応じた鈴木は引退決断に至った経緯やクラブでの思い出などを語っている。

 退団セレモニーについて、「レッズと自分との関係を見つめ直す時間でしたし、ただただ感謝しかなかった」とコメントした鈴木は、現役引退を決断した経緯について、「本当に引退をするのか、オファーをいただいているチームに行くのか。まあ迷っていたところはありましたし、実際は自分自身としてもまだサッカーを続けられるんじゃないかという思いもあったのは事実です。その中で、退団するということを発表したわけですけど、僕はまだこのチームが大好きだし、このチーム以上の思いを持つチームには出会えないだろうし、それはサッカーを続けられるとしても、それが本当に正しいのかどうなのかと。今までのやり方であったり、自分が進んできた道とは違うものになってしまうといったことを考える中で、引退するという決断が徐々に固まっていった」と迷いがある中で、浦和レッズ以上のチームはないという思いから気持ちが固まっていったと説明した。


 そして最終的な決断をしたのはこの1カ月以内だと明かすと、「近しい人には伝えていましたけど、本当に皆さん(報道陣)を前に言うのもおかしな話ですけど、情報というのはすぐに回ってしまいますし、やはり僕は自分の口で伝えたかったという思いがあったので。まずは自分が本当にお世話になった人、それからサポーターだったり、スタッフだったり、そういう人に直接自分の言葉で自分の口から言えることがあったので、(報道陣の)皆さんには申し訳ないですけど、そういうふうになりました」と、メディアを通してではなく、自分の口から伝えたいという思いが強かったと主張している。

 セレモニーではチームメートのDF那須大亮とMF阿部勇樹から花束を受け取った鈴木。「本当にあの二人が並んでこっちに来るというのは、変な光景でしたけど、手ぐらいつないできてくれたらと思ったんですけどね(笑)」と冗談交じりに話すと、「同じ時間を共有してきた仲間ですし、プロに入った時からの仲間。その彼らよりも先にピッチを去るのはライバルとしてちょっと悔しい気持ちもありますけど、でも、本当に彼らにはこの先も頑張ってもらいたいですし、花束をもらった時に『まだまだあるからね』、『1月1日まであるから』という話をして。それが本当に実現できるように頑張りたいなと思います」と盟友への思いを語り、元日の天皇杯決勝を戦うことを目標に掲げた。

 また、仲間から胴上げをされ、背番号と同じ13回宙を舞った鈴木は、「13回って言われた時にちょっとそれ長いだろうって思いましたけどね。胴上げってこういう気分なんだというのを味わえたので、その分、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)を胴上げしたいですし、チャンピオンシップ、天皇杯で優勝してもう一度僕を胴上げしてほしいなと思います」と、タイトルを獲得してもう一度胴上げを経験したいと話すと、続けて浦和レッズでの思い出を次のように振り返った。

「僕みたいな下手くそな選手が浦和レッズと契約してもらえたということは、奇跡に近いというか。よく僕みたいな選手を拾ってくれたと思います。でもその日から僕のレッズでの人生が始まって、いいこともあって悪いこともあって。すべてはそこから始まったという事実がある」

「いいプレーはしてきていないですけど、僕が自信を持って言えるのは、チームのために全力で走ってきたし、それは自分の中で、下手だけどここは負けないって思ってやってきたことだった。監督がそれを理解してくれて、それから周りに上手い選手がいて、僕が生きたのかなと思うので、本当にいい時代というか、自分にマッチした時代にサッカー選手になれて運があるなと思いますけど(笑)」

「過去は過去ですし、思い出は思い出としてあるにはあるんですけど、またチャンピオンシップ、天皇杯とあるので。今どう感じられるかというのは過去にどれだけ積み重ねられてきたのかだと思うので。そういう意味では今日その瞬間を勝利で終わってセレモニーをしてもらってサポーターにたくさん来てもらって、またこうして取材をしてもらって、今がすごく印象に残っている。僕はこれから先も過去に生きるといつまでもサッカー選手の気持ちのままになっちゃうので、未来を見たいと思うので今を大切にしたいなと思います。だから今こうやって(報道陣の)皆さんと笑顔で話せているというのは僕にとっては幸せな時間です」

 最後に、「一言では言えないですけど…。家族であったり、時々監督であったり、時々すごい褒めてくれる親戚のおじちゃんだったり、いろいろな顔がありますけど、目指すところが一緒な仲間というか、そういう存在ですよね。やっぱりこのチームはサポーターなしでは語れないと思うし、僕のサッカー人生もサポーターとのことがなければ語れないと思う。選手を強くしてくれる存在だと思うので、これからも僕もそうでしょうけど、浦和の選手を厳しくサポートしてくれたらと思いますね」と、16年間支え続けてもらったサポーターへの思いを語ると、そのサポーターで埋め尽くされたスタンドの景色を思い浮かべながら、「ただただ、いい景色だなと思いましたね。ああ、本当に真っ赤に染まって、この景色を見れてこういう気持ちになれるのはレッズの選手だけなのかなと。本当に幸せだなと思っていました」と締めくくった。

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