2016.09.06

トラウムトレーニング総監督が語る…風間八宏氏の指導理論を具現化する方法

サッカー総合情報サイト

インタビュー=磯田智見
写真=小林浩一

川崎フロンターレ監督 風間八宏氏が、子ども達にもっと自由にサッカーを楽しんでもらいたいと設立したサッカースクール、「トラウムトレーニング」。その総監督を務めるのが、筑波大学時代に風間氏の下でヘッドコーチを務め、その理論を吸収してきた内藤清志氏だ。

ヘッドコーチの立場でありながら、選手たちに混じってトレーニングに励み、汗だくになりながら風間氏の理論を体に染み込ませていった。そして今、自らがこれまでに積み上げてきたことを、トラウムトレーニングや各種セミナーで多くの選手、指導者に伝える役割も担っている。

広島県出身の内藤氏と現役時代にサンフレッチェ広島でプレーした風間氏。二人はどのようなきっかけで出会い、どのような時間を共有してきたのか。今回のセミナーでは、その理論の中から何を伝えてくれるのか。内藤氏に話をうかがった。

答えはピッチの中にある。それを見つけ出すことが大切

――まず、ご自身の選手としてのキャリアについて教えてください。
内藤清志 僕は広島県の出身なんですが、小学3、4年の頃にJリーグが開幕したのを受けて、野球をやりながらサッカーを始めました。ちなみに、その頃のサンフレッチェ広島のキャプテンが風間八宏さんでした。

――当時の風間“選手”は、内藤さんから見てどんな印象でしたか?
内藤清志 中盤で目を光らせているイメージで、子どもの目で見ても「恐そうなキャプテン」という印象でした(笑)。

――野球とサッカーをやる中で、サッカーを選んだ理由は?
内藤清志 トレセンなどで他のチームの選手と親交を深められるのが楽しくて、サッカーにのめり込んでいきました。中学時代に運よくトレセンなどに選んでいただけるようになり、高校は全国大会に出られる実力があり、なおかつ自分が中心として試合に出られるチームという条件で探して、地元の広島市立沼田高校に進学しました。ただ、高校は自分中心のチームだったんですが、トレセンや選抜に行くとどうしても一選手という立場を強いられたので、自分自身の成長のためにも大学ではトップレベルのチームで勝負しなければならないな、という気持ちが強くなり、当時の大学サッカー界でトップだった筑波大学に進学しました。

――その後、どのタイミングで風間さんと出会うことになるのでしょうか。
内藤清志 大学時代はプロを目指していたんですけど、体が小さかったこともあり、当時の部長から「いろいろなチームに練習参加に行くのはいいけど、絶対に大学院も受けておけ」と言われて、実際に大学院に進学することになりました。当時の筑波大は教授の方が監督を名乗り、大学院生がヘッドコーチとして選手たちを指導する環境だったんですが、僕が大学院2年生になってヘッドコーチに就任しようかというタイミングで、風間さんが監督に就任されました。

――大学院に進学された頃には、指導者を目指すようになっていたのでしょうか。
内藤清志 そうですね。漠然とですが指導者を目指していて、海外で指導者としての勉強をしたいと思っていたのですが……風間さんと出会って「最終的には日本人を教えたいんだよな? 何で海外に行く必要があるんだ?」と言われて(笑)。

――当時、風間さんとはどのような関係性を築いていったのでしょうか。
内藤清志 日常生活からご一緒させていただくことが多かったですね。今考えると、そのあたりもすごく配慮していただいていたというか、どんな場所にも連れて行ってもらいましたし、行く先々でいろいろなことを感じさせていただきました。

――一緒に過ごす時間の中で、その指導方法で特に驚かれた点はありますか?
内藤清志 横文字を全く使わない点ですね。できるだけ分かりやすい言葉で伝えるイメージがあります。あと最初の頃は「サッカーはボールを保持してやるものだ」とおっしゃって、守備の部分より、その前になぜボールを奪われたのかの部分にフォーカスされていました。「お前とお前がボールを取られなければよかっただけの話だよな」と説明すると、その選手は次にボールを持った時に取られない工夫をするようになるんですよね。

――風間さんと出会ってから、ご自身の中で最も変わった部分はどこでしょうか。
内藤清志 大人でも頭が変わればうまくなれるんだな、と実感できたことですね。裏を返せば、子どもの時にその部分が認識できていれば、体が大きくなったり、足が速くなったりした時に、その成長度合いがさらに大きくなるんじゃないかなとも思いますね。

――従来のサッカー観と風間さんが語られる理論の、最も大きな違いはどこにあると思いますか?
内藤清志 頭の中で答えを作ってからやるのか、まずやってみて、うまくいったケースの中から共通項を探して答えを導き出すか、その違いだと思います。トラウムトレーニングで指導する際に僕自身も気をつけていることなのですが、「このプレーはこうだよね、こうしなければいけないよね」と教えすぎてしまうと、選手たちはそれができなかった時に「自分はサッカーができないんだ」と思い込んでしまいがちになります。何も言わずにグラウンドに送り出して、うまくできた時に共通するものが正解なんだよ、という方向に持っていかないと、方法論を振りかざすだけになってしまいます。

――今回のセミナーは、どのようなテーマで実施される予定でしょうか。
内藤清志 「“ボールを止めて蹴る時間”が“ゴール前での時間”になる」といったテーマですね。講義の際に映像を使い、こうすれば無駄がなくなって素早くプレーできるんだと、頭の中を整理していただきたいと思っています。その基準を高くしていただきたいのが一つ。そして実際にグラウンドに出て、止めて蹴る時間が短縮できればプレーの選択肢が増えることを意識していただきながら、ボール回しやゲームをやってみたいと思っています。

――映像を使用しての講義は、普段から実施しているのでしょうか。
内藤清志 最近はほとんどやっていないのですが、自分の中で整理する意味も込めて、今回はやってみたいと思います。止めてから蹴るまでこれぐらい時間がかかるとか、蹴る前にワンタッチ増えることで眼前の現象が変わるだとか、そういった内容の映像になると思います。リオデジャネイロ・オリンピックやユーロ2016、Jリーグなど、旬の映像から該当シーンを探して、比較してみるのもいいかもしれないですね。

――では、グラウンドでの実技は具体的にはどんな内容を想定していますか?
内藤清志 映像を見れば、ボールを止めて蹴るスピードが試合展開のスピードに大きく影響することが分かるはずです。その上でプレーしてみると、止めて蹴るがすごく速くなるんですが、どこに蹴る時も同じスピードで正確にできるか、ボールが正しい軌道で回るかについては、難しい部分があると思います。そこで「何でもできる場所」、つまり自分なりのボールの置き場所を感じていただくのが出発点になります。それができるようになれば、次は相手との関係性ですね。自分とボールとの関係性がうまくいっても、相手にボールを奪われてしまっては意味がないので、一歩下がったり、入れ替わったりして相手から離れ、プレッシャーを感じない距離でボールを受ける感覚を身につけていただきます。その後にボール回しやミニゲームに移りたいと考えています。それともう一つ、ボールの運び方ですね。走る歩幅でボールに触れられれば最も無駄なくドリブルできるんですが、どれぐらいの強さで、どんな姿勢でボールに触れればいいのかを伝えたいと思います。止める、蹴る、運ぶ。この3つについて、実践の中で感じていただきたいですね。

――このインタビューを読んでトラウムトレーニングに興味を持たれた方、セミナーの受講を検討し始めた方もいらっしゃると思います。最後に、そのような方々へのメッセージをお願いします。
内藤清志 僕も日々の指導の中で気づくことがまだまだたくさんあるんですが、僕が今までに身につけたものに触れてもらうことで、少しでも新しい「気づき」を得て、基準を上げていただければ嬉しいです。指導者にとっては「知る」ことが非常に大切だと思いますので、このセミナーで一つでも多くのことを知っていただいて、お互いに高めあっていければと思っています。

内藤氏が語るように、その理論を体感すれば様々なことに「気づき」、頭の中がクリアになるだろう。選手として上のステージに進むため、あるいは指導者として子どもたちにサッカーの楽しさを伝えるためのきっかけを、このセミナーで掴んでほしい。

風間八宏氏が語る/前編…“絶対的”な「止める」「蹴る」を指導するトラウムトレーニングとは
風間八宏氏が語る/後編…川崎フロンターレでも「常識を壊す」ことから始めた

トラウムトレーニング総監督
TRAUM SV監督
つくば校ヘッドコーチ
内藤 清志(ないとう きよし)
筑波大学蹴球部で活躍後、風間八宏氏の下で同部トップチームのヘッドコーチを務める。4年間その指導を学び、風間監督退任後はトップチームの指揮を執った。2010年、トラウムトレーニング設立時より子ども達の指導に携わり、多くの支持者を得てきた。風間氏は内藤氏を、「大切なことをしっかりと伝えることに長け、粘り強く選手達に接することができる指導者」と評する。今ではトラウムトレーニング総監督、TRAUM SV(ジュニアユースチーム)監督、つくば校ヘッドコーチを任されている。
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